ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが?   作:NK7

45 / 72
続きました


No.45 手紙

アビドス対策委員会のみんなへ

まずは、こうやって手紙でお別れの挨拶をすることになったこと、許してほしい。おじさんはこういう古いやり方が性に合っててさ。みんなには、ずっと話してなかったことがあって。実は私、昔からずっとスカウトを受けてたんだ。カイザーPMCの傭兵として働く、その代わりにアビドスが背負っている借金の大半を肩代わりする…そういう話でね。…うへ、中々良い条件だと思わない?おじさんこう見えて、実は結構能力を買われててさ~。借金のことは、私がどうにかする。すぐに全部を解決にはできないけど、まずはこれでそれなりに負担が減ると思う。ブラックマーケットでは急に生意気なことを言っちゃったけど、あの言葉を私が守れなくてごめんね。これで対策委員会も、少しは楽になるはず。アビドス高校からも、キヴォトスからも離れることになったけど、私のことは気にしないで。勝手なことをしてごめんね。でもこれは全部、私が責任を取るべきこと。私は、アビドスの最後の生徒会だから。

だから、ここでお別れ。じゃあね。

 

先生へ

実は私、大人が嫌いだった。あんまり信じていなかった。シロコちゃんが先生をおんぶして来たあの時だって、「なんかダメな大人が来たな」って思ったくらいだし?でも、先生みたいな大人と最後に出会えて、私は…いや、照れ臭い言葉はもういいよね。

先生。最後に我がままを言って悪いんだけど、お願い。シロコちゃんは良い子だけど、横で誰かが支えてないと、どうなっちゃうか分からない子で。悪い道に逸れちゃったりしないように、支えてあげてほしい。先生なら、きっと大丈夫だと思うから。

シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん、そしてレインちゃん。お願い、私たちの学校を守ってほしい。砂だらけのこんな場所だけど…私に残された、唯一意味のある場所だから。それから、もしこの先どこかで万が一、敵として相対することになったら…

 

その時は、私のヘイローを「壊して」。

 

よろしくね

 

手紙を読み終えた瞬間。

頭の中が、真っ白になった。

 

文字は確かに読めている。

意味も分かる。

 

だけど――理解したくない。

 

(……嘘だ)

 

紙を持つ指先が、細かく震えていた。

わずかにこすれる紙の音が、やけに大きく聞こえる。

 

視界の中の文字が、ゆっくり滲んでいく。

 

“カイザーPMCの傭兵として働く”

“もし敵として会ったら、私のヘイローを壊して”

 

(そんなの……)

 

胸の奥が、きゅっと締めつけられる。

息を吸うのが、少し苦しい。

ヘイローというのがよく分からないが、頭に浮いているものだろう。

…おそらく、破壊は死と同等だろう。

 

昨日の夜。

静かな廊下。

 

薄暗い灯りの下で、自分は確かに言った。

 

「どこにも行かないで下さい」

 

あの時のホシノ先輩は、少しだけ困ったように笑って。

 

“少なくとも、今夜はね”

 

(……やっぱり)

 

あれは、

約束じゃなかった。

 

ただの“今夜だけ”。

 

最初から、決めていたんだ。

自分たちに言わずに――全部背負っていくって。

 

胸の奥が、ゆっくり冷えていく。

 

(止められなかった)

 

昨日。

あの時。

 

もし、もっと強く引き止めていたら。

もっと言葉を探していたら。

 

もし、

もし――

 

(違う)

 

頭の中で、何かが否定する。

 

(先輩は、決めてた)

 

自分の言葉なんて関係なく。

たぶん、最初から。

 

それでも。

 

(……それでも)

 

止めたかった。

 

 

「ホシノ先輩っっっ!!!!」

 

 

セリカの叫び声が、部屋に響く。

 

 

「何なの!?あれだけ偉そうに話しておいて!!切羽詰まったら何でもしちゃうって、自分で分かってたくせにっ!!こんなの、受け入れられるわけないじゃない!!」

 

 

怒りで震えている声。

 

私の視界は、ぼやけていた。

 

 

(傭兵)

 

(カイザーPMC)

 

(敵として相対したらヘイローを壊せ)

 

頭の中で、その言葉が何度も反響する。

 

耳鳴りがする。

 

まるで、

現実から一歩だけ外れた場所に立っているみたいだった。

 

 

「…助けないと。私が行く。対策委員会に迷惑がかかるし、私一人で…」

 

 

シロコが動こうとする。

 

 

「落ち着いてください、今はまず足並みをそろえないと…!」

 

 

アヤネの声。

 

会話は聞こえている。

意味も理解できる。

 

でも。

 

体が動かない。

 

足が床に貼り付いたみたいだ。

 

(ホシノ先輩が、敵になる)

 

(本当に?)

 

行く場所が無い私を誘ってくれたホシノ先輩が

 

(敵?)

 

思考がそこで止まる。

 

理解が、そこから先に進まない。

 

その時だった。

 

ドォォォン!!

 

爆発音。

 

窓ガラスが大きく震える。

 

 

「うわあっ!?」

 

「爆発音…!?」

 

「近いです、場所は…!?」

 

 

アヤネが慌てて通信を確認する。

 

その顔が、一瞬で青くなる。

 

 

「…そ…そんな…!?こちらに向かって、数百近いPMCの兵力が進行中!同時に、市街地に無差別攻撃をしています!」

 

 

空気が、凍る。

 

 

「カイザーPMC!?なんでこのタイミングで…!?」

 

 

セリカが声を上げる。

 

 

「お、応戦しないとです!!何はともあれ、アビドスが攻撃されているのを見過ごすわけには…」

 

「考えてる時間が惜しい。すぐに行こう!」

 

 

シロコが銃を構える。

 

 

「で、ですが、私たちで迎撃するにはあまりにも数が…!と、とにかくまずは、市民の皆さんを避難させましょう!」

 

 

みんなが動き出す。

 

椅子が引かれる音。

銃の安全装置。

慌ただしい足音。

 

でも。

 

私だけ――動けない。

 

遠くでまた爆発。

 

銃声。

 

市街地。

 

(アビドスが攻撃されてる)

 

分かってる。

 

分かってるのに。

 

(ホシノ先輩が、敵になる)

 

その言葉が、頭の中を占領していた。

 

その時。

 

ドンッ!!

 

生徒会室のドアが蹴破られた。

 

破片が飛び散る。

 

カイザーPMCの斥候が突入してくる。

 

 

「対策委員会を確認!こっちだ!!」

 

 

銃口が向く。

 

次の瞬間。

 

バンッ!!

 

シロコの射撃で斥候は床に崩れ落ちた。

 

 

「斥候が、もうこんなとことにまで…」

 

「アビドス高校周辺に、カイザーPMCの兵を多数確認!すでに校内にもかなり侵入されています!!」

 

「とにあえず、学校に侵入したやつらからやっつけよう!アヤネちゃん、お願い!」

 

「はい!先生の安全を確保しつつ、学校に侵入した敵を撃退します!校内の安全を確保した後は、市民の皆さんの避難を!」

 

 

全員が動く。

 

戦闘の空気。

 

緊張。

 

それでも。

 

私だけが――まだ動けない。

 

「……レインちゃん?」

 

ノノミが振り向く。

 

レインの視線は、まだ手紙に落ちていた。

 

紙の端が、指の震えで小さく揺れている。

 

 

「レインちゃん!!」

 

 

セリカが肩を掴む。

 

ぐっと揺さぶられる。

 

 

「しっかりしなさいよ!!」

 

 

声が出ない。

 

喉が、固まっている。

 

胸の奥が重い。

 

 

「レイン」

 

 

今度はシロコ。

 

静かな声。

 

感情を押し殺したような、低い声。

 

 

「ホシノ先輩は、学校を守ってほしいって言った」

 

 

その言葉が――胸に刺さる。

 

ずきん、と。

 

痛みが走る。

 

 

「レインも、守る側」

 

 

沈黙。

 

レインの手が、ゆっくり震える。

 

(守る)

 

手紙の最後。

 

“私たちの学校を守ってほしい”

 

視界の端で、黒い煙が上がっている。

 

遠くで銃声。

 

街が、攻撃されている。

 

(今ここで止まったら)

 

胸の奥で、何かが動く。

 

(ホシノ先輩がやったこと全部)

 

ぐっと歯を食いしばる。

 

(無駄になる)

 

息が荒い。

 

頭の中は、まだぐちゃぐちゃだ。

 

怒り。

 

悲しみ。

 

悔しさ。

 

全部が混ざっている。

 

(なんで相談してくれなかったんですか)

 

(なんで一人で行くんですか)

 

(なんで……)

 

喉の奥に、言葉が詰まる。

 

それでも。

 

ゆっくり。

 

足が動いた。

 

床に落としたPKPを拾う。

 

重い。

 

いつもより、ずっと重い。

 

まるで鉛みたいだ。

 

でも。

 

肩に担ぐ。

 

金属の感触が、少しだけ現実を引き戻す。

 

 

「……すみません」

 

 

声はかすれていた。

 

自分でも驚くくらい、弱い声。

 

 

「少し……処理が追いつきませんでした」

 

 

セリカが、ほっとした顔をする。

 

 

「ほんっと、心配させないでよ!」

 

 

一度、深く息を吸う。

 

肺の奥まで、ゆっくり。

 

心はまだ整っていない。

 

たぶん、すぐには戻らない。

 

でも。

 

引き金を引く指だけは、震えていなかった。

 

 

「……ホシノ先輩を連れ戻す」

 

 

静かに言う。

 

怒りでもない。

 

決意でもない。

 

まだ感情は混ざったまま。

 

それでも。

 

確かにそこにある言葉。

 

 

「そのためにも――」

 

 

PKPのボルトを引く。

 

ガチャッ。

 

金属音が鳴る。

 

 

「まずは、アビドスを守ります」

 

 

窓の外で、また爆発。

 

振動が床を伝う。

 

銃を構える。

 

まだ完全には立ち直っていない。

 

胸の奥は、まだ痛い。

 

でも。

 

前を見る。

 

 

「行きましょう」

 

 

戦場へ。

 

まだ壊れかけの心のまま。

 

それでも――

 

戦うしかない。




感想お待ちしてます
続きません

レインの設定って書いたほうがいいですか?

  • いる
  • いらん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。