セイバーと本屋に行ってきた。最近のセイバーは現代社会の法とか統治機構とかそう言うのを勉強している。なので俺は古典的な名著の文庫をプレゼントした。
「ありがとうございます。いっぱい読みますね!うふふ」
「そりゃよかった」
楽しそうにセイバーが笑みを浮かべていると俺も嬉しい。なんというかこうやって笑顔の女の子が隣にいるのって本当に幸せだなって思う。でカフェにでも行こうかなって思って繁華街を歩いていた時だ。
「三郎くん」
「ん、はい?」
すれ違った金髪の人に話しかけられた。金髪に海のような蒼い瞳。小柄でどこか女性的な顔立ちだけどまあ体つきは男性だった。美少年。なによりなんかその顔には心当たりがある。
「あの。……あなたはアルトリア・ペンドラゴンさんの親戚ですか?」
「いや。親戚ではない。それに訂正をしておきたい。彼女と似ているのは私ではなく、私にアルトリア・ペンドラゴンが似ているのだ。私の方が原典だ」
「原典?あのどちら様なんです?俺のこと知ってますよね?」
「ああ。まあこちらの姿で会うのは初めてだったね。私はバーサーカーだよ。狂化を解いたんだ。バーサーカーの時は私の剣の化身としての姿を強調するものでね。こちらが真の姿だよ」
「ほぁ。サーヴァントってすげぇ……」
俺もセイバーも驚いた。あんなゴリマッチョがこんな線の細い美少年になるなんて思わなんだ。
「ええ、我が王に似すぎ……ていうか三郎さん、うちの王様にあったことがあるんですか?」
「君の王様?アーサー王のこと?会ってないけど」
「いえ、アルトリア・ペンドラゴンって言ってましたよね。うちの王様は本当は女性でしたから。後世にはアーサー王として男性の姿が伝わりましたけど。私もそうですが」
「ああ。ああ?あの人がアーサー王だったの?!なにそれエロゲ?!マジかぁ……いや。ほら、ランサーの迷宮に放り込まれた時になんかアヴァロンってところに通じてさ。そこでちょっと話した。まあそんだけ」
「アヴァロン行ったんですか?!なのに帰ってきた?!……あなたは本当に……英雄……いえ、普通過ぎるんですね……すごい」
普通過ぎるって誉め言葉なのかな?なんか俺も特技とか普通じゃない趣味とか欲しくなってきたぞ。
「どうかな?三郎君。これからご飯でも。近くに美味しい約肉屋が出来たんだ。御馳走するよ。なに。マスターから金は貰っているから安心してくれ」
「え?まじ?いいね!セイバーもいいですか?」
「もちろん構わないよ」
バーサーカーはにっこりと笑った。セイバーは微妙そうな顔してたけど、まあついてきた。そしてやってきたのはその美味しいって噂の約肉屋さん。
「ユッケがうまいそうだ」
「ユッケかぁ食べたことないなぁ」
「三郎さん、ユッケって何ですか?聖杯の知識にありません」
「ユッケは牛の生肉の刺身かな?牛に限るかは知らない」
「ええ?!牛の?!生肉?!」
セイバーが引いてる。まあ古代人は基本生は食べないだろうしね。俺たちはドアを開けて中に入ろうとした。
「よく来たな贄どもよ。さあ我が迷宮の奥に入るがいい」
「失礼しました」
俺はドアを閉める。なんか牛面のムキムキマッチョなヤバい奴がいたぁ?!
「ねぇ今のなに?!ねぇなに?!バケモンいたんだけど?!」
俺の問いかけてにセイバーが蒼い顔してる。わかってくれるらしい。だけどバーサーカーはシレっとした顔をしている。
「彼は化物ではない。アステリオン。牡牛の神霊だよ」
そう言ってバーサーカーがドアを開けて中に入る。
「よく来たな贄ども。さあ我が迷宮の奥に入るがよい」
「三人。とりあずコーラ三つ」
「ではついてくるがいい勇者たちよ」
バーサーカーがなんか注文すると牛のムキムキマッチョマンが店の奥へと案内し始めた。ついて言ってたいじょうぶなのか?!バーサーカーはなんも気にしてないけど俺とセイバーびりびりまくりなんだが!そして奥の席につく。牛面のアステリオンが俺たちにメニューを配った。
「何を食いたい?選べ」
横柄な態度だ。だけど怖い。俺はおずおずとメニューを見る。美味しそうなお肉の写真がいっぱい乗ってる。正直気分的にはカルビ食いたい。だけど牛面のアステリオンに頼んでいいの?大丈夫?俺は日和った。
「豚カルビ……」
それを聞いてアステリオンは俺を鼻で笑った。
「ふん。ブタかまあ悪くはない」
なんでこんなこと言われにゃああかんねん。次にセイバーが頼む。
「ラムのロースを……」
「羊だと?お前はゼウスに媚びる女か……穴という穴を犯し尽くされろ。孕まされて捨てられればいい」
「なんでそこでゼウスが出てくるんですか?!媚びた覚えとかないんですけど?!」
セイバーのツッコミはもっともだと思う。そしてバーサーカーが注文を入れた。
「この豪華和牛セットを頼む。あと特別霜降りユッケもくれ」
「……わかってるじゃないか。牛こそ最高だ」
そしてアステリオンはメニューの端末を弄ってから俺たちの傍を引っ込んでいった。ていうか牛なのに牛肉いいんだ。
「ここ何の店なんですか?!怖いんだけど?!」
「ここはランサーが牛好き高じて始めた焼き肉店だ。アステリオンは店員として日々牛のうまさを人々に啓蒙している」
「気をつかったんですけど!?牛の神に牛肉食いたいとか言いづらいよ!!」
「三郎くん。神霊はそんな些末なことは気にしないぞ」
「俺が気にすんだよ!!」
そしてドリンクと肉がテーブルに並んだ。アステリオンの運び方はすごく丁寧で恐縮だった。
「いいか。焼きすぎればうまくなくなる。焼かないとそれは毒になる。焼肉の火加減とは人生と同じだ。快を得たいのであればその瞬間にすべてをかけろ。いいな」
なんか含蓄ありそうでなんもないこと言ってアステリオンは去っていった。
「まあ乾杯しよう。穏やかな日々の幸福に」
バーサーカーがコップを挙げた。そして俺たち三人は乾杯したのだった。