ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが?   作:NK7

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続きました


No.42 カイザー理事

包囲を突破した直後だというのに、胸の奥の緊張は一向に解けない。

 

PKPの重さが、腕にずしりと食い込む。

AK-12はとっくに沈黙し、RPG-28も残り一発。

 

(……最悪の残弾状況ですね)

 

 

「はぁ、はぁ…」

 

「…ふぅ」

 

「キリが無いなあ、これは…」

 

「…せい、聞こえますか?包囲網を抜け…また…が不安定…早く…退却…が…接近…」

 

「アヤネ!?」

 

 

通信が途絶える。

 

嫌な静寂。

 

逃げようと視線を走らせた瞬間、前方にオートマタの列。

 

左右にも、後方にも影。

 

完全な包囲。

 

 

「…絶体絶命」

 

「包囲されちゃったかー…」

 

 

私はゆっくりとPKPを構え直す。

 

(撃ち切れば終わり。RPGも最後の一発。撤退経路なし)

 

頭は妙に冷えていた。

 

その時、一台の車が止まる。

黒のスーツ、赤のネクタイ。巨大な体躯のロボットが降り立つ。

“自分が勝者である”と疑わない態度。

 

私はPKPをわずかに下げる。

撃てば終わりだと分かっているから。

ただ立っているだけで、場の空気が変わる。

 

 

「侵入者とは聞いていたが…アビドスだったとは」

 

(……来ましたか、本丸)

 

「な、何よこいつ…」

 

「まさかここに来るとは思っていなかったが…まあ良い」

 

 

ホシノ先輩の視線がわずかに鋭くなる。

 

 

「勝手に人の私有地に入り、暴れたことによるこれらの被害額。君たちの学校の借金に加えても良いのだが、まあ、大して額は変わらないな…」

 

(挑発。典型的な上位者の態度)

 

「あんたは、あの時の…」

 

「…確か、例のゲマトリアが狙っていた生徒会長…いや、副会長だったか?…ふむ、面白いアイディアが浮かんだ。便利屋やヘルメット団を雇うよりも良さそうだ」

 

 

便利屋、ヘルメット団。

 

裏から手を回していたことを、否定すらしない。

 

 

「便利屋…?な、何を言ってるの?」

 

「…あなたたちは、誰ですか?」

 

「…まさか私のことを知らないとは。アビドス、君たちならよく知っている相手だと思うがね。私は、カイザーコーポレーションの理事を務めている者だ」

 

「そして君たち、アビドス高等学校が借金をしている相手でもある」

 

 

空気が凍る。

 

(やはり)

 

ホシノ先輩以外の動揺が伝わる。

 

 

「では、古くから続くこの借金について、話し合いでもするとしようか」

 

「アビドスが、借金をしている相手…」

 

「か、カイザーコーポレーションの…」

 

 

アヤネの通信が復活する。

 

 

「正確に紹介すると、、カイザーローン、そしてカイザーコンストラクションの理事だ。今は、カイザーPMCの代表取締役も務めている」

 

(全権掌握に近い立場。なるほど、話が早いわけです)

 

「それはどうでもいいけど、要はあなたがアビドス高校を騙して、搾取した張本人ってことで良い?」

 

 

(シロコ……)

 

どんなに憎くても、その言い方は危うい。

 

「…ほう」

 

「そうよ!ヘルメット団と便利屋を仕向けて、ここまで私たちをずっと苦しませてきた犯人があんたってことなんでしょ!?」

 

「ふむ…?」

 

「あんたのせいで私たちは…アビドスは…!!」

 

 

私は一歩前に出る。

 

 

「二人とも落ち着いてください。どんなにムカつく相手でも、一応目上の人です。言葉遣いは気を付けた方がいいです」

 

 

内心は違う。

 

本当は言いたくなかった。

 

敬語なんて、使いたくない。

 

(でも、負けたくない)

 

感情で負けるのは、絶対に嫌だった。

 

敬意なんて、微塵もない

 

けれど感情で殴り合えば、負けるのはこちらだ。

 

 

「やれやれ…最初に出てくる言葉がそれか。金がないくせに傭兵を雇って勝手に私有地へと侵入し、善良なる我がPMC職員たちを攻撃し、施設を散々破壊しておいて……くくっ、面白い」

 

 

(傭兵?)

 

一瞬、思考が止まる。

 

(……ああ、私のことか)

 

 

「すみませんが理事殿、我々アビドスは傭兵を雇ってはいません。もし私の事を言っているのであれば、撤回してして頂きたいです」

 

 

冷静に、淡々と。

 

 

「君もアビドスだったのか。それは失礼した。それはさておき、迷彩服を来ている子の言う通りだ。口の利き方には気を付けた方が良い。ここはカイザーPMCが合法的に事業を営んでいる場所。君たちは今、企業の私有地に対して不法侵入しているのだということを理解するべきだ」

 

 

(法を盾にするタイプ。最もめんどくさい)

 

理事は法と合法を並べ立てる。

 

その言葉を聞きながら、胸の奥で冷たい理解が広がる。

 

シロコとセリカが言葉を失う。

 

 

「さて話を戻そうか…アビドス自治区の土地だったか、確かに買ったとも。だからどうした?全ては合法的な取引、記録も全てしっかりと存在している。まるで、私たちが不法な行為でもしているかのような言い方は止めてもらおうか。わざわざ挑発をしに来たわけではないのだろう?ここに来たのは、私たちがここで何をしているのか気になったからか?どうしてアビドスの土地を買ったのか、その意味が知りたいのか?」

 

 

私は沈黙する。

 

(嘘はつかない。ただ、本質を隠す)

 

正義ではなく、証拠が全て。

感情ではなく、契約が全て。

 

それがこの世界の現実。

 

 

「それならば教えてやろう、私たちはアビドスのどこかに埋められているという、宝物を探しているのだ」

 

 

(……宝物)

 

その言葉に、わずかな違和感。

 

 

「…そんなでまかせ、信じるわけないでしょ!!」

 

「それはそう。もしそうだとすると、このPMCの兵力について説明がつかない。この兵力は、私たちの自治区を武力で占拠するため。違う?」

 

「数百規模の装甲戦力は、防衛を超えています。明らかに制圧を想定した配置です。私としては、そうとしか考えられません」

 

 

シロコの説明に補足する

 

 

「…数百両もの戦車、数百名もの選ばれし兵士たち。数百トンもの火薬に弾薬。たった六人しかいない学校のために、これほどの用意をするとでも?冗談じゃない。あくまでこれは、どこかの集団に宝探しを妨害された時のためのもの。ただそれだけだ、君たちのために用意したものではない」

 

(“どこかの集団”……私たち以外にも?)

 

「君たち程度、いつでも、どうとでもできるのだよ…例えばそう、こういう風にな」

 

 

あれだけの戦力。

あれだけの投資。

 

ただの嫌がらせではない。

 

(何かある)

 

それだけは確信する。

 

カイザーの理事が携帯を取り出す。

 

嫌な予感が、背筋を這い上がる。

 

 

「残念なお知らせだ。どうやら、君たちの学校の信用が落ちてしまったそうだよ」

 

「きゅ、九千万円!?」

 

 

その瞬間、視界がわずかに揺れる。

 

(外から締め上げる……)

 

戦場で撃たれるよりも、よほど痛い。

 

 

「…くっくっくっ。これで分かったかな。君たちの首にかけられた紐が今、誰の手にあるのか」

 

 

怒りが、内側で煮え立つ。

 

でも、表には出さない。

 

 

「ちょっ、噓でしょ!?本気で言ってんの!?」

 

「ああ、本気だとも。しかしこれだけだは面白みに欠けるか。そうだな、九億円の借金に対する保証金でも貰っておくとしよう。一週間以内に、我がカイザーローンに三億円を預託してもらおうか。この利率でも借金返済ができるということを、証明してもらわねばな」

 

 

(三億。一週間)

 

現実的ではない数字。

 

完全な圧力。

 

(不可能に近い。限りなくゼロに近い成功率)

 

 

「そんな…」

 

「そんなお金、用意できるはずが…今、利子だけでも精一杯なのに…」

 

「ならば、学校を諦めて去ったらどうだ?自主退学して、転校でもすれば良い。それで全て解決するだろう、そもそも君たち個人の借金ではない。学校が責任を取るべきお金だ。何も君たちが進んで背負う必要は無いのではないか?」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、胸が締めつけられた。

 

(簡単に言いやがる…)

 

 

「そ、そんなこと、できるわけないじゃないですか!」

 

「そうよ、私たちの学校なんだから!!見捨てられるわけないでしょ!」

 

「アビドスは私たちの学校で、私たちの街」

 

 

それでも、諦めるという選択肢は出てこない。

 

胸の奥が、少しだけ熱くなる。

 

(この子たちは、本当に強い)

 

 

「ならばどうする?他に何か、良い手でも?」

 

 

沈黙。

 

 

「…みんな、帰ろう」

 

「ホシノ先輩…!?」

 

 

その沈黙を破るようにホシノ先輩が告げる

 

私は正直、今すぐ殴りかかりたかった。

 

撃ちたかった。

 

叫びたかった。

 

でも――

 

(ここで戦えば、完全に詰む)

 

退く勇気。

 

それが今、必要。

 

「…その通りです」

 

「レインちゃんも…」

 

「…これ以上ここで言い争っても意味が無い、弄ばれるだけ」

 

(今は、勝てない)

 

「…こんな大人と付き合う必要性は無い。これ以上は不利になっていくだけです」

 

言葉にしながら、内心では悔しさが溢れている。

 

 

歯を食いしばる。

 

怒りはある。

 

軽蔑もある。

 

でも、それ以上に――

 

(勝つためには、退く時も必要)

 

 

「ほう…副生徒会長、さすがに君は賢そうだな。…ああ、思い出したよ。賢そうな君と一緒にいた、あの全くもってバカな生徒会長のこともな。そして迷彩服の君も良く分かっている。よければカイザーPMCに勧誘したいレベルだ。転校するなら、来るといい」

 

 

一瞬だけ想像する。

 

資金も武器も潤沢な側。

守る必要のない立場。

 

楽だろう。

 

安全だろう。

 

でもすぐに吐き捨てる。

 

(そんな場所に、価値はない)

 

 

「ご冗談を。私は自分の学校を裏切るほど、安くはありません」

 

 

心の奥で、静かに誓う。

 

(あなたの盤上で踊る気はない)

 

 

「では、保証金と来月以降の返済についてはよろしく頼むよ。お客様。ふふっ、ふははははは…!!」

 

「存外悪くない時間だったな。さあ、お客様を入り口まで案内してさしあげろ」

 

 

出口へ歩く間、視線を落とさないようにする。

 

背中を見せることは、負けることじゃない。

 

(今日の敗北は、終わりじゃない)

 

砂漠の風が頬を打つ。

 

悔しさが込み上げる。

 

情けなさもある。

 

守りきれなかった。

何も奪い返せなかった。

 

でも。

 

心の奥に、消えない火がある。

 

(あの人は、私たちを侮った)

 

六人しかいないと。

 

どうとでもできると。

 

ならば証明する。

 

どんな形であろうとも

 

あのクソ理事に対して必ず証明して見せる




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