学校に来たのだがなんか空気が悪い気がする。教室のみんなが俺を見てひそひそなんか言ってる。
「佐藤!九十九さんと付き合ってるってマジか?!」
「あぁ?あーそういうことぉ……」
なるほど昨日、九十九と一緒にいたところをクラスメイトに見られたからか。だから空気が悪いのね。よく知らなかったけど九十九ってこの学校の人気者らしいんだよな。それががり勉君と付き合ってる疑惑出たらそうもなるよな。
「なのに昨日振ったとか!まじ?!あんな美人を?!」
「付き合ってもないし振ってもいないよ。ただのお友達だよ」
「ええ?なんかすげぇ噂になってるけどなぁ。ほら伊吹見てみろよ」
言われて伊吹の方を見る。なんか雰囲気が殺気立ってる。こわ。だけど俺を見てニヤリと笑った。こわ。
「しらんがな。噂は嘘だよ。そう皆に言っておいてくれよ。俺は勉強に忙しいんだよ。しっしっ!」
イラついたので参考書を開いてクラスメイトを追い払った。知らんがな。俺は九十九と関わる気はない。聖杯戦争にもな。なのに。
「お昼一緒にしましょう」
「俺勉強したいんだけど?」
「いいから来なさい」
渋々屋上に連れて行かれた。というか屋上は入れないはずなんだけどなんでこいつ開けられるのさ。なんかインチキしてるな?魔術ってやつか卑怯ものめ!
「バーサーカーの対策をしたいの」
「はぁ?なんで?」
「あんな規格外の化物倒さなきゃまずいでしょ。同盟組んで何とか数の有利で叩くしかないわ」
俺はそれを聞いてため息を吐く。なんでこう好戦的なのか。
「倒す必要ある?」
「あるに決まってるでしょ!」
「ごめん。問いかけを変えるね。俺たちが倒す必要ある?」
「私たちが倒さなくてどうするのよ!?」
「いやさ。相性の悪いポケモン出て来たらさ、別のトレーナーと戦わせればいいじゃん。ピッチャー交代だよ。わかる?俺たちが敵わなくても、他に相性いいサーヴァントさんがいるんじゃないの?七機もいるんだよ。じゃんけんみたいにグルグル回ってんじゃない?」
「それは……そうかも……あれ?ええ?」
「あのさ聖杯戦争って最後まで生き残ればいいんでしょ?これ総当たり戦じゃないよね?じゃあ放っておくのがいいでしょ。あの人一般人に迷惑かけるタイプじゃないし、どっかの誰かと戦ってもらって敗退してもらうのをお祈りしてればいいのよ」
「あれ?なんか筋が通ってるわね……でも……」
「雪辱戦したいって言うなら止めないよ。だけどそれなら俺を巻き込まないでくれ」
「ううっ……」
俺は弁当のおにぎりとコンビニチキンを食べながらそう言った。受験もそうだけど目的は見失っちゃいけない。受かればいい、生き残ればいい。なら行動は戦うこと以外にもあるはずなのだ。積極的静観も手段の一つだ。
「まあ魔術師さんってきっと真面目なんだろうね。だけどさ、放っておけばいいよ。他の連中が真面目なら誰かがバーサーカー倒してくれるよ。じゃあ俺はこれで失礼するよ」
弁当を食い終わった俺は屋上をそそくさと後にする。振り返ると頬を膨らませて俺を睨む九十九が見えた。ちょっとかわいいと思ったのは内緒だ。
放課後、担任と面談してから教室に戻った。もう校舎には誰もいない。教室に戻るとなぜか伊吹だけがいた。
「よう佐藤。遅かったな。待ちくたびれたぞ……」
凄まじく荒んだ目で俺を睨んでいる。あーめんどくせ。自分のご機嫌くらい自分で取れよ。うざぁ。
「伊吹。断っておくけど九十九と付き合ってなんかいないからな。過去も今も。そして未来も多分そうだ」
多分って言っちゃうあたり割と俺も九十九のこと嫌いじゃないよねって思った。
「だからお前が怒る理由はないし、俺を睨む理由もないんだ?わかるよね?な?」
俺は自分のロッカーからバックを取り出して教室を去ろうとする。だけど。
「待てよ。俺を無視するな。俺を無視なんてさせない。知ってるぞ。お前は聖杯戦争に参加したんだろう?」
「はい?え?今なんて言った?え?なんでそれを?」
聖杯戦争という言葉が出てきて思わず振り向いてしまった。そして伊吹が俺に迫ってくる。いつの間にか槍を手に持って……。
「やばぁ?!」
俺はすぐに教室から走って出る。あの槍間違いなくやばい。ていうかサーヴァントってやつの物だ!雰囲気でわかる!
「待てよぉ!?佐藤!串刺しにさせろぉおお!!」
槍を振り回しながら伊吹が後ろから追いかけてくる。あかん。ヤバすぎだろこの状況!!くそ!昼の間は戦わないんじゃないのかよ!ルールがガバガバじゃないか!!
「危ないからそんなものしまえ!俺は確かにマスターだが聖杯戦争に参加してない!!」
「とぼけるな!昨日の綺麗な女のどっちかがお前のサーヴァントなんだろう!!くそがぁ!!九十九さんを強いサーヴァントの力で脅してるんだろう!卑怯者めぇ!!」
「なんでそういう発想出るかなぁ?!くそぉ!!」
俺は階段をジャンプして降りる。伊吹もジャンプして槍を逆手に俺の上に降ってくる。それをバッグを振り回して弾いて何とか躱してから俺は再び走る。
「逃げるなぁ!俺と戦え!どっちが英雄なのか!勇者なのか!夜を九十九さんと駆け抜ける男なのか決めようぜぇ!!あぁぁああああああああ!!!」
「組みたきゃ勝手に組めよ!!今なら九十九はパートナー募集中だぞ!俺に当たり散らすな!」
「お前がいるから組めないんだよぉお!!」
「そういうのは誘ってから言えよ!!」
この様子だと九十九はまだ伊吹がマスターになったの知らないだろう。俺を殺してから組むつもりなのがストーカー思考でマジでひどい。そしてとうとう追いつかれた。
「死ねこら!!」
「うおぉ?!」
俺がとっさにかがむと頭上を槍が掠めた。狙いが直情過ぎて助かった。だけど二度も三度も躱せないぞこれ?!伊吹が立ち止まる。俺は態勢を立て直して立ち止まってしまう。やばいにらみ合いになってしまった。今背中を向けて走ったらその隙に後ろから刺される。
「間合いに入ったなぁ。ひひひ。いいことを教えてやるよ。この槍は必中の槍なんだ。絶対に当たるんだよ。そういう宝具なんだぜ。いひひ」
じりじりとすり足で俺相手に間合いを詰めてくる。あと一歩踏み出せば槍は俺の身体に届く距離だ。
「必中?そういうルールなのか?」
「ああ、そういう神話の逸話なんだとよ。間合いに入ったら必ずターゲットに当たるんだ。だからこの間合いなら絶対に外さない。お前は死ぬんだよ。今ここでなぁ!!」
そして伊吹は槍の穂先を俺の心臓に向ける。間合い?必中?絶対に当たる?あー。そういうことね。はいはい。
「その心臓!奪わせてもらう!!」
そして槍が淡く光って、伊吹が一歩踏み出して槍を突き出してきた。どうやら宝具が発動するようだ。このままだと俺は心臓に確実にヒットして死ぬ。そう。確実にそうなるなら対策なんて簡単だ。
「おらぁ!!参考書バリアー!!」
俺は迫る槍に向かってバッグから参考書を取り出して投げつける。ぶ厚い参考書だ。ちゃんと最後のページまでやって参集した俺の聖書である。
「そんな紙切れがぁあ!?はぁ?!!ええ?!」
そして槍の穂先に参考書が突き刺さった。
「はぁ?なんで必中なのに?!あれ?!ええ?!なんで心臓に当たらないんだよ!!」
簡単な話だ。必中が確定するのは間合いに入ったものに対してだ。なら俺の身体より先に何かを間合いに放り込んでやればターゲットがずれる。そっちに当たって俺は無事。それだけのことだ。そして伊吹は槍の穂先に手を伸ばして参考書を剥がそうとする。そこがチャンスだった。
「しゃらぁらぁ!!」
「うぁあ!?」
槍で遊んでるから体は隙だらけだった。詰襟の開いた第二ボタンのところを掴んで俺は腰をぐっと入れ込んで伊吹を背負い投げをした。
「ぐぁああああ!!?」
廊下に叩きつけられた伊吹はその痛みでのたうち回っている。そして俺は天井のスプリンクラーに手を伸ばしてぶっ壊して水をまき散らす。
「うわぁ?!目に水が?!ぐはぁ?!」
俺は伊吹のこめかみにケリを入れる。何度も何度も入れる。視界はスプリンクラーで潰れてる。当て放題だ。そして伊吹が気絶して伸びた。俺は肩で息をして近くの壁にもたれかかった。
「まったく体育の授業の柔道って無駄じゃないんだなぁ……がり勉万歳!」
しかしどうするか。とりあえず九十九呼ぶのか?それともシスターにチクればいいのか?神秘の隠匿とやらをしないといけないんだよね?やり方がわからないんだけど。と思っていた時だ。伊吹の近くに陽炎が現れた。
『まったくマスターにも困ったものだな。私の槍など大した代物ではないと言ったのに……』
そして陽炎から古めかしい恰好のイケメンの若い男が出てきた。なんだろう。鎧とか着てない。質素な服装だ。というかサーヴァントだなこいつ。
「ウチのマスターが大変失礼をしたね。この子に代わって謝罪しよう。すまなかった」
「それはどうも御親切に。俺を殺さないのか?隙だらけだよ?」
「君からは嫌な予感がする。大した槍ではないとはいえ神代の槍の論理をすぐに暴いた君を侮りたくはない。私はことを仕損じるわけにはいかないのだ。不確定要素には手を出したくない。君の処理は後回しにしたいね」
そしてサーヴァントの男は伊吹を背負って陽炎へと戻っていく。
「私も聖杯を求める身だ。いずれは相まみえよう。もっともその時はこの子のようにはいかないよ。私も手を抜くことはないからね……では失礼するよ」
そして陽炎の中に伊吹たちは消えていった。陽炎は消えていつもの廊下に戻った。
「なんなのこの騒ぎは!サーヴァントの気配がしたけど!大丈夫なの?!」
九十九がすぐに駆け付けた。俺の頬に手をやって心配してる。
「大丈夫ちょっと疲れただけ。とりあえず多分ランサーってやつだろうね。槍を使う奴が出たよ。伊吹がマスターだ。まあ知らんけど」
俺はため息を吐く。この廊下の水浸し状態どうしよう?
「あーこの惨状の御片付け頼んでいいかな?」
「はぁ。あなたは……もう。まあ無事ならいいわ」
九十九は俺にハンカチを差し出す。それを貰って顔を拭いてその日のバトルは何とか生き延びたのだった。
学校で同級生が襲ってくる?!staynightすぎるぜ!(゚Д゚)ノ