ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが? 作:NK7
全員で机を囲み、山のように積まれた書類を確認していた。
紙をめくる音と、時折ペン先が机を叩く乾いた音だけが、静かな教室に響く。
その空気を――
突然、セリカの叫びが切り裂いた。
「なっ、何これ!?一体どういうことなのっ!?」
勢いよく立ち上がり、手にした書類を震わせる。
「落ち着いてください、セリカさん。どれですか?」
アヤネが慌てて覗き込む。
シロコはすでに内容を読み取っていたようで、静かに口を開いた。
「……現金輸送車の集金記録。アビドスで788万円集金したと記されている」
一枚の資料を机の中央へ滑らせる。
「私たちの学校に来た、あのトラックで間違いない」
その声は落ち着いていたが、わずかに硬い。
「でも、その後……」
シロコは次の欄を指でなぞる。
「……カタカタヘルメット団に対して『任務補助金500万円提供』という記録がある」
空気が凍りつく。
「私たちのお金を受け取った後に、ヘルメット団のアジトに直行して、任務補助金を渡したってことだよね!?」
「任務だなんて……?カタカタヘルメット団に……?……ヘルメット団の背後にいるのは、まさか……カイザーローン?」
教室の空気が一段階冷える。
「ど、どういうことでしょう!?」
ノノミが思わず声を上げる。
「学校が破産したら、貸し付けたお金も回収できないでしょうに……どうしてそのようなことを……?」
その疑問は、もっともだった。
普通に考えれば――自分で貸した相手を破綻に追い込むなど、利益にならない。
「ふーむ……」
ホシノ先輩が顎に指を当て、天井を見上げる。
沈黙が落ちた。
その中で。
書類を一枚ずつ重ねながら黙っていた。
(……金の流れが、妙だ)
視線を数字の列へ落とす。
直接撃たず、崩す。
正面から奪わず、追い込む。
(資金操作で、標的を弱体化させる手口……)
ゆっくりと口を開く。
「……銀行単独の判断とは考えにくい」
全員の視線が向く。
資料の一箇所を指差した。
「補助金名目の支出。しかも、武装組織に対して。これは通常の金融業務の範囲を超えています」
静かな声だった。
だが、確信を帯びている。
「誰かが、意図的に資金を流していると考えられます」
アヤネが息を呑む。
「つまり……」
一瞬、言葉を止めた。
(もし自分の予想が正しければ……)
胸の奥に、嫌な既視感が広がる。
企業が戦場を作り、
傭兵が戦い、
都市が崩れる。
「……この件、銀行単独の仕業じゃない」
静かに言い切る。
「カイザーコーポレーションの意向が絡んでいる可能性が高い」
教室が完全に静まり返る。
「……はい。そう見るのが妥当ですね…」
ヒフミさんが相槌を打つ
セリカが机を叩いた。
「じゃあ何!?あいつら、最初から私たちを潰すつもりだったってこと!?」
「可能性は高いねぇ」
ホシノ先輩が気だるげに呟く。
「貸して、絞って、弱らせて……最後に全部持っていく。昔からよくあるやり口だよ」
ノノミが不安そうに手を握る。
「そんな……」
アヤネは資料を抱きしめるように持つ。
「私たち……完全に狙われているってことですか……?」
窓の外を見る。
沈みかけた陽が、校舎を赤く染めている。
胸の奥で、何かが静かに固まる。
逃げ場のない構図。
選択肢を削り取る圧力。
(だが……)
ちらりと横を見る。
必死に計算を続けるアヤネ。
怒りで震えるセリカ。
不安を隠しきれないノノミ。
無表情のまま状況を整理するシロコ。
一緒に考えてくれるヒフミさん
そして――
すべてを見通しているように、静かに笑うホシノ。
(……一人じゃない)
小さく息を吐いた。
「まだ、詰みじゃない」
ぽつりと呟く。
「資金の流れが分かれば、逆に辿れる。カイザーが何を狙っているのか……必ず綻びはある」
その声には、戦場に立つ者の冷静さが宿っていた。
「……だから」
わずかに視線を上げる。
「まだ、終わりじゃない」
その言葉に。
ほんの少しだけ、教室の空気が戻った。
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「みなさん、色々とありがとうございました」
ヒフミが深々と頭を下げる。
その動きは、いつもより少しぎこちない。今日一日で経験した出来事が、まだ整理しきれていないのが伝わってきた。
「変な事に巻き込んでごめんなさい、ヒフミさん」
アヤネが申し訳なさそうに続ける。
「あ、あはは……」
ヒフミは苦笑しながら手を振った。
「だ、大丈夫です。正直……びっくりすることばかりでしたけど……」
少し間を置いて。
「……でも、皆さんと一緒で、心強かったです」
その言葉に、ホシノ先輩がにこっと笑う。
「今度遊びに行くから、その時はよろしくー」
「はいっ、もちろんです」
ヒフミは力強く頷いた。
「まだ詳しいことは明らかになっていませんが……これは、カイザーコーポレーションが犯罪組織、あるいは反社会勢力と何かしら関係があるという……事実上の証拠になり得ます」
言葉を選びながら、慎重に続ける。
「戻ったら、この事実をティーパーティーに報告します。それと……アビドスさんの現在の状況についても……」
「まー、ティーパーティーはもう知ってると思うけどねー」
ホシノが、のんびりと割り込んだ。
「は、はいっ!?」
ヒフミが目を丸くする。
「あれほどの規模を持つ学園の首脳部なら、それぐらいはもうとっくに把握してると思うんだよ。みんな、遊んでばかりじゃないだろうしさ」
「そ、そんな……知っているのに、みなさんのことを……」
ヒフミの声が小さくなる。
「うん。ヒフミちゃんは純真で良い子だねー」
ホシノは柔らかく笑った。
「でも世の中、そんなに甘くないからさ。ヒフミちゃんの気持ちはありがたいけど……そっちに知らせたところで、これといった打開策が出るわけじゃないし。かえって私たちがパニくることになりそうな気がするんだよねー」
「そ、そうですか……?」
ヒフミが不安そうに視線を落とす。
「ほら、今のアビドスって廃坑寸前じゃん?トリニティとかゲヘナみたいなマンモス校からのアクションをコントロールできる力がないんだよー。言ってる意味、分かるよね?」
「……サポートするという名目で悪さをされても、それを阻止できない……ってことですよね……」
ヒフミがぽつりと呟く。
「そうですね……その可能性も、なくはありません……あうう……政治って難しいです……」
ノノミが少しだけ眉を下げる。
「でも……ホシノ先輩、悲観的に考えすぎなのではないでしょうか?本当に助けてくれるかもしれませんし……」
「うへ~」
ホシノは肩をすくめた。
「私は他人の好意を素直に受け取れない、汚れたおじさんになっちゃってねー」
軽く笑う。
「『万が一』ってことをスルーしたから、アビドスはこの有様になっちゃったんだよー」
その言葉に、少しだけ空気が重くなる。
レインは黙って、そのやり取りを見ていた。
(……経験から来る言葉だな)
楽観でも悲観でもない。
ただ、失敗を知っている人間の現実。
(……正しいかどうかじゃない)
それを壊すべきなのか。
守るべきなのか。
答えは出なかった。
「では……えっと……本当に……」
ヒフミが姿勢を正す。
「一日で、色んな出来事がありましたね」
「そうだね、すごく楽しかった」
シロコが即答する。
「……楽しかったのはシロコ先輩だけじゃないの?」
セリカが半眼になる。
「少なくとも私は楽しくありませんでしたよ」
自分はため息混じりに言う。
「あ、あははは……私は……」
ヒフミが少しだけ照れながら笑う。
「私は楽しかったです」
「いやぁー、ファウストちゃん、お世話になったね」
ホシノ先輩が手を振る。
「そ、その呼び方はやめてください!」
ヒフミが慌てて否定する。
「よっ、覆面水着団のリーダーさん!」
ノノミがからかう。
「みなさん……ヒフミさんが困ってるじゃないですか」
アヤネが軽く注意する。
ヒフミは慌てて手を振った。
「と、とにかく……これからも大変だとは思いますが……頑張ってくださいね。応援してます」
深呼吸をして。
「それでは……みなさん、またお会いしましょう」
丁寧にお辞儀をする。
その姿が、夕焼けに染まる校門の前で少しだけ眩しく見えた。
「みなさんお疲れさまでした」
アヤネが場をまとめる。
「今日はゆっくり休んで、明日改めて集まりましょう」
「解散~」
ホシノ先輩が間延びした声を出す。
それぞれが帰路につき始める。
歩き出しながら、ふと空を見上げた。
夕焼けが、ゆっくり夜に飲み込まれていく。
(……騒がしい一日だった)
銀行襲撃。
企業の陰謀。
そして、予想外の「日常」。
胸の奥に、疲労と――ほんのわずかな達成感が残っていた。
(……でも)
ポケットの中で、書類がわずかに擦れる。
(終わってない)
むしろ。
(ここから始まる)
カイザー。
資金の流れ。
狙われるアビドス。
そして。
(……守れるのか)
無意識に、仲間たちの背中を見つめる。
(……いや)
小さく息を吐く。
(守るしかないか)
そう決めて。
静かに歩き続けた。
感想お待ちしてます
続きません
レインの設定って書いたほうがいいですか?
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いる
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いらん