ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが?   作:NK7

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続きました


No18 接触

放課後、現在紫関ラーメンにいる。

 

昼の喧騒が落ち着いた時間帯の店内は、湯気と醤油の香りが混ざり合っている。

戦場の砂煙とは正反対の空気だ。

こういう場所にいると、自分がほんの数日前まで装甲車に飛び乗っていたのが嘘みたいに思える。

 

「いやぁー、悪かったってば、アヤネちゃんとレインちゃーん。ラーメン奢ってあげるからさ、怒らないで、ねっ?」

 

「怒ってません…」

 

「…同じく」

 

本当だ。怒りはもう残っていない。

残っているのは、言い方を間違えたという軽い自己嫌悪と、少しの後悔だけだ。

 

セリカに対して言った言葉は、間違ってはいなかったと思う。

でも、正しいことと、正しく伝えることは別問題だ。

それを理解するには、まだ自分は未熟すぎる。

 

「はい、お口拭いて。はい、よくできましたねー☆」

 

「赤ちゃんじゃありませんからっ」

 

「…うっとおしいです」

 

(でも、こういう空気を壊したくないから、強くは言わない)

 

「…なんでもいいんだけどさ、なんでまたウチに来たの?」

 

セリカの投げやりな声を聞きながら、湯気の立つスープを一口すする。

塩分と油が、妙に身体に染みる。

 

「アヤネ、レイン、チャーシューもっと食べる?」

 

「ふぁい」

 

アヤネが食べている途中に返事をしてしまうくらい、食欲が優先されている。

それに気づいて、自分でも少し苦笑する。

 

「私チャーシューに加えて餃子と味玉と替え玉一つ。替え玉は硬めでお願いします」

 

「レインちゃん今日はよく食べますね~前来たときはあまり食べなかったのに」

 

「ま、まぁ、今日はチートデイなので」

 

半分は冗談。

でも、もう半分は本音だ。

 

転生前の自分は、胃が弱かった。

ラーメン一杯で満腹どころか、重たさに苦しんだ。

でも今は違う。

 

走って、撃って、跳んで、生き残るための身体。

この世界の自分は、明らかにエネルギー消費量が違う。

それに加え若いうちに油っこい物は食べておかなければ、歳をとればとるほど食べれなくなる

 

(身体が変わると、生活そのものが変わるんだな)

 

順調に食べ続けていると、出入口のドアが開く。

 

反射的に振り返る。

これはもう癖だ。

戦場では、背後からの気配に反応できない人間は長く生きられない。

 

視界に入ったのは、ショットガンを持ち、軍服のような服を着た少女だった。

 

 

「…こ、ここで一番安いメニューって、お、おいくらですか?」

 

声は震えている。

でも、それは戦闘の恐怖ではない。

金銭的な切迫感。

経験上、これはかなり深刻な部類だ。

 

(金欠か……学生あるあるだけど、ここまで追い詰められると笑えないな)

 

「一番安いのは…580円の紫関ラーメンです!看板メニューなんで、美味しいですよ!」

 

「ありがとうございます!」

 

 

その少女はいきなり店の外に出て行った。セリカも不思議な表情を浮かべている。

 

(……外?)

 

無意識に、ドアの方向へ視線を追ってしまう。

食事中だというのに、身体のどこかが警戒を解かない。

 

(単独行動には見えない。あの動きはおそらく、仲間との合流)

 

少女が戻ってくると、追加で三人入ってきた。何やらガラの悪そうな感じである…て、あのPSG-1を持っているのコートを羽織っている少女は…転生前、Y〇uTubeやニ〇ニ〇動画で見たことがある気がする…名前は…なんだっただろうか…

 

(PSG-1……長距離狙撃向き。しかも持ち方が自然)

 

(素人じゃない)

 

記憶の奥がざわつく。

動画。BGM。ネタ。

断片的だった知識が、現実の輪郭を帯びて浮かび上がる。

 

「えへへっ、やっと見つかった、600円以下のメニュー!」

 

(このテンションで金欠なのか……)

 

「ふふふ。ほら、何事にも解決策はあるのよ。全部想定内だわ」

 

(……この声)

 

「そ、そうでしたか、さすが社長、何でもご存知ですね…」

 

「はぁ…」

 

 

確信が強まる。

思い出しかけている。

名前が、あと少しで届きそうなのに出てこない。

 

 

「四名様ですか?お席にご案内しますね」

 

「んーん、どうせ一杯しか頼まないし大丈夫」

 

(……一杯?)

 

「一杯だけ……?でも……どうせならごゆっくりお席へどうぞ。今は暇な時間なので、空いている席も多いですし」

 

「おー、親切な店員さんだね!ありがとう、それじゃあお言葉に甘えて。あ、わがままのついでに、橋は四膳でよろしく。優しいバイトちゃん」

 

「えっ?四膳ですか?ま、まさか一杯を四人で分け合うつもり?」

 

(本当に分ける気なんだ……)

 

 

想像以上に切迫している。

戦場の物資不足に近い感覚を覚える。

 

 

「ご、ご、ごめんなさいっ。貧乏ですみません!!お金がなくてすみません!!」

 

「あ、い、いや……!その、別にそう謝らなくても…」

 

「いいえ!お金がないのは首がないのも同じ!生きる資格なんてないんです!虫けらにも劣る存在なのです!虫けら以下ですみません」

 

 

ショットガンの少女はいきなり自暴自棄になる…大丈夫かこの子。

 

(精神状態が極端だ……自己否定が強すぎる)

 

(戦闘中なら判断力を失う危険タイプ)

 

 

「はぁ…ちょっと声デカいよ、ハルカ。周りに迷惑…」

 

 

ダウナー系の少女が落ち着いた声で制止する。

 

 

(抑制役……チームバランスは取れてる)

 

「そんな!お金がないのは罪じゃないよ!胸を張って!」

 

 

まぁ実際うちもお金が全然無いからなぁ。

 

(……分かる)

 

(分かりすぎる)

 

アビドスの財政状況が脳裏をよぎる。

利息。借金。

数字がそのまま重圧になる感覚。

 

 

「へ?…はい!?」

 

「お金は天下の回りもの、ってね。そもそもまだ学生だし!それでも、小銭をかき集めて食べに来てくれたんでしょ?そういうのが大事なんだよ!もう少し待っててね。すぐ持ってくるから」

 

 

セリカの説得力すごいなぁ。

 

(ああいう真っ直ぐさは……強い)

 

(戦闘力とは別の意味で)

 

 

「…何か妙な勘違いをされているみたいだけど?」

 

「まあ、私たちもいつもはそんなに貧乏ってわけじゃないんだけどね。強いて言えば、金遣いの荒いアルちゃんのせいだし」

 

……アル…アルって言った!?

 

(やっぱり)

 

脳内で点と点が繋がる。

 

(陸八魔アル)

 

(便利屋68)

 

(つまり――)

 

もしや…ブルーアーカイブの世界なのか!?そりゃあこんなに治安が悪いのも納得だわ!

 

理解が進むほど、逆に落ち着いていく。

未知だった世界が、既知の設定として整理されていく。

 

(……でも、知識は断片的)

 

(ゲームや動画で見た情報は、ほとんどネットミーム…この世界を知るための資料にはならない)

 

「…レインちゃん?大丈夫ですか?ラーメン伸びちゃいますよー」

 

「…はっ…大丈夫です…」

 

 

どうやら完全に思考停止していたらしい。

 

(集中しすぎるのは悪い癖だ)

 

 

「はぁ。ま、リスクは減らせたほうがいいし。今回のターゲットは、ヘルメット団みたいなザコには扱えないってことは同意する。でも全財産をはたいて人を雇わなきゃいけないほど、アビドスは危険な連中なの?」

 

(……ターゲット)

 

 

耳が自然に会話を拾い始める。

 

「それは…あの…」

 

 

「多分アルちゃんもよくわかってないと思うよ。だからビビッていっぱい雇ってるんだよ」

 

「誰がビビってるって!?全部私の想定内!失敗は許されない。あらゆるリソースを総動員して臨むわ。それが便利屋68のモットーよ!」

 

(自信過剰……だけど)

 

(仲間を鼓舞するタイプ)

 

「初耳だね、そんなモットー」

 

「今思いついたに決まってるよ」

 

 

(……詰めが甘い)

 

だが同時に思う。

 

(危険なのは、こういうタイプ)

 

(勢いで作戦を押し通す)

 

 

「うるさい!じゃあ今回の依頼を成功させて報酬が手に入ったら、すき焼きにするわ!だから気合い入れなさい、みんな!」

 

 

ラーメンと餃子を食べながら、あの四人組、便利屋68の会話を聞く。

 

思考が、静かに戦術モードへ移行する。

 

(金が無い → 傭兵を雇う → 高リスク依頼)

 

(そしてターゲットが“アビドス”)

 

胃の奥がわずかに冷える。

 

(……可能性は高い)

 

(ほぼ確定)

 

それでも恐怖は湧かない。

代わりに浮かぶのは、対策の組み立て。

 

(戦力差は?)

 

(指揮系統はアル中心)

 

(精神面は不安定)

 

警戒しておこう…おそらくいつか便利屋68が傭兵を連れてうちを襲撃してくるだろう。あとでホシノ先輩に伝えておこう。

 

 

「はい!お待たせいたしました!熱いのでお気をつけて!」

 

 

あの四人組に届いたラーメンを見てみると、まるで二郎系の野菜マシマシかの如く器にあふれんばかりに高く積み上げられたラーメンが届いていた。

 

(……量、多すぎないか)

 

「ひえっ、何これ!?ラーメン超大盛じゃん!」

 

「ざっと、十人前はあるね…」

 

「こ、これはオーダーミスなのでは?こんなの食べるお金、ありませんよう…」

 

 

驚きが、空気を一気に緩める。

 

(さっきまで襲撃を考えていた相手が……)

 

(ただの空腹の学生に見える)

 

 

「いやいや、これで合ってますって。580円の紫関ラーメン並!ですよね、大将?」

 

「ああ、ちょっと手元が狂って量が増えちまったんだ。気にしないでくれ」

 

「大将もああ言ってるんだから、遠慮しないで!それじゃ、ごゆっくりどうぞー!」

 

「う、うわあ…」

 

「よくわかんないけど、ラッキー!いっただっきまーす!」

 

「…ふふふ、さすがにこれは予想外だったけど、厚意に応えて、ありがたく頂かないとね」

 

「食べよっ!」

 

 

あの四人組はたくさん盛られた紫関ラーメンをすすり始めた。反応的にすっごく満足そうである。

 

(……こういう時間もあるんだな)

 

 

「でしょう、でしょう?美味しいでしょう?」

 

 

ノノミがアルに対して話しかけに行った

 

 

「あれ…?隣の席の…」

 

「うんうん、ここのラーメンは本当に最高なんです。遠くからわざわざ来るお客さんもいるんですよ」

 

「ええ、わかるわ。色んな所で色んなのを食べてきたけど、このレベルのラーメンはなかなかお目にかかれないもの」

 

「えへへ…私たち、ここの常連なんです。他の学校のみなさんに食べていただけるなんて、なんか嬉しいです…」

 

「その制服、ゲヘナ?遠くから来たんだね」

 

ゲヘナというと、確かトリニティと双璧をなすマンモス校と記憶している。だが、学校が会社というものを立ち上げていいのか?…もしや違法の部活動かサークル的なものなのでは?

 

(組織構造が曖昧……)

 

(半分部活、半分企業)

 

(だから資金が不安定)

 

 

「私、こういう光景を見たことがあります。一杯のラーメン、でしたっけ…」

 

「うへ~、それは一杯のかけそばじゃなかったっけ?」

 

 

ホシノ先輩と二年生コンビとアルの話が盛り上がる中、便利屋68の白髪コンビがなにやらこちらを見つめてくる。

 

(……気づかれたか)

 

視線の意味を測る。

敵意は薄い。

警戒と興味が半々。

 

それに対してアルは

 

 

「うふふふっ!いいわ、こんなところで気の合う人たちに会えるなんて。これは想定外だけど、こういう予測できない出来事こそ人生の醍醐味じゃないかしら」

 

 

その言葉を聞いて、自然と思う。

 

(この人……)

 

(悪人に見えない)

 

計算はしている。

見栄も張る。

 

だが、感じることがある

アルは…悪人向いてないな

 

 

「はい、替え玉固め」

 

「ありがとうございます、大将」

 

 

そう思いながら、

湯気の立つ替え玉を静かに受け取った。

 




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