ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが? 作:NK7
市街地での戦闘が終わったあと、私は対策委員会のみんなと一度アビドス高校へ戻った。
校門をくぐると、夕方の風が校庭の砂をさらっていく。
戦闘のあと特有の、妙に静かな空気が残っていた。
さっきまで銃声と爆発が響いていたのに、今は遠くで風が鳴っているだけだ。
(……静かだな)
校舎の壁には弾痕が残り、ガラスもいくつか割れている。
それでも、ここはまだ“いつものアビドス”だった。
私はそのまま保健室へ向かう。
保健室のドアを開けると、机の上に装備を置いた。
まずPKP。
それからAK-12。
マガジンポーチから空に近いマガジンと弾帯を取り出す。
7.62×54mmR弾を箱から出し、弾帯に一発ずつ押し込んでいく。
カチ、カチ、と乾いた音。
静かな保健室に響く。
弾を押し込む指先が、ほんの少し震えていた。
(……さっきの戦闘)
ゴリアテの巨体。
機関砲の音。
爆発。
全部まだ頭の中に残っている。
私は軽く首を振る。
「……今はそれどころじゃない」
弾が弾帯に繋がり、マガジンボックスに入れる。
弾を込めながら、ふと視線が横にいった。
机の上のPKP。
重機関銃。
さっきはあれでオートマタを薙ぎ払った。
でも。
私は少し考えてから、PKPのバレルに触れる。
(……今回は)
小さく息を吐く。
「置いていくか」
PKPは確かに強い。
でも重すぎる。
次の戦いは、カイザーの本拠地に突っ込むことになる。
機動力が必要だ。
私はPKPを壁際に立てかけた。
代わりにAK-12を手に取る。
ボルトを引く。
ガチャッ。
装填確認。
(これでいい)
残りの弾を見て、少し眉をひそめる。
(……足りない)
次の戦いを考えると、余裕が欲しい。
頭の中に、あの店が浮かぶ。
「……行くか」
私は装備をまとめ、保健室を出た。
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アビドスの街を歩く。
夕方の光が、低い建物の壁を赤く染めていた。
砂色のコンクリートと古い看板が、オレンジ色の光を受けて鈍く光っている。
風が吹く。
サァァ……と乾いた音を立てて、砂が道路を流れていく。
アスファルトの上を薄くなぞるように、細かい砂粒が流れていくのが見えた。
(……静かだ)
さっきまで市街地では機関砲が鳴り響いていた。
爆発もあった。
それなのに、ここは何も変わらない。
人通りは相変わらず少ない。
遠くに一人、買い物袋を持った市民が歩いているくらいだった。
私は背負ったリュックの位置を直しながら、いつもの銃砲店へ向かう。
少し歩くと、見慣れた店が見えてきた。
古い看板。
色あせた文字。
ガラス窓には細かい傷が入り、長い時間ここにあることがわかる。
私はドアを押した。
カラン。
ドアベルが小さく鳴る。
店の中に入ると、油と金属の匂いが鼻に入ってきた。
銃器店特有の匂いだ。
カウンターの前には、誰かが立っていた。
SRTの制服。
前にここで会った生徒だった。
店主と向かい合って、何か話している。
二人とも、まだ私に気づいていない。
私は邪魔にならないよう、棚の近くで立ち止まり、弾薬箱を眺めるふりをする。
会話が耳に入ってきた。
店主が棚に置かれた弾薬箱を整理しながら、ぼそりと口を開く。
「最近カイザーの連中、だいぶ暴れてるらしいな」
SRTの生徒は、カウンターに腰を軽くもたせかけながら肩をすくめる。
「らしいね。じゃなくて普通に暴れてるよ」
少し苛立った声だった。
「アビドス中心にPMCがうろつきまくってる。装甲車とか普通に走ってるし」
店主が苦笑する。
「企業の私兵が街で戦闘か」
小さく首を振る。
「世も末だな」
彼女は深くため息をつく。
「しかも理由が土地だよ?マジしょうもない」
「企業ってのはそういうもん…ってどこで聞いたんだその情報は」
店主は肩をすくめる。
「うちの小隊にそういう分野調べるのが得意な子がいるの」
SRTの生徒は少しイラついたように指でカウンターを軽く叩いた。
「それにしたってさ、学校一個潰すのにPMC動かすとか普通じゃないでしょ」
「最近の企業は遠慮がない」
店主が弾薬箱を並べ直す。
「昔より露骨だ」
「いやほんとそれ」
彼女は髪を指でくるくる巻きながら言う。
「しかも相手アビドスだよ?ほぼ廃校寸前の学校にそこまでやる?」
店主がため息をつく。
「それで?SRTは動かないのか」
「動きたいのは山々なんだけどねー」
彼女は肩をすくめる。
「命令を出す人がいないのさ。連邦生徒会長がいなくなった今、私たちの処遇をどうするかって上層部がもめてるのさ」
「そうか。それは残念だな」
「私だけでも援護に行きたいよ?だけどさ、アビドスで私のこと知ってるのってあの後輩ちゃんしかいないし、こっちも小隊長もストップかけてくるから行かせてくれないんだよ…もおぉー…」
その時。
彼女がふと横を見る。
棚の前に立っていた私と目が合った。
一瞬、目を丸くする。
「あ」
店主も振り向いた。
「お、いらっしゃい」
SRTの生徒の口元がにやっと上がる。
「噂をすれば」
私は棚から離れてカウンターに歩いていく。
「こんにちは。すみません5.45×39mmってありますか」
店主が棚から弾薬箱を取り出す。
「ほらよ、5.45×39mm」
「ありがとうございます」
ゴトッ、と箱がカウンターに置かれる。
SRTの生徒が私をじっと見ていた。
少し観察するような視線だった。
「ニュースでさっきの戦闘ちょっと見たよー」
私は少し苦笑する。
「見られてましたか」
「うん」
彼女は軽く頷く。
「普通にアビドスの市街地でドンパチやってたじゃん。しかもゴリアテまで出てきてたし」
私は小さく息を吐いた。
「……苦戦しました」
彼女は楽しそうに笑う。
「苦戦ってレベルじゃないよ」
「小火器とC4しか持ってないのに撃破できるのはすごいよ!」
少し沈黙が流れる。
店の中に、外の風の音だけが聞こえていた。
私はその沈黙の中で口を開く。
「多分」
二人がこちらを見る。
「次が最後です」
SRTの生徒の表情が少し変わる。
「最後?」
私は頷く。
「アビドスとカイザーとの戦いに終止符を打ちます。ホシノ…先輩を取り戻すために」
彼女は腕を組む。
「カイザーとガチか」
「はい」
少し考えるように私を見る。
それから小さく笑った。
「へぇ、後輩やるじゃん」
店主がレジを叩く。
「ほらよ」
弾薬箱を押し出す。
私はお金を置いた。
「ありがとうございます」
バッグに弾薬を入れる。
私は軽く頭を下げて店を出ようとした。
その時だった。
「ちょい待ち」
振り返る。
SRTの生徒がポケットからスマホを取り出していた。
黒いスマホだった。
「これ」
私に差し出す。
「おさがりだけど、まだ普通に使えるからあげるよ」
私は少し戸惑う。
「……いいんですか?」
「いいって。丁度機種変してどうしようか悩んでたからさ」
彼女は軽く笑う。
「連絡手段ないと不便じゃん?」
それから少し身を乗り出す。
「それにさ」
声が少し落ち着く。
「何かあったら連絡して」
私はスマホを受け取る。
「ありがとうございます」
その時。
店主が奥の倉庫から何かを持ってくる。
長い布包みだった。
ドン、とカウンターに置く。
布を外す。
中から現れたのは――
RPG-29M。
私は思わず固まる。
「……え」
店主が淡々と言う。
「持ってけ」
横に弾頭を並べる。
金属の弾頭がカウンターに並んでいく。
「対戦車三発」
さらに三つ。
「対人三発」
私は思わず言う。
「いや、さすがにこれは…」
店主が煙草をくわえ直す。
「次が最後なんだろ」
静かに言う。
「だったら火力は多い方がいい」
SRTの生徒がニヤッと笑う。
「いいじゃん」
「派手にいこうよ後輩」
少し身を乗り出す。
「カイザー、ボッコボコにしてきな」
私は一瞬言葉が出なかった。
それから深く頭を下げる。
「……ありがとうございます」
RPGを背負う。
肩にずっしりとした重さが乗る。
でも、不思議と心は少し軽くなった。
店を出たあと、少し歩いたところにあるコンビニに入った。
ベンチに腰を下ろすと、コンビニのガラス越しに夕焼けが反射していた。
店の前の自販機のモーター音が小さく唸っている。
遠くでは、風に運ばれた砂が道路をさらさらと流れていた。
私はポケットから、さっきもらったスマホを取り出す。
画面は少し擦れているけれど、まだ十分きれいだった。
親指で電源ボタンを押す。
画面が光る。
起動のロゴがゆっくり表示され、ホーム画面が開いた。
いくつかのアプリが並んでいる。
その中に一つ、見覚えのあるアイコンがあった。
MomoTalk。
アプリが開くと、連絡先の一覧が表示された。
登録されているのは一人だけだった。
「神谷スズカ」
さっきのSRTの生徒だろうか。
私は設定画面を開く。
ユーザー名入力。
少し指が止まる。
(……どうしよう)
数秒考えてから、テンキーを叩く。
「白鷺レイン」
と入力して保存。
画面がチャット画面に戻る。
スズカのトークを開く。
メッセージ入力欄にカーソルが点滅する。
何か送ろうとして――
その瞬間。
通知が鳴った。
画面の上に新しいメッセージが表示される。
スズカからだった。
「お、もう起動してるじゃん」
私は少し驚く。
(早い)
すぐ次のメッセージが届く。
「名前レインっていうんだ」
「カッコいいじゃーん」
私は思わず少し笑う。
返信を打とうとした瞬間、また通知。
「てかさー」
「さっきの戦闘マジで派手だったね」
「おじさんとこのテレビで普通に流れてたし」
「あんな装備なのに結構やるじゃん」
私は少し考えてから返信する。
「見られてるとは思いませんでした」
送信。
すぐ既読がつく。
そして、ほぼ同時に返信が返ってきた。
「あんなの流れたらそりゃ見るでしょ」
「ゴリアテ戦とか普通に目立つって」
さらにメッセージが続く。
「てかカイザーの連中マジムカつく」
「企業のくせに街で暴れるとか意味わかんなくない?」
「しかもアビドス狙うとかさぁ」
「普通に腹立つ」
私は短く返信する。
「分かります」
すぐ既読。
そしてすぐに返事。
「でさ」
「次が最後なんでしょ」
「ホシノって人助けに行くんでしょ?」
私は少し指を止める。
それから打つ。
「はい」
送信。
数秒だけ間が空く。
画面に「入力中…」の表示が出る。
そして通知。
「ならさ」
「遠慮とかいらないから」
「思いっきりコテンパンにしてきな」
「カイザーの連中」
さらに続く。
「あと後輩ちゃん」
「これは先輩命令なんだけど」
私は画面を見つめる。
次のメッセージ。
「ちゃんと生きて帰ってきな」
「いい?」
私は少し笑った。
短く返信する。
「了解です」
送信。
すぐ既読。
「よし」
「いい返事」
さらにメッセージが届く。
「期待してるよ、後輩ちゃん」
私は少し画面を見つめたまま、指を止める。
(後輩……)
さっき店でも言っていた言葉だ。
私はメッセージを打つ。
「その“後輩”ってやつなんですか」
送信。
少し間が空く。
すぐ既読がつく。
「ん?」
次のメッセージ。
「どういう意味?」
私はもう一度打つ。
「さっきから後輩って呼んでますよね」
「自分はSRTじゃないですけど」
送信。
数秒。
それから返信。
「まぁ確かに正式には違うけどさ」
「細かいこと気にしない気にしない」
さらに続く。
「SRTの人間がスマホ渡して」
「連絡先交換して」
「応援してる時点で」
「もう半分後輩みたいなもんでしょ」
私は思わず少し笑う。
すぐ次のメッセージ。
「あとさ」
「レインのこと、後輩ちゃんって呼ぶ方がなんか馴染むんだよね」
「レインって呼ぶより」
そのあと、スタンプが送られてきた。
分かる?と言っている胴体の長い猫のスタンプだった。
私は短く返信する。
「なるほど」
すぐ返事。
「納得した?」
「はい」
送信。
するとすぐメッセージ。
「よし」
「じゃあ改めて」
「先輩命令」
少し間。
「ちゃんと生きて帰ってきなよ、後輩ちゃん」
私は画面を見つめる。
それから短く打つ。
「任せてください、先輩」
送信。
既読。
すぐ返信。
「よし」
「いい返事」
さらに一言。
「期待してるよ、後輩ちゃん」
私はスマホをポケットにしまう。
ベンチから立ち上がる。
夕焼けの空が、アビドスの街を赤く染めていた。
風が吹き、道路の砂がさらさらと流れる。
背中のRPGの重さを感じながら、私は小さく息を吐く。
(……戻ろう)
アビドス高校の方へ歩き出した。
感想お待ちしてます
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