ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが?   作:NK7

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続きました


No.33 風紀委員長

「ゲヘナの風紀委員長……空崎ヒナ。外見情報も一致します、間違いなく本人のようです」

 

「ですが、ゲヘナ風紀委員長ということは……ゲヘナにおいてトップの戦闘力……この状況でそんな人物まで……」

 

 

アヤネの声は冷静を保っているが、わずかに震えている。

 

ヒナは何も言わず、アコを鋭い目で睨み続ける。

視線だけで、場の温度が数度下がったように感じる。

 

 

「そ、その……これは、素行の悪い生徒たちを捕まえようと……」

 

「便利屋68のこと?どこにいるの?今はシャーレとアビドスと、対峙しているように見えるけど」

 

「え、便利屋ならそこに……」

 

 

アコが視線を便利屋のいる場所に向ける。

 

だが――

 

そこにいたはずの便利屋の姿は、綺麗さっぱり消えていた。

 

 

「い、いつの間に逃げたのですか!?さ、さっきまでそこにいたはず……!」

 

 

(……さすが)

 

私は内心、わずかに苦笑する。

 

(本当に、逃げ足だけは一流だな)

 

ヒナは無言のまま、アコを見続ける。

沈黙が一番きつい。

 

 

「え、えっと……委員長、全て説明いたします」

 

「……いや、もういい。だいたい把握した。察するに、ゲヘナにとっての不安要素の確認及び排除。そういう政治的な活動の一環ってところね」

 

 

アコが小さく肩を震わせる。

 

 

「でもアコ、私たちは風紀委員会であって、生徒会じゃない。シャーレ、ティーパーティー、それに連邦生徒会。そういうのは『万魔殿』のタヌキたちにでも任せておけばいい。詳しい話は帰ってから。通信を切って校舎で謹慎していなさい」

 

「……はい」

 

 

アコのホログラムが静かに消える。

 

そして。

 

ヒナの視線が、ゆっくりとこちらへ向く。

 

心臓が、嫌な音を立てる。

 

(来るか)

 

 

「じゃあ、あらためてやろうか」

 

 

シロコのその一言で、空気が張り詰める。

 

「ま、待ってください!ゲヘナの風紀委員長と言ったら、キヴォトスでも匹敵する人物を見つけるのが難しいほどの、強敵中の強敵ですよ!ここは下手に動かず、一旦交渉するのが吉です!どうしてそんなに戦うのが好きなんですかっ!」

 

「ご、ごめん」

 

 

ヒナから目を逸らさず、静かに息を整える。

 

(戦う気かどうかじゃない)

 

問題は――勝てるかどうか。

 

答えは、分かっている。

 

(正面衝突は、無理だ)

 

私の腕は重い。

マガジンも心許ない。

さっきまでの高揚感は、冷静な計算に押し戻されている。

 

それでも、下がるとは言えない。

 

 

「こちらアビドスの対策委員会です。ゲヘナの風紀委員会ですね、初めまして。この状況については理解されてますでしょうか?」

 

「もちろん。事前通達無しでの他校自治区における無断兵力運用、及び他校生徒たちと衝突。……けれど、そちらが風紀委員会の公務を妨害したのも事実。違う?」

 

 

アヤネの質問にヒナは淡々と応じる。

 

 

「それはそうかも」

 

「それで?」

 

「私たちの意見は変わりませんよ?」

 

 

空気が、再びきしむ。

 

 

「ちょっと待ってください…!便利屋の人たちもいない、あっちの兵力の数は変わってない、私たちにはもう先生しか…どういうわけか味方も止めるのも大変だし…!あうぅ、こういう時にホシノ先輩がいたら…!」

 

 

アヤネが慌てる

 

(ここで一発でも撃てば、終わりだ)

 

指先に力を込め、引き金からわずかに離す。

 

そのとき。

 

 

「……ホシノ?」

 

 

ヒナの声がわずかに変わる。

 

 

「アビドスのホシノって……もしかして、小鳥遊ホシノ……?」

 

「はい?」

 

 

そして。

 

 

「うへ~、こいつはまた何があったんだか。すごいことになってるじゃ~ん」

 

 

背後から、間延びした声。

 

 

「えっ!?」

 

「ほ、ホシノ先輩!?」

 

 

私は思わず振り向く。

 

(……なんで今)

 

安堵と脱力が一気に押し寄せる。

 

 

「ごめんごめん。ちょっと昼寝しててね~、少し遅れちゃった」

 

「昼寝ぇ!?こっちは色々大変だったのに!」

 

「でも、もう全員撃退した」

 

「まだ全員ではないですが…まあ大体は」

 

「ゲヘナの風紀委員会かあ…便利屋を追ってここまで来たの?」

 

 

思わず小さく息を吐く。

 

(来た)

 

それだけで、場の均衡が変わったのが分かる。

 

「うーん、事情はよく分からないけど、対策委員会はこれで勢揃いだよ。ということで、あらためてやり合ってみる?風紀委員長ちゃん?」

 

ヒナの表情が、明確に揺れた。

 

 

「……一年生の時とはずいぶん変わった、人違いじゃないかと思うくらいに」

 

「……ん?私のこと知ってるの?」

 

「情報部にいた頃、各自治区の要注意生徒たちをある程度把握してたから。特に小鳥遊ホシノ…あなたのことを忘れるはずがない。あの事件の後、アビドスを去ったと思ってたけど…そうか、そういうことか…だからシャーレが…まあいい、私も戦うためにここに来たわけじゃないから」

 

 

戦うために来たわけじゃない

 

その言葉に、少しだけ肩の力が抜ける。だが、撤退するまでは気を抜けない

 

 

「……イオリ、チナツ」

 

「……委員長」

 

「……はい」

 

「撤収準備、帰るよ」

 

 

撤収。

 

その一言に、両陣営がどよめく。

 

私は正直、膝が抜けそうになるのを必死で堪える。

 

(助かった……)

 

戦う覚悟はしていた。

最後までやるつもりだった。

 

でも。

 

本音は、もう限界に近かった

 

ヒナが頭を下げる。

 

 

「事前通達無しでの無断兵力運用、そして他校の自治区で騒ぎを起こしたこと。このことについては私、空崎ヒナより、ゲヘナの風紀委員会の委員長として、アビドスの対策委員会に対して公式に謝罪する。今後、ゲヘナの風紀委員会がここに無断で侵入することは無いと約束する。どうか許してほしい」

 

 

その姿に、私は言葉を失う。

 

強い人間ほど、引き際を知っている。あの行政官とは大違いだ

 

(……すごいな)

 

風紀委員会が整然と撤退していく。ヒナは何か先生に言い残していったっぽいが、なんて言っているかはわからなかった

 

ようやくAK-12を下ろす。

 

肩が、ずしりと重い。

 

アドレナリンが抜け始める。

 

急に、体中の痛みが戻ってくる。

 

 

「あれほどの大規模な兵力を、一糸乱れずに……風紀委員長、すごい方ですね」

 

「もったいない、強い人と戦えるチャンスだったのに」

 

 

私は小さく苦笑する。

 

(シロコは本当にブレないな)

 

ホシノのゆるい声が場を和らげる。

 

みんなの緊張が、少しずつ解けていく。

 

その輪の少し外側で、空を見上げた。

 

砂煙が、ようやく落ち着いてきている。

 

(終わった……のか)

 

それだけで十分だ。

 

腕が震えている。

 

指先に、まだ引き金の感触が残っている。

 

(怖かった)

 

今さら、遅れて実感する。

 

ヒナと視線が交差した瞬間。

撃ち合いになるかもしれない、あの一秒。

 

本当に、怖かった。

 

でも。

 

(逃げなかった)

 

それだけは、胸を張れる。

 

私は小さく息を吐き、ぼそっと呟く。

 

「今日は、もう限界。続きは……明日考えよう」

 

自分でも笑えるくらい、素直な本音だった。

 

血と砂と汗の匂いがまとわりついている。

 

声に出すと、少しだけ現実感が戻る。

 

守れた。

 

だから今日は、それでいい。

 

リュックと銃を肩にかけ直し、みんなの方へ歩き出した。

 

 




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