教会を出て少し歩いたところに公園があったのでそこのベンチに座って息を吐く。
「たまったもんじゃないなぁ……はぁ」
「あなたみたいなやる気のなさすぎるマスターが選ばれてることに私もため息を吐きたいのだけど」
「そんなこと言われても困るよ。まったく……あれ?そういえばさマスターの願いも叶うってことはサーヴァントの願いも叶うってこと?」
「当たり前でしょ」
九十九はツンツンしている。けど面倒見いいよね。そういうところは尊敬する。
「ライダーは何が願いなの?」
ライダーにそう尋ねてみる。
「ワタシは終末装置。ただ役割を果たすだけだ」
「うーん?願いはないってこと?まあいいや。じゃあさ九十九はなんか願いあるの?」
俺は今度は九十九に聞いてみる。
「私は魔術師の家に生まれたものとして根源に至る義務があるわ。そのために聖杯が有用。手段として必要」
「根源……?」
なんだろうそれ?でも魔術師界隈的には大事そう。地雷っぽいから放っておこう。
「魔術師ってもしかして家業なの?」
「そうね。基本は世襲よ。たまに一般家庭からも生まれることはあるけどね」
「ふーん」
歌舞伎みたいなもんかな?じゃあまあ頑張ってもらえばいいよ。親から継いだものは大事だろうし。
「ところでさぁ魔術師ってもしかしてメンインブラックみたいに秘密隠すのがマナーなの?」
「そうね。神秘の漏洩は禁忌よ。だから聖杯戦争は夜に行うの。人目につかないように私たちは戦うのよ。私とセイバーも昨日森に潜んでたサーヴァントと戦ったわ。逃げられちゃったけどね」
「ふーん。なるほどな」
忍者みたいだな。いや魔術師がいるなら忍者もいるのかな?まあそれはどうでもいいとして。
「とりあえずさ。俺たちは休戦っていうか中立じゃだめ?」
「中立って……組むならまだわかるけど……どうせ戦うことになるわよ」
「どっちにしたって俺は素人なんだよ。戦いようがない。そんなものに命なんて張れない。リスクは負えないよ。受験生なんだぜ?」
「こういうとき男の子ってむしろ生き生きするって聞いてたんだけど違うの?」
「さあ?男とか女と以前に他人のことなんてわからなくない?俺みたいなやつもいるってことで一つ放っておいてほしいかな」
「……それは……」
「残念ながら放っておくことはできないよ」
男の声がした。暗闇から一人の男が出てきた。俺は立ち上がって警戒する。九十九もセイバーを出して警戒していた。
「教会で張っていれば新しいマスターが来るだろうと踏んでいた。これでやっと大体揃ってきたようだね。いい機会だ。二体同時に始末させてもらいたい。ああ、安心してくれ。マスターの命までは取らないよ。僕はそう言うのには興味ないんだ」
「あ?!てかあんた昨日戦ってたおっさんの一人じゃん?!犬のせいで死にかけたんだけど!!」
「あれは僕じゃないよ。時計塔の魔術師さんのせいだ。僕は別に現代魔術が見られて漏洩したってかまわないんでね。本当の神秘とは見られたくらいじゃ削られることはないんだよ。そう神代のようにね……」
なんだろう。魔術師界隈の用語が多すぎて何言ってるのかよくわからない。
「僕の名前はセプティムス・オルビス・ラピス。彷徨海から来た。じゃあ戦おうか。やってよバーサーカー」
すると男の横に巨体の男が現れた。上半身裸で真っ赤な肌をしている。目がガンギマリしてるのがこわい。武器は持ってない。だけどただそこにいるだけで圧倒的な暴力の匂いが俺にもわかる。そしてバーサーカーはこちらにものすごい速さで突っ込んできてライダーに向かって拳を振り上げた。
「■■■■!!」
何言ってんだかわかんねぇ。バーサーカーだけにまじでバーサクしてるのね。ライダーは鎧を展開してその拳を受け止める。すると足が地面にめり込んだ。
「くっ。たいした怪力だな!!ふん!」
ライダーがケリをカウンターでいれるがびくともしてない。
「マスター!わたしもいきます!!」
セイバーも剣と盾を装備してバーサーカーに斬りかかる。だけどなぜか持ってる剣には鞘がつけっぱなしだった。その戦い方はあまりにも華麗だった。盾でバーサーカーの拳を受け流して剣で斬りかかる。だけどやっぱりびくともしない。
「硬すぎる!?なんですかこれは?!」
セイバーも驚いている。だけどライダーもセイバーも攻撃をやめない。バーサーカーは圧倒的な防御力と武技で二人の猛攻を捌き続けていた。……剣が刺さらないとかもう無理じゃね?というかセイバー。剣を鞘から抜けよ。それ切れる切れない以前の問題なんですけど?
「ふふ。やはり僕のバーサーカーには宝具なしでは傷一つつけられないよね。くくく。これが神代の剣の力そのものだよ」
相手のマスターはどやってる。なんとなく理解したけど聖杯戦争はあれかポケモンバトルみたいな感じか。
「せめて相手の真名がわかれば……」
九十九がそう呟く。
「え?相手の名前分かるとなんかいいことあるの?」
「神話の英雄なら弱点があるものよ!だから名前は隠さなきゃいけないの!宝具だって真名知られてたら対策を取られかねない!あなたみたいに曝さないのよ普通は!!」
なるほどなぁ。英雄には弱点があると。まあウルトラマンも三分しか戦えないし。そんなものか。
「真名なら教えてあげようか?くくく。バーサーカー。宝具を発動するよ。【バトラズ】!!」
「■■■■ーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
なんか相手のマスターが叫ぶとバーサーカーの身体が鈍く赤い光を放った。そして体から蒸気を噴き出しはじめた。
「バトラズ?!嘘でしょ?!あのナルト叙事詩の大英雄?!」
九十九が酷く驚いている。というか動揺しているようだ。
「ナルト?忍者なのか?」
「馬鹿!!ナルト叙事詩よ!神話の大英雄!剣の化身そのもの!あのアーサー王伝説の最源流の一つとも言われる古き剣の英雄!!」
俺は首を傾げる。やっぱり何を言ってるのかわからない。だけど状況はわかる。なぜならライダーとセイバーが蒸気に吹っ飛ばされたのだ。
「うぅぐぅ!」「きゃぁあ!!」
ライダーとセイバーが俺たちの方に転がってきた。あーこれやばいね。
「ひぃ……嘘でしょ……サーヴァント二騎がかりで歯が立たない?え?やだ?!見えちゃった?!いや!いやぁあ!!」
なんか九十九が恐慌状態になってる。何を見たの?ゴキブリ?夜の公園はいっぱいいるからなぁ。
「くくく。ではお終いにし……って?!ええ?!」
バーサーカーのマスターが驚いている。だって俺が九十九を抱えて街の方に走り出したからだろう。
「ライダーセイバーついてこい!逃げるぞ!街の方に!!」
「待って?!街の方は?!神秘の漏洩が?!」
セイバーが愕然としながら俺についてくる。
「気にするなら追いかけてこない!!だって魔術師ってやつらのマナーなんだからな!!」
マナー講師がきっと言ってるんだ。バトルは見えないところでしましょうって。なら公園でて街に逃げ込めばよくない?そして俺は公園を出て繁華街の方に入り込んだ。振り返ると公園の木陰から唖然とした顔でバーサーカーのマスターが俺たちを見ていた。こっちまで追いかけてくる気はないようだ。
「くくく。マナーはこうやって使うんだぜ?あははは!!」
「に、逃げ切った?ええ……こんなやり方ありなんですか……?」
セイバーが俺になんか引いている。でも街行く人たちがセイバーのレオタードのお尻とか大きく形の出た胸とか見てるのでお相子だと思います。
「戦術的撤退か。合理的だな」
ライダー的には丸らしい。
「え?うそ?逃げられたの?私は間違いなく全滅する未来を見たのだけど……」
「なにそれ?占い?草なんだけど」
「未来視なんだけど。あれぇ?ええ?どういうことなの……。でも助かったのね。ありがとう佐藤君……助かったわ」
「どういたしまして」
「でもとりあえず下ろしてくれないかしら?」
「あ、すまんすまん」
とりあえず警戒はしつつも俺たちは繁華街へと入っていく。セイバーもライダーも霊体化はしない。警戒はし続ける。
「人前でサーヴァントを曝すことになるなんてね。魔術師失格だわ……」
俺はコンビニでチキンを買ってみんなに配る。
「美味いな」
「美味しいです」
ライダーとセイバーはコンビニのチキンにご満足いただけているようだ。コンビニの前でたむろする俺たちまじでティーンエイジャー。なおコスプレ。
「まあ逃げ切れたってことで今日はもう帰ろう」
俺はチキンを食べながらそう言ったのだった。
神秘の漏洩を気にする。
つまり繁華街に逃げればいい!!
チートかな?