ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが?   作:NK7

39 / 72
続きました


No.39 枯れたオアシス

駅を出てからここまで、何度か足を止めた。

 

線路沿いの高架下にたむろしていた不良たち。崩れたコンビニの影から飛び出してきた警備ロボット。片腕の取れたオートマタが、砂を巻き上げながら突進してきたときは、反射的に前へ出ていた。

 

引き金を引くたび、反動が肩を叩く。

 

壊れた機械が砂に沈み、不良たちが蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 

(この辺りは、まだ“市街地の延長”だ)

 

建物の骨組みが残っている。電柱が立っている。標識も読める。

 

けれど――。

 

 

「ここから先が、捨てられた砂漠」

 

 

セリカの言葉に、足を止める。

 

見渡す限り砂と岩しかない。

 

人工物は、ほとんどない。

 

風が吹くたび、地面そのものが形を変えていく。

 

私はゆっくりと周囲を見渡す。

 

視界が広すぎる。

 

遮蔽物がない。

 

(射線が通りすぎる)

 

敵がいれば、遠距離からでも容易に狙える。だがそれは、こちらも同じということ。

 

心拍がわずかに上がる。

 

 

「砂だらけの市街地に行ったことはありましたが、ここから先は私も初めてです…」

 

 

ノノミの声には、ほんの少しだけ緊張が混じっている。

 

 

「いや~、久しぶりだねねこの景色も」

 

 

ホシノ先輩は、どこか懐かしむように目を細めている。

 

 

「先輩は、ここに来たことがあるの?」

 

「うん、前に生徒会の仕事で何度かね~。もう少し進めば、かつてアビドスの砂祭りが開かれていたオアシスが!」

 

「え、オアシス?こんなところに?」

 

「うん、まあ今はもう全部干上がっちゃんだけどね~。元々はそんじょそこらの湖より広くって、船も浮かべられるくらいだったとか。ま、私も実際は見たことはないんだけど~」

 

 

オアシス。

 

船が浮かぶほどの水。

 

私は、目の前の砂丘と、言葉の中の湖を重ねようとする。

 

だが、想像が追いつかない。

 

(ここに、水があった?)

 

足元の砂を軽く蹴る。乾ききっている。

 

生命の気配は、ほとんどない。

 

 

「砂祭り…私も聞いたことがある。アビドスでは有名なお祭りで、すごい数の人が集まるって」

 

「そうそう、別の学校からもそのお祭り見たさに人が来るくらいだったからね。ま、砂漠化が進み始めるより何十年も前のことだけど」

 

「へえ、今となってはこんな光景になっちゃってるけど、ここでそんなすごいお祭りが…」

 

 

セリカがぐるりと周囲を見回す。

 

私は少しだけ口を開く。

 

 

「……今の景色からは、ちょっと想像できませんね。でも」

 

 

皆の方を見ず、前を向いたまま続ける。

 

 

「本当にそんな湖があったなら……きっと、綺麗だったんでしょうね」

 

 

自分でも、少し柔らかい言い方だと思う。

 

砂を渡る風の音が、遠くで鳴る。

 

(失われたものの話は、胸の奥が少し痛む)

 

ここは“捨てられた”場所。

 

けれど、かつては人が集い、笑っていた。

 

守れなかったのか。

 

奪われたのか。

 

それとも、ただ時間に負けたのか。

 

 

「前までは、この辺りも結構住みやすい場所だったらしいよ~。その時はこんな砂埃もなかったし。ところでアヤネちゃん、まだ目的地は遠そう?」

 

「ゲヘナの風紀委員長が言っていたセクターまでは、もう少し時間がかかりそうです。見たところ、この辺りは特に何も無さそうですが…とりあえず、引き続き警戒しつつ前進してください」

 

 

“何も無さそう”。

 

その言葉に、わずかに眉を寄せる。

 

何も無い場所ほど、潜みやすい。

 

私はスリングを整え、周囲をもう一度確認する。

 

 

「視界が開けすぎています。左右の高低差に注意してください」

 

 

少しだけ声を落とし、続ける。

 

 

「砂丘の向こう側は死角になります。私が先に確認しますね」

 

 

言い方は穏やかに。

 

命令ではなく、提案の形で。

 

(過度に張り詰めさせる必要はない)

 

けれど、自分の内側では緊張が解けない。

 

背中のRPG-28が、ずしりと存在を主張する。

 

この広さなら、装甲車両が出てもおかしくない。

 

遠距離火器も想定内。

 

(ここは、市街地とは違う)

 

逃げ場がない。

 

隠れ場所も少ない。

 

だからこそ、備える。

 

砂を踏みしめながら、私は一歩前に出る。

 

足が少し沈む。

 

重心を低く保つ。

 

視線は水平線と、わずかな色の違いを探す。

 

胸の奥にあるのは、不安ではない。

 

静かな覚悟。

 

ここがどれだけ失われた場所でも。

 

何が待っていても。

 

(私たちは、確かめに来た)

 

そのために、ここまで来た。

 

風が吹く。

 

砂が舞う。

 

私は目を細め、前を見据えた。




感想お待ちしてます
続きません

レインの設定って書いたほうがいいですか?

  • いる
  • いらん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。