ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが?   作:NK7

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続きました


No.17 定例会議

セリカ救出作戦から二日後。

生徒会室には、アビドス対策委員会の全員――そして先生の姿があった。

 

アヤネが一つ、控えめに咳払いをして口を開く。

 

 

「それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます。本日は先生にもお越しいただいたので、いつもより真面目な議論ができると思うのですが…」

 

 

(“いつもより”って言ってる時点で察しろってことだよね)

 

 

「はーい☆」

 

「もちろん」

 

「何よ、いつもは不真面目みたいじゃない…」

 

「うへ、よろしくねー、先生」

 

「’’よろしく’’」

 

先生の返事は短い。

けれど背筋は伸びていて、姿勢よく立っている

 

 

「早速議題に入ります。本日は、私たちにとって非常に重要な問題……『学校の負債をどう返済するか』について、具体的な方法を議論します。ご意見のある方は、挙手をお願いします!」

 

 

その瞬間、室内の空気が一段重くなった。

 

“返済”。

戦闘でも救出でもなく、数字と期限の話。

現実が、真正面から殴りかかってくる感覚。

 

 

「はい!はい!」

 

 

真っ先に手を挙げたのはセリカだった。

笑顔はいつも通り。でも、どこか気負いが見える。

 

(……会計担当だもんね)

 

 

「はい、一年の黒見さん、お願いします」

 

「…あのさ、まず名字で呼ぶの、やめない?ぎこちないんだけど」

 

「せ、セリカちゃん…でも、せっかく会議だし…」

 

「いいじゃーん、おカタ~い感じで。それに珍しく、先生もいるんだし」

 

「珍しくというより、初めて」

 

「ですよね!なんだか委員会っぽくてイイと思いま~す☆」

 

 

(確かに“委員会っぽい”けど……内容が伴ってるかは別だ)

 

 

「はぁ…ま、先輩たちがそう言うなら…」

 

 

話を聞く限り、普段はもっと雑らしい。

それでも今日は、全員が“ちゃんとしよう”としているのが分かる。

 

 

「…とにかく!対策委員会の会計担当としては、現在我が校の財政状況は破産の寸前としか言いようがないわ!このままじゃ廃校だよ!わかってるよね?」

 

「うん、まあねー」

 

「今月の返済額は、利息だけでも788万円!私たちも頑張って稼いではいるけど、正直利息の返済も追いつかない」

 

 

(……利息、だけで?)

 

数字を聞いた瞬間、背中に冷たいものが走る。

それを、これまでこの人数で回していたという事実が、むしろ異常だ。

 

 

「これまで通り、指名手配犯を捕まえたり、苦情を解決したり、ボランティアするだけじゃ限界があるわ」

 

 

(普通に考えて、やってることは十分すぎるのに……)

 

 

「このままじゃ、らちが明かないってこと!何かこう、でっかく一発狙わないと!」

 

「でっかく…って、例えば?」

 

「競馬とか宝くじとかですか?」

 

 

(……嫌な方向に転がり始めた)

 

その予感は、即座に現実になる。

 

 

「ふっふっふ、つまりこれよ!!」

 

 

差し出されたチラシを見た瞬間、理解した。

 

(あ、これはダメなやつだ)

 

「ゲルマニウムブレスレットであなたも一攫千金」

 

(どう見てもアウト)

 

 

「この間、街で声をかけられて、説明会に連れて行ってもらったの。運気を上げるゲルマニウムブレスレットってのが売ってるんだって!これをみんなで身につけたら……みんな、どうしたの?」

 

「却下」

 

「私も却下」

 

(即答すぎる)

 

「えーっ!?何で?どうして!」

 

「セリカちゃん…それ、マルチ商法だから…」

 

「儲かるわけない」

 

「えっ!?」

 

(……ほら)

 

「そもそもゲルマニウムと運気アップって関係あるのかな…こんな怪しいところで、まともなビジネスを提案してくれるはずなんてないよ…」

 

「そ、そうなの?私、二個も買っちゃったんだけど!?」

 

(……あぁ)

 

「セリカちゃん、騙されちゃいましたね。可愛いです☆」

 

「まったく、セリカちゃんは世間知らずだねー。気を付けないと、悪い大人に騙されて、人生取り返しのつかないことになっちゃうかもよ」

 

「そ、そんなあ…そんな風には見えなかったのに…せっかくお昼抜いて貯めたお金で買ったのに」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、頭の奥で何かが弾けた。

 

 

「……言おうか迷ったんですけど言いますね。セリカ、こんな露骨なマルチ商法に引っかかるなら、会計辞めたらどうですか?」

 

 

(言いすぎた、とは思わない)

 

 

「うぐぅ!」

 

「しかも育ち盛りのこの時期にお昼を抜くのは、体を壊す原因になります。体を壊したらもっと稼ぎが減りますよ」

 

 

(事実しか言ってない)

 

 

「うぐぐぅ!!」

 

 

セリカの目が、みるみる潤んでいく。

 

(……あ)

 

 

「大丈夫ですよセリカちゃん。お昼、一緒に食べましょう?私がご馳走しますから」

 

「ぐすっ…ノノミせんぱぁい…レインちゃんが怖いよぉ」

 

(しまった)

 

「もうレインちゃん!セリカちゃんが泣いちゃいましたよ!」

 

「す、すみません」

 

(……正論でも、言い方って大事だな)

 

「えっと…それでは、黒見さんからの意見はこの辺で…他にご意見のある方…」

 

「はい!はい!」

 

 

今度はホシノ先輩が元気よく手を挙げた。

その勢いの良さに、レインは思わず背筋を伸ばす。

 

(嫌な予感しかしないのはなんでだろうな……この人が元気な時ほど、ろくなことを言わない気がする)

 

 

「えっと…はい、三年の小鳥遊委員長。ちょっと嫌な予感がしますが…」

 

「うむうむ、えっへん!」

 

 

ホシノ先輩はかなり自信があるらしい。

胸を張る様子は堂々としているが、その表情はどこか子供のように無邪気だった。

 

(こういう時のホシノ先輩、妙に説得力あるから怖いんだよな……)

 

 

「我が校の一番の問題は、全校生徒がここにいる数人だけってことなんだよねー。生徒の数イコール学校の力。トリニティやゲヘナみたいに、生徒数を桁違いに増やせれば、毎月のお金でもかなりの金額になるはずー」

 

 

トリニティにゲヘナ…初めて聞く学校が出てきた。トリニティは…キリスト系だろうか…ゲヘナは…確か地獄とかそのような意味があったはず。とにかく桁違いというレベルなのだから、1000人を超えるマンモス校なのだろう。

 

(この世界、学校が国家みたいな扱いだしな……規模がそのまま影響力になるのか)

 

 

「え…そ、そうなんですか?」

 

「そういうことー!だからまずは生徒の人数を増やさないとねー、まずはそこからかなー。そうすれば議員も輩出できるし、連邦生徒会での発言権も与えられるしね」

 

 

ホシノ先輩って普段はだらけているけど、こういうところはしっかり考えているよなぁ。

レインは素直に感心していた。

 

(学校の存続をちゃんと長期的に見てる……やっぱこの人、ただの昼寝魔じゃない)

 

 

「鋭いご指摘ですが…でもどうやって…」

 

「簡単だよー、他行のスクールバスを拉致ればオッケー!」

 

「はい!?」

 

「登校中のスクールバスをジャックして、うちの学校への転入学書類にハンコを押さないとバスから降りられなくするのー。うへ~これで生徒数がグンと増えること間違いなーし!」

 

「ちょっと待ってください!ホシノ先輩!その行為は言わば誘拐です!そんなことすれば他校との信用問題が!」

 

 

自分は机をバンッと叩く…がその話は止まりそうにない。

 

 

「それ、興味深いね。ターゲットはトリニティ?それともゲヘナ?ミレニアム?狙いをどこに定めるかによって、戦略を変える必要があるかも」

 

 

加えてシロコも参戦してきた。

 

(なんでここで戦術分析に入るんだよ……)

 

先生が来たとき、なぜ真っ先に犯罪を疑われるのかと疑問に思ったが、前言撤回、思われても仕方ない。

 

(むしろ疑われないほうがおかしいレベルだろこれ……)

 

 

「お?えーっと、うーん…そうだなぁ、トリニティ?いや、ゲヘナにしよーっと!」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!そんな方法で転校とかってありなんですか!?それに、他校の風紀委員が黙っていませんよ…」

 

 

アヤネが眼鏡がずれるほど驚いた。

 

 

「アヤネのいう通りです!!それにシロコも賛同しないでください!!」

 

「うへ~やっぱそうだよねー?」

 

「やっぱそうだよねー、じゃありませんよ、ホシノ先輩…もっと真面目に会議に臨んでいただかないと…」

 

 

レインは小さく息を吐く。

 

(この人たち、本当に学校を守る気あるよな……?あるんだよな……?)

 

 

「いい考えがある」

 

「…はい、二年の砂狼シロコさん…」

 

 

次にシロコが提案してきた。アヤネも声のトーンがどんどん低くなっていく。…なんだろう…マジで嫌な予感しかしない。

 

(ホシノ先輩の後にシロコ……嫌な予感の二段構えってある?)

 

 

「銀行を襲うの」

 

「はいっ!?」

 

「…は?」

 

 

一瞬、脳がフリーズした。女子高校から銀行強盗というワードが真剣なトーンで出てくるとは普通思わない。

 

自分は数秒間、言葉を失ったまま固まる。

 

(いや待て待て待て待て、さっきまで冗談だと思ってたラインを普通に越えてきたぞ)

 

 

「確実かつ簡単な方法。ターゲットも選定済み。市街地にある第一中央銀行。金庫の位置、警備員の動線、現金輸送車の走行ルートは事前に把握しておいたから」

 

「さっきから一生懸命見てたのは、それですか!?」

 

 

確かに会議中ずっとタブレットを見ていた気がする。

 

(会議じゃなくて事前偵察だったのかよ……)

 

 

「五分で一億は稼げる。はい、覆面も準備しておいた…レインの分はないけど…そのヘルメットで隠れるし、大丈夫だよね」

 

 

シロコは額に2と書かれた青い覆面を被った。

 

 

「いつの間にこんなものまで…」

 

「うわー、これ、シロコちゃんの手作りー?」

 

「わぁ、見てください!レスラーみたいです!」

 

ノノミの被っているのは3と書かれた緑の覆面だった。

 

「…」

 

「…」

 

困惑しているアヤネと目が合う。

 

レインは小さく肩をすくめた。

 

「……アヤネ、私たち、まだ引き返せますよね?」

 

「た、多分」

 

「いやー、いいねぇ。人生一発でキメないと。ねえ、セリカちゃん?」

 

「そんなわけあるか!!却下!却下ー!!」

 

「そ、そうですっ!犯罪はいけませんっ!」

 

 

シロコはふくれっ面をしながらこちらをじっと見つめてくる。

その視線には不満と本気が混じっていて、冗談ではないことがはっきり分かる。

 

 

「そんなふくれっ面してもだめです。諦めてください」

 

「……お金は確かに必要です。でも、学校が残っても、私たちが捕まったら意味ないです」

 

 

言葉にしてしまえば当たり前のことなのに、なぜかここでは自分が“水を差す役”みたいになっている気がする。

(……いや、これが普通だよな?)

 

 

「はぁ…みなさん、もうちょっとまともな提案をしていただかないと…」

 

 

アヤネはかなり疲れた声で呟く。

その背中から、責任感と胃痛の気配が同時に伝わってくる。

 

 

(アヤネ、今日で寿命三年くらい縮んでそうだな……)

 

「…あのー!はい!次は私が!」

 

 

明るい声が、沈みかけた空気を一気に引き上げる。

 

 

「はい…二年の十六夜ノノミさん。犯罪と詐欺は抜きでご意見をお願いします…」

 

 

アヤネはかなり疲れた声で返事をする。

念押ししているあたり、相当なトラウマが刻まれているらしい。

 

 

「はい!犯罪でもマルチ商法でもない、とってもクリーンかつ確実な方法があります!アイドルです!スクールアイドル!」

 

「ア、アイドル…!?」

 

 

思わず声が裏返る。

(そっちに振り切るのか……)

 

スクールアイドルで廃校を阻止するってあれじゃん、ラ○ライブ!じゃん…全然見てないけど…。

 

 

「そうです!アニメで観たんですけど、学校を復興する定番のアイドルはアイドルです!私たち全員がアイドルとしてデビューすれば…」

 

 

マジでラブラ○ブ!じゃん…。

正直自分はやりたくない…主に体付きが…アビドスのメンバーと比べて…バキバキすぎる…悪目立ちしそう。

というか、露出の多い服を着たくない。

 

 

「却下」

 

「同じく」

 

「…あら…これも駄目なんですか?」

 

「なんで?ホシノ先輩なら、特定のマニアに大ウケしそうなのに。レインちゃんも、カッコいい系で売れそうだし」

 

(やめてくれ、評価の方向性が怖い)

 

「うへーこんな貧弱な体が好きとか言っちゃう輩なんて、人間としてダメっしょー。ないわー、ないない」

 

「私は、皆さんと比べて…あの、体がバキバキすぎて…悪目立ちしそうなので…」

 

 

正直な感想だった。

鏡を見るたびに思う。どう考えても「アイドル体型」ではない。マイクより鍬が似合う某アイドルグループなら合うかもしれないが

 

 

「えー、決めポーズも考えておいたのに…」

 

「水着少女団のクリスティーナで~す♧」

 

 

ノノミは決め台詞とともに決めポーズを決めたが…正直…ダサい。

 

自分は視線を逸らし、小さく呟く。

 

 

「……敵の士気を削ぐ用途なら、ありかもしれませんが……」

 

(戦場に出てきたら、逆に集中切れそうだな……)

 

 

「なによそれ…なにが「で~す♧」よ!それに「水着少女団」って!だっさい!」

 

 

アイドルには共感しないが、今セリカが言ってくれたことには大いに同意する。

 

 

「えー、徹夜で考えたのに…」

 

「徹夜は体に毒ですよ…」

 

「最後に、白鷺レインさん、転校してきたばっかで申し訳ありませんが、何か案はありますか?」

 

 

突然振られ、わずかに背筋が伸びる。

この場で“現実的な案”を出せるかどうかで、自分の立ち位置が決まる気がした。

 

 

「そうですね…指名手配犯探しと似ているのですが、傭兵活動をしてみるのはどうでしょうか?」

 

 

自分は机の上の資料を軽く指で整えながら続ける。

 

「戦闘能力は揃っていますし、連携も取れる。危険は伴いますが、現実的な収入源にはなると思います」

 

 

言葉を選びながら、できるだけ冷静に説明する。

(少なくとも、突拍子もない話よりは……)

 

 

「よ、傭兵ですか?」

 

「はい。様々な企業から出ている任務をこなして稼ぐ、というものです。弾薬などは消耗されますが、シャーレの支援で賄えるはずです」

 

 

今ある知識でこの世界にありそうな仕事を言ってみたが…どうだろうか…。

 

(少なくとも銀行強盗よりは合法だろ……)

 

 

「…申し訳ないのですが、現在この校区付近で出ている依頼は全てカイザーグループの依頼で…この企業とは…あまり関わりたくないんです…」

 

「…分かりました。ならこの話は無かったことにしてください」

 

 

自分は静かに頷く。

 

(事情があるなら無理には踏み込めない……それに、嫌な予感もする)

 

「…そろそろ結論を出したいのですが…」

 

「それは先生に任せちゃおうー。先生、これまでの意見で、やるならどれがいい?」

 

(……嫌な予感しかしない)

 

「えっ!?これまでの意見から選ぶんですか!?も、もう少しまともな意見を出してからのほうがいいのでは!?」

 

「大丈夫だよー。先生が選んだものなら、間違いないって」

 

(その信頼、方向性が危険すぎる)

 

「ちょ、ちょっと待ってください!何でそう言い切れるんですか!?」

 

「まさかアイドルをやれなんて言わないよね?」

 

「アイドルで☆お願いします♤」

 

「…」

 

 

自分は何も言わず、ただゆっくりと深呼吸した。

 

(……ここまで来ると、どれを選んでも地獄な気がする)

 

(でも――)

 

(止め役がいないと、本当にやりかねないんだよな……)

 

内心でため息をつきながら、次に来る“最悪の一手”に備えて身構えた。

 

 

 

「”よし、銀行を襲おう!!”」

 

 

…先生は選択肢の中で一番最悪な一手を選びやがった

 

 

「えぇっ!?本気ですか!?」

 

「……先生、それは流石に冗談ですよね?」

 

アヤネと自分の声は、わずかに震えていた。

 

「”やるって言ったら、本気でやるよ”」

 

「……マジかよ」

 

「……本気で、言ってます?」

 

「”うん”」

 

 

自分は額を押さえ、深く息を吐いた。

 

(ここ、やっぱりヤバい学校だったな……)

 

 

「あはははー!よし、決まりー!それじゃあ出発だー!」

 

「きゃあ~☆楽しそうです!」

 

「ほ、ホントに?これでいいの?」

 

「うへ~いいんじゃなーい?」

 

「計画は大胆なほどいい。でしょ、アヤネ、レイン?」

 

「「…い…」」

 

 

アヤネと自分は数秒間、口を開けずに固まっていた。

全員の視線が集まる。

 

 

(止めるべきだ。絶対に止めるべきだ)

(でもこの空気……止まるか?)

(……いや、止めないとダメだろ……!)

 

「「い」?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいわけないじゃないですかぁ!!!!!」

 

「いいわけねぇだろうがお前らぁ!!!!!」

 

アヤネがちゃぶ台を、自分が机をひっくり返す。

 

(……これが、アビドス対策委員会)

 

倒れた机の向こうで、先生が乾いた笑いを浮かべていた。

 

(先が思いやられる)

 

そう思いながらも、

なぜか少しだけ――この場所が嫌いじゃない自分がいた。




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