ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが?   作:NK7

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続きました


No.9 初めての戦闘

校舎の外に出た瞬間、空気が変わった。

 

砂埃を含んだ乾いた風。

遠くで弾が跳ねる乾音。

視界の端を横切る、不規則な人影。

 

――まずい。

 

胸の奥が、きゅっと縮こまる。

 

(……怖い)

 

はっきりと、自覚できる恐怖。

心臓が早鐘を打ち、呼吸が浅くなる。

手のひらに、嫌な汗が滲んだ。

 

訓練でも、遊びでもない。

自分が撃てば撃ち返される

撃たれれば――自分の体を痛めるだけ

 

自分は正面に対してクロスの射線を作るために外壁沿いに身を低くし、コンクリートブロックの裏へ転がり込む。

背負っているリュックを下ろし、PKPを構えなおしていると持つ腕と指が、微かに震えた。

 

(落ち着け……)

 

地面に伏せる。

砂の感触が、やけに現実的だ。

 

銃を前に出し、肘をつく。

バイポッドを展開する。

 

カチリ。

 

金属音が、妙に澄んで聞こえた。

 

(……分かってる)

 

(やることは、分かってる)

 

照準を通す。

 

赤と黒のヘルメット。

雑な動き。

銃口が定まっていない。

 

(……人だ)

 

その認識だけが、喉に引っかかった。

 

トリガーに指をかけたまま、ほんの一瞬だけ、躊躇する。

 

(……怖い)

 

正直な感情。

 

でも――

 

背中の向こうに、校舎がある。

守るべきものがある。

 

(……ああ)

 

(もう、どうにでもなれ)

 

その瞬間だった。

 

「――っ」

 

歯を食いしばり、引き金を引く

 

ドドドドドドドドドッ!!

 

PKPが吼える。

 

衝撃が肩を叩き、音が空気を引き裂く。

反動は重く、暴力的で、電動ガンとは比べ物にならない。

 

――なのに。

 

(……静かだ)

 

頭の中が、すっと冷えた。

 

恐怖が、消えた。

 

さっきまで耳元で騒いでいた心臓の音が、遠のく。

呼吸が、自然に整う。

 

(反動、想定内)

 

(照準、保持)

 

(弾道、問題なし)

 

感情が引っ込む。

代わりに、思考だけが残る。

 

ドドドドドドドッ――!!

 

PKPの反動が、一定のリズムで肩を叩く。

照準は安定している。

弾道も、散らない。

 

(……いい)

 

その瞬間、感触が変わった。

 

撃発の間隔が、わずかに間延びする。

反動が、軽くなる。

 

(――弾切れ)

 

考えるより早く、身体が動いた。

 

トリガーから指を離し、銃を身体に引き寄せる。

伏せたまま、肘で姿勢を安定させる。

 

恐怖はない。

焦りもない。

 

ただの作業。

 

給弾口を視界に入れ、

空になったボックスマガジンを解除。

 

ガチャン。

 

重量の抜けた箱が、砂の上に転がる音。

 

同時に、左手は胴体へ伸びていた。

6SH117のマグポーチ。

 

フラップを跳ね上げ、

中の重さを確かめる。

 

(……ある)

 

指先に伝わる、確かな質量。

 

予備のボックスマガジンを引き抜く。

ずしり、と腕にくる重さ。

 

中身が詰まっている証拠。

 

(残弾、問題なし)

 

マガジンを持ち上げ、給弾口へ。

角度を合わせ、力を込めて押し込む。

 

ガンッ。

 

確実な手応え。

 

ロックを確認するように、底部を軽く叩く。

 

(固定、完了)

 

右手でボルトハンドルを掴み、引く。

 

ガシャッ――

 

金属が噛み合う、乾いた音。

 

(初弾装填)

 

視線は、もう前線へ戻っている。

 

照準を再取得。

遮蔽物の陰で動く、赤と黒。

 

トリガーに、迷いなく指をかける。

 

ドドドドドドドドッ!!

 

PKPが再び吼え、砂漠に轟音が広がる。

 

リロードにかかった時間は、ほんの数秒。

その間も、心は静かだった。

 

(……続行可能)

 

私は淡々と火力を維持する。

 

恐怖は、戻らない。

引き金を引くたびに、思考だけが冴えていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

撃ち続けていると必ず来ることがある

 

 

――カチッ。

 

 

乾いた音が、妙に大きく聞こえた。

 

(……空)

 

PKPの反動が、ふっと消える。

トリガーを引いても、もう咆哮は返ってこない。

 

視線を落とすと、弾帯は完全に尽きていた。

足元には、空になったボックスマガジンが二つと大量の空の弾帯

 

(3個とも……使い切ったか)

 

ほんの一瞬だけ、胸の奥がひやりとする。

 

遮蔽物の影から、二つの影が躍り出る。

赤と黒のヘルメット。

距離、十数メートル。

 

(近接、来る)

 

判断は一瞬。

 

PKPをその場に寝かせる。

回収は後。

 

右手が、腰へ落ちる。

 

MP-443。

 

ホルスターから抜き放つと同時に、セーフティを解除。

照準は上半身。

 

パンッ。

 

一発。

 

反動。

衝撃。

 

(当たった)

 

だが、止まらない。

 

二人とも、突っ込んでくる。

 

(距離、詰められる)

 

私は後退しない。

むしろ、踏み込む。

 

銃口を振り、二発目。

 

パンッ、パンッ。

 

一人がよろめく。

もう一人が、殴りかかってくる。

 

(近い)

 

銃を横に振り、相手の腕を弾く。

そのまま懐に入り込む。

 

MP-443を逆手に持ち替え、

フレームで顎を打つ。

 

ゴッ。

 

鈍い感触。

 

相手の体勢が崩れた瞬間、

膝を腹に叩き込む。

 

「――っ!」

 

呻き声。

 

倒れない。

 

(しぶとい)

 

足を払う。

体重を預ける。

 

相手が砂に倒れたところで、

銃口を向ける。

 

パンッ。

 

動きが止まる。

 

もう一人。

 

距離、三メートル。

 

(……まだ)

 

相手が振り下ろしてきた銃床を、

身体をひねってかわす。

 

空いた懐。

 

肘。

 

脇腹。

 

顎。

 

連続で叩き込む。

 

動きが鈍る。

 

最後に、

MP-443のグリップで側頭部を打つ。

 

ゴッ。

 

相手が崩れ落ちる。

 

……静かになった。

 

呼吸を整える。

 

(……終わった)

 

恐怖は、まだ戻ってこない。

 

ただ、

“次はあるか”を確認するだけ。

 

私は周囲を見渡し、

倒れた二人から視線を外した。

 

戦闘様式を切り替えただけ。

 

それ以上でも、それ以下でもなかった。

 

倒れた二人を一瞥し、すぐに意識を切り替える。

 

(……まだ終わってない)

 

私はMP-443をホルスターに戻し、伏せたまま後方へ体を引いた。

視線は、さっきまでPKPを据えていた位置へ。

 

PKPをそばにずらし、次にSVCh-8.6を取り出した

 

長い銃身を抱え、砂の上に滑り込む。

バイポッドを展開し、スコープを覗く。

 

世界が、静かに縮んだ。

 

呼吸。

心拍。

全てが、照準の中心へ収束する。

 

(距離……100程度か)

 

倍率を上げる。

 

赤と黒のヘルメットが、点在している。

さっきまでの勢いはない。

動きが乱れている。

 

指をトリガーにかける。

 

一瞬だけ、意識が戻りかける。

 

(.338だ)

 

(当たれば、普通の人間なら吹き飛ぶ)

 

だが、躊躇はしない。

 

“追撃”ではなく、“索敵”だ。

 

照準を滑らせ、全体を見る。

前線を張る者。

後方を気にする者。

 

(指揮系統、崩れてる)

 

指揮官と思われる赤いヘルメット団を。

 

――撃つ。

 

ドンッ。

 

SVChが低く唸る。

PKPとは違う、鋭く重い衝撃。

 

スコープ越しに、ヘルメットが弾ける。

 

(……確認)

 

 

「撤退だ!てったーい!!!!」

 

 

ヘルメット団の連中が、一斉に校舎外に散る。

 

さっき倒した二人もズルズルと撤退していく

 

私は追わない。

 

照準を動かし、逃げる背中をなぞるだけ。

 

撃てる距離。

確実に当たる角度。

 

――でも、引き金は引かない。

 

(十分だ)

 

(これ以上は、撃つ必要は無い)

 

スコープの中で、赤と黒が小さくなっていく。

やがて、砂煙の向こうへ消えた。

 

……静寂。

 

風の音が、戻ってくる。

 

私はゆっくりと呼吸を吐き、SVChから顔を上げた。

 

(……終わった)

 

恐怖が少しづづ戻ってくる。

 

SVChを下ろし、周囲を確認すると、アビドスのみんなが喜ぶ姿が見えた

 

(……守れた)

 

それだけで、十分だった。

 

私は静かにPKPをリュックに固定しに担ぎ、撤退するヘルメット団の最後の影を見送った。

 

グラウンドには、硝煙の匂いだけが残っていた。

 




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