ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが? 作:NK7
「…ここまで来れば大丈夫でしょう」
ヒフミの後を追い、人通りの少ない歓楽街へと滑り込む。
ネオンの明かりが昼間だというのに淡く瞬き、路地の奥からは煙草と油の混ざった匂いが漂っていた。
自然に背後を確認する。
追跡――なし。
だが油断はしない。
「ふむ…ここをかなり危険な場所だって認識してるんだね」
「えっ?と、当然です。連邦生徒会の手が及ばない場所のひとつですから…ブラックマーケットだけでも、学園数個分の規模に匹敵しますし、決して無視はできないかと…」
「それに様々な「企業」が、この場所で違法な事柄を巡って利権争いをしていると聞きました」
企業が争い…?まるで某身体が闘争を求めるゲームみたいな世界観だな…
(……でも、冗談じゃ済まない)
「それだけじゃありません。ここ専用の金融機関や治安機関があるほどですから…」
「銀行や警察があるってこと…!?そ、それってもちろん、認可されてない違法な団体だよね!?」
「はい…そうです」
「スケールが桁違いですね…」
「中でも特に治安機関は、とにかく避けるが一番です…騒ぎを起こしたら、まずは身を潜めるべきです…」
その話し方だと結構対応が早そうだが…さっきの戦闘は騒ぎではないのか…?
(……まだ“観測”されていないだけかもしれない)
無意識に周囲の監視カメラを探していた。
見えない位置。
死角。
屋上の影。
「ふ~ん、ヒフミちゃん、ここのことに結構詳しいんだねー」
「何回も来たことがあるってオーラを感じます」
「えっ?そうですか?危険な場所なので、事前調査をしっかりしたせいでしょうか…」
(事前調査だけでここまで把握するのは……相当だ)
ヒフミを少しだけ見直す。
「よし、決めたー」
「助けてあげたお礼に、私たちの探し物が手に入るまで一緒に行動してもらうねー♪」
「え、ええっ?」
「わあ☆いいアイデアですね!」
「なるほど、誘拐だね」
「はいっ!?」
「シロコはなんでも犯罪に繋げるのやめません?ヒフミさん困惑してますよ」
「そうそう、誘拐じゃなくて、案内をお願いしたいだけでしょ?もちろん、ヒフミさんが良ければ、だけど」
「あ、あうう…私なんかでお役に立てるかわかりませんが…アビドスのみなさんにはお世話になりましたし、喜んで引き受けます」
「よーし。それじゃあ、ちょっとだけ同行頼むねー」
(……優しい人だ)
(この街には、向いてない)
そう思いながらも、口には出さなかった。
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それから時間が過ぎ、ブラックマーケットの中心街までたどり着いた
「はあ…しんど」
「もう数時間は歩きましたよね…」
「これは流石に、おじさんも参ったなー。腰も膝も悲鳴を上げてるよー」
「私は肩がかなり悲鳴を上げてます…」
実際リュックにはSVCh-8.6とPKPに加え、減ったとはいえ大量の弾薬や食料が入っている。置いてこいやというのも分かるが、この治安でこれらを置いていくのは正直不安である
「えっ…ホシノさんとレインさんはおいくつなのですか…?」
「ほぼ同世代っ!」
「……ホシノ先輩の精神年齢は知りませんけど」
小さく呟く。
「あら!あそこにたい焼き屋さんが!」
「ホントだー」
「あそこでちょっとひと休みしませんか?たい焼き、私がご馳走します!」
「えっ!?ノノミ先輩、またカード使うの!?」
「先生の「大人のカード」もあるよ~」
「ううん、私が食べたいからいいんですよ☆みんなで食べましょう、ね?」
「まいどー!!」
「おいしい!」
「いやぁ、ちょうど甘いモノが欲しかったところだったんだー」
「あはは…いただきます」
自分もたい焼きを手に取り、一口食べる
生地はパリッ、中は程よい甘さのこしあんが体に染みる。これは粒あんの方も食べたいところ
(……甘い)
(戦場じゃ味わえない味)
無意識にもう一口かじる。
「…久しぶりに甘いもの食べたな」
誰にも聞こえない声で、つぶやいた
「アヤネちゃんには、戻ったらちゃんとご馳走しますね。私たちだけでごめんなさい…」
「あはは、大丈夫ですよ、ノノミ先輩。私はここでお菓子とかつまんでますし…」
「しばしブレイクタイムだねー」
束の間の休息。
だが、自分の神経は完全には緩まなかった。
ブラックマーケットという場所は――
静かであるほど、逆に不気味だった。
「ここまで情報がないなんてありえません…妙ですね。お探しの戦車の情報…絶対どこかにあるはずなのに、探しても探しても出てきませんね…販売ルート、保管記録…すべて何者かが意図的に隠しているような、そんな気がします」
「いくらここを牛耳っている企業でも、ここまで徹底してブラックマーケットを統制することは不可能なはず…」
(統制……?)
胸の奥に、小さな違和感が生まれる。
ブラックマーケットとは、本来は無秩序の象徴だ。
そこに統制が存在するなら――
それは偶然ではない。
(誰かが“秩序”を作っている)
そして秩序を作る者は、例外なく――
暴力か、資金か、その両方を握っている。
「そんなに異常なことなの?」
「異常というか…普通ここまでやりますか?という感じですね…ここに集まっている企業は、ある意味開き直って悪さをしていますから、逆に隠したりしないんです。例えばあそこのビル。あれがブラックマーケットに名を馳せる闇銀行です」
視線を向ける。
巨大な建造物。
派手さはない。
だが――威圧感がある。
(堅牢さを誇示する建物は、防御だけでなく“権力”を示す)
「闇銀行?」
「ブラックマーケットで最も大きな銀行のひとつです。聞いた話だと、キヴォトスで行われる犯罪の15%の盗品があそこに流れているようです…横領、強盗、誘拐などなど、様々な犯罪によって獲得した財貨が、違法な武器や兵器に変えられてまた他の犯罪に使われる…そんな悪循環が続いているのです」
(循環型犯罪経済……)
軍事的に見れば、最も厄介な構造だ。
資金が尽きない限り、暴力は終わらない。
「…そんなの、銀行が犯罪を煽っているようなものじゃないですか」
「その通りです。まさに銀行も犯罪組織なのです…」
「まるで死の商人ですね…利益のためならどこにでもお金をまき散らす…」
どこの世界でもあるんだな、利益のためなら何でもする企業っていうのは
静かに頷く。
だが同時に、別の考えが浮かぶ。
(こういう組織は……絶対に“証拠”を残さない)
「ひどい!連邦生徒会は一体何やってんの?」
「理由はいろいろあるんだろうけどねー、どこもそれなりの事情があるだろうからさ」
「現実は、思ったより汚れているんだね。私たちはアビドスばかりに気を取られすぎて、外のことをあまりにも知らな過ぎたかも…」
誰もが現実を飲み込もうとしている。
その時――
「お取込み中失礼します!そちらに武装した集団が接近中!気付かれた様子はありませんが…まずは身を潜めた方がいいと思います…」
瞬間、意識が戦闘モードへ切り替わる。
「う、うわあっ!?あれは、マーケットガードです!」
「マーケットガード?」
「先ほどお話しした、ここの治安機関でも最上位の組織です!急ぎましょう!」
近場にあった花壇の後ろに隠れ、植物の隙間から何をしているか偵察することにした
呼吸を抑える。
視線だけを動かす。
「…現金輸送車を護送しています…あ、現金輸送車が闇銀行に入っていきました…」
民間警備の域を超えている。
準軍事組織。
そう判断する。
現金輸送車の中から、見覚えのある人が出てきて、闇銀行の職員に何かの書類にサインした
「見てください…あの人…」
「あれ…?な、何で!?あいつは毎月うちに来て利息を受け取っているあの銀行員…?」
「あれ、ホントだ」
「えっ!?ええっ…?」
「…どういうこと?」
視界が一気に鋭くなる。
(点が……繋がった?)
「ほ、本当ですね!車もカイザーローンのものです!今日の午前中に、利息を支払った時のあの車と同じようですが…なぜそれがブラックマーケットに…!?」
「か、カイザーローンですか!?」
「ヒフミちゃん、知ってるの?」
「カイザーローンと言えば…かの有名なカイザーコーポレーションが運営する高利金融業者です…ところでみなさんの借金とはもしかして…アビドスはカイザーローンから融資を…?」
「借りたのは私たちじゃないんですけどね…」
「話すと長くなるんだよねー。アヤネちゃん、さっき入ってった現金輸送車の走行ルート、調べられる?」
「少々お待ちください…ダメですねすべてのデータをオフラインで管理しているようです。全然ヒットしません」
「だろうねー」
「そういえば、いつも返済は現金だけでしたよね。それはつまり…」
「私たちが支払った現金が、ブラックマーケットの闇銀行に流れていた…?」
「じゃあ何?私たちはブラックマーケットに、犯罪資金を提供してたってこと!?」
「…その資金が巡りにめぐって、自分たちに弾丸という形で帰ってきていた…ということですね…」
言葉が、重く沈む。
ここにいるみんなが黙り込む。
(戦場ではよくある話です)
(でも……自分がその循環の一部だったと知るのは、別問題です)
「ま、まだそうハッキリとは…証拠も足りませんし。あの輸送車の動線を把握するまでは」
冷静に言う。
まだ断定してはいけない。
感情で動けば、判断を誤る。
「…あ!さっきサインしてた集金確認の書類…。それを見れば証拠のなりませんか?」
その言葉に、思考が止まる。
(確かに……証拠になる)
「さすが」
「おお、そりゃナイスアイデアだねー、ヒフミちゃん」
だが同時に、別の現実が浮かぶ。
銀行内部。
最高レベルの警備。
準軍事組織の常駐。
――侵入は、ほぼ戦闘行為。
「あはは…でも考えてみたら、書類はもう銀行の中ですし…無理ですね。ブラックマーケットでも最も強固なセキュリティを誇る銀行の中になると…それにあれだけの数のマーケットガードが目を光らせてますし…それ以外の輸送車の集金ルートを確認する方法は…ええっと…うーん」
(そうです)
(それが普通の判断です)
「うん、他に方法はないよ」
…あ、いやな予感がする
背筋に冷たいものが走る。
アビドスのみんなが“同じ方向”を向き始めた時。
大体、碌な展開にならない。
「えっ?」
「ホシノ先輩、ここは例の方法しか」
(来た……)
「なるほど、あれかー。あれなのかあー」
マジで?マジでするつもり?あれを
鼓動が早まる。
止めなければ。
でも――
(この空気……もう止まらない)
「…ええっ?」
「あ…!!そうですね、あの方法なら!」
ノノミまで!?ちょっと!?自分どう見てもバレるって!!
危険度が跳ね上がる。
ノノミが賛成する時点で――
作戦は本気になる。
「何?どういうこと?…まさか、あれ?まさか、私が思ってるあの方法じゃないよね?」
(お願いです)
(違うと言ってください)
「シロコ、ウソですよね?まさか…あれするとか言わないでくださいね!?」
シロコの顔がキラーンとしている…マジでやるつもりだ…
絶望が、ゆっくりと胸に沈む。
「う、嘘っ!?本気で!?」
「私やりたくないんですけど!!??」
珍しく、本音がそのまま口から出た。
「…あ、あのう。全然話が見えないんですけど…「あの方法」ってなんですか?」
ヒフミの震えた声。
その不安が、痛いほど理解できた。
(巻き込みたくない)
(でも……この流れを止められる自信が、もうない)
「残された方法はただひとつ」
その一言が落ちた瞬間。
心の中で、静かに理解してしまう。
(ああ……)
(ここから先は)
(もう、普通の調査じゃない)
シロコは覆面を被る
「銀行を襲う」
「はいっ!?」
――聞き間違いであってほしかった。
「やっぱり…」
「だよねー、そういう展開になるよねー」
「はいいいっ!!??」
心臓が一瞬止まり、その直後に強く跳ね上がった。
(いやいやいやいや待ってください)
(戦闘と犯罪は、意味が違います)
「みなさん落ち着いて!!??」
自分でも珍しいほど声が裏返る。
だが――誰一人として、止まる気配がない。
(どうしてそんなに即決できるんですか……!?)
(証拠を取りに行く、ならまだ分かる。でも銀行襲撃は段階が飛びすぎている)
「わあ☆そしたら悪い銀行をやっつけるとしましょう!」
「えええっ!!??ちょ、ちょっと待ってください!」
本気で止めようと手を伸ばす。
だがその手は、空を切った。
「はあ…マジで?マジなんだよね…?ふぅ…それなら」
「え、セリカも!?待って!?」
最後の理性が崩れ落ちる音がした。
(セリカが乗った時点で……止まらない)
「とことんまでやるしかないか!!」
みんな覆面をかぶり、やる気満々である
ああっ…終わった
視界の端で、次々と準備が進んでいく。
迷いも、葛藤も、誰も見せない。
(どうして……どうしてこうなるんですか)
(私はただ情報を集めに来ただけなのに)
「あ、うあ…?あわわ…?」
アヤネも困惑している…よね?
わずかな希望を込めて視線を向ける。
(お願いです……誰か止めてください)
だが。
「はぁ、了解です。こうなったら止めても聞く耳を持たないでしょうし…どうにかなる…はず…」
最後の砦が崩れた。
どうしよう
胃が締め付けられる。
逃げたい。
正直に言えば、今すぐここから離脱したい。
ヒフミと目が合う。もう、どうしようにもないのだろうか
その瞳には――自分と同じ恐怖が浮かんでいた。
(……巻き込んでしまった)
胸が痛む。
「ごめん、ヒフミ。あなたの分の覆面は準備が無い」
「うへー、ってことは、バレたら全部トリニティのせいだって言うしかないねー」
(それは絶対ダメです)
「ええっ!?そ、そんな…覆面…何で…えっと、だから…あ、あう」
「それは可哀そうすぎます」
本気で声が強くなる。
これは冗談では済まない。
「そうです!他校の生徒にこんなこといっしょにこんなことするなんて!!」
止めようと一歩踏み出す。
せめてヒフミだけでも外したい。
だが――
「ヒフミちゃん、とりあえずこれでもどうぞ☆」
(あああああああああああああああああ!!)
心の中で叫ぶ。
現実は容赦なく進んでいく。
「ああああああ!!!!もう!!白いテープください!!」
声に混じるのは怒りではない。
諦めだった。
(止められないなら――せめて被害を最小に)
(監視役でも、盾でも、何でもやる)
「どうぞ☆」
テープを受け取る手が震えている。
リュックとベストを花壇の後ろに隠し、ヘルメットの真ん中に三本白いラインを引く。
次にボディアーマーに「KILLA」とテープで文字を書き、PKPを構えた
「もう!!やってやりますよ!!」
吐き出すように叫ぶ。
その声には、開き直りと――
かすかな自己嫌悪が混じっていた。
(でも……)
(絶対に、無駄な怪我人は出させません)
「おおー、レインちゃんかっこいいじゃんー!!」
(かっこよくなんてありません)
(ただ、逃げられなくなっただけです)
もう、ヤケクソでやるしかない
それでも、足は前を向く。
「それじゃあ先生。例のセリフを」
「’’銀行を襲うよ!’’」
胸の奥がズキリと痛む。
「はいっ!出発です☆」
「あうう…」
ヒフミさん…すみません
心の中で何度も謝る。
「ふぅ…では、水着覆面団…」
アヤネも覆面を着けた…はぁ
(もう、本当に戻れないんですね)
「出撃しましょうか…」
足を踏み出す。
その一歩は、重かった。
けれど同時に――
(終わったら、絶対に説教します)
(全員まとめて)
小さく、決意だけが灯っていた。
感想お待ちしてます
続きません
レインの設定って書いたほうがいいですか?
-
いる
-
いらん