ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが?   作:NK7

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続きました


No.58 決断

翌日。

 

アビドスの保健室のベッドに、私は仰向けに転がっていた。

 

見慣れた天井。

風が吹くたびに、砂が擦れる微かな音。

 

静かすぎるくらいの静寂。

 

(……終わったんだな)

 

小さく息を吐く。

 

体の奥に残る疲労。

でも、それ以上に――頭の中が落ち着かない。

 

(……どうする)

 

このままアビドスに残るか。

それとも――SRTに行くか。

 

自然と、昨日のことを思い出す。

 

――ホシノ先輩を救出した後。

 

一通りの騒ぎが落ち着いて、帰還の準備をしていた時だった。

 

皆がそれぞれ動いている中。

 

背後から、静かな声がかかる。

 

 

「レインさん」

 

 

振り返る。

 

そこにいたのは――見覚えのない少女。

 

整った立ち姿。

無駄のない装備。

周囲の空気が、ほんの少しだけ張り詰める。

 

(……誰だ)

 

警戒が一瞬で走る。

 

だが、その人は気にした様子もなく言った。

 

 

「少し、いい?」

 

 

落ち着いた声。

 

急かすでも、命令するでもない。

 

ただ、当然のように。

 

私は少しだけ周囲を見る。

 

みんなは気づいていない。

 

あるいは、気にしていない。

 

(……大丈夫か)

 

短く頷く。

 

 

「……はい」

 

 

人気の少ない場所へ、少しだけ離れる。

 

砂の上に足音が残る。

 

そこで、その人は立ち止まった。

 

そして、改めてこちらを見る。

 

「あなたが白鷺レインさん?」

 

核心を突く問い。

 

私は少しだけ目を細める。

 

「……そうですけど」

 

 

「いきなり話しかけてごめんなさいね」

 

「私は御影アイ。シュヴァル小隊の小隊長を務めているわ」

 

「あなたのことはスズカから聞いてるわ」

 

一瞬で納得する。

 

あの人なら、勝手に話していてもおかしくない。

 

目の前の少女――御影アイさんは、淡々と続ける。

 

「単刀直入に言うね」

 

その一言で、空気が少しだけ変わる。

 

「SRTに来ないかしら?」

 

唐突だった。

 

でも、不思議と違和感はなかった。

 

(……やっぱり、それか)

 

心のどこかで、予想していた気もする。

 

「環境はこことは比べ物にならない」

 

淡々とした口調。

 

「装備、訓練、情報、全部揃ってる」

 

視線が、真っ直ぐこちらを捉える。

 

「あなたなら、すぐに馴染める」

 

一切の迷いがない言い方。

 

ただの勧誘というより――確信に近い。

 

私は少しだけ黙る。

 

砂の上を風が撫でる音だけが響く。

 

(……SRT)

 

頭の中で、その言葉が重く響く。

 

魅力的なのは、分かる。

 

合理的に考えれば、そっちの方がいいのも。

 

でも――

 

アイさんはそれ以上言わない。

 

ただ、静かに待つ。

 

急かさない。

 

押しつけない。

 

「すぐに答えなくていいわよ」

 

先に口を開いたのは、アイだった。

 

「よく考えてからの方がでいいし」

 

少しだけ視線を外す。

 

「だけど、来るなら歓迎するわよ」

 

それだけ言って、背を向ける。

 

「スズカ経由で連絡してくれたら、すぐに準備できるわよ」

 

「話はそれだけ。じゃあね」

 

最後に、それだけ残して。

 

そのまま、小隊へ戻っていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そして現在。

 

ベッドの上。

 

私は目を閉じる。

 

(……どうする)

 

SRTに行けば、強くなれる。

 

効率もいい。

 

無駄もない。

 

でも。

 

(……アビドス)

 

みんなの顔が浮かぶ。

 

セリカ。

ノノミ。

アヤネ。

シロコ。

 

そして――

 

ホシノ先輩。

 

昨日の「ただいま」が、頭の中で響く。

 

胸の奥が、わずかに熱くなる。

 

(……あそこに)

 

自分は、どうしたいのか。

 

まだ、答えは出ない。

 

私は小さく息を吐いて、天井を見つめたまま動かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく考えたあと、私はゆっくりとベッドから起き上がった。

 

(……じっとしてても、答えは出ない)

 

小さく息を吐いて、そのまま部屋を出る。

 

向かった先は――屋上。

 

錆びた扉を押し開けると、乾いた風が吹き抜けた。

 

砂の匂い。

いつもの景色。

 

そして――

 

「……あ」

 

そこに、ホシノ先輩がいた。

 

フェンスにもたれかかるようにして、ぼんやりと遠くを見ている。

 

振り返らないまま、ゆるい声が返ってくる。

 

 

「ん~?足音で分かるよ、そのくらい」

 

 

(やっぱり……)

 

少しだけ苦笑する。

 

私はその隣まで歩いていき、同じようにフェンスに寄りかかった。

 

しばらく、何も言わない時間。

 

風の音だけが流れる。

 

でも、それが妙に落ち着く。

 

 

「……それで、今日はどうしたの?」

 

 

先に口を開いたのは、ホシノ先輩だった。

 

私は少しだけ視線を落とす。

 

(……言うか)

 

 

「昨日の帰り際に……」

 

 

昨日話されたことを話す。

 

ホシノ先輩は、驚いた様子もなく小さく頷く。

 

 

「へぇ~」

 

 

軽い相槌。

 

でも、ちゃんと聞いてくれているのが分かる。

 

 

「うんうん、それで?」

 

 

短い一言。

 

続きを促す。

 

 

「……どうするか、まだ決めてなくて」

 

 

正直に言う。

 

隠す必要はないと思った。

 

ホシノ先輩は少しだけ空を見上げる。

 

 

「そっか~」

 

 

それだけ。

 

否定もしないし、肯定もしない。

 

しばらく沈黙。

 

風が髪を揺らす。

 

そして、ぽつりと。

 

 

「学校のことを捨てたおじさんが言えたことじゃないけどさ」

 

 

ゆるい口調のまま、でも少しだけ優しく。

 

 

「自分のやりたいこと、やればいいんじゃない?」

 

 

その言葉は、すごく軽くて。

 

でも、不思議なくらい――真っ直ぐ胸に落ちてきた。

 

(……やりたいこと)

 

頭の中で、その言葉が反響する。

 

自分は、どうしたいのか。

 

何をしたいのか。

 

少しだけ目を閉じる。

 

浮かぶのは――昨日の戦い。

 

カイザーPMC。

 

圧倒的な装備。

組織力。

理不尽な力。

 

(……ああいうのに)

 

ただ守られるだけじゃなくて。

 

誰かに頼るだけじゃなくて。

 

そして――

 

(……私)

 

ホシノ先輩に抱きついて、泣いて。

 

あの瞬間の自分。

 

(……あれは)

 

悪くはない。

 

でも。

 

 

「……決めました」

 

 

自然と、言葉が出た。

 

ホシノ先輩が少しだけこちらを見る。

 

 

「ん?」

 

 

私はまっすぐ前を見たまま、言う。

 

 

「SRTに行きます」

 

 

風が一瞬、強く吹いた。

 

ホシノ先輩は少しだけ目を細める。

 

 

「へぇ~」

 

 

相変わらずの調子。

 

でも、その奥にほんの少しだけ何かがある気がした。

 

 

「理由、聞いてもいい?」

 

 

軽く、でも確かめるように。

 

私は頷く。

 

 

「二つあります」

 

 

指を軽く握る。

 

 

「一つは……カイザーみたいな企業に、ちゃんと立ち向かえるようになるためです」

 

 

昨日の光景がよぎる。

 

 

「今のままじゃ、立ち向かえないって思いました」

 

 

そして、もう一つ。

 

少しだけ言葉に詰まる。

 

でも、逃げない。

 

 

「……もう一つは」

 

 

小さく息を吸う。

 

 

「自立するためです」

 

 

ホシノ先輩は黙って聞いている。

 

 

「私は……ホシノ先輩に頼りすぎてるの感じているんです」

 

 

正直に言う。

 

 

「だから、自分で立てるようになりたいです」

 

 

言い終わって、少しだけ肩の力が抜ける。

 

ホシノ先輩は、少しだけ目を細めて笑った。

 

 

「そっか~」

 

 

優しい声。

 

そして、少しだけいたずらっぽく。

 

 

「そういえばさ」

 

「おじさんがいなくなってから、レインちゃんかなり情緒不安定だったって聞いたよ?」

 

「オートマタに対してキレたり、カイザーの理事に殴りかかったりしたって」

 

 

一瞬、固まる。

 

(……え)

 

誰から。

 

いや、だいたい想像はつく。

 

 

「…どこで聞いたんですか」

 

「momotalkで聞いたよ~」

 

 

ホシノ先輩はくすっと笑う。

 

私は観念して、少しだけ視線を逸らす。

 

 

「…はは…恥ずかしながら、その通りです」

 

 

正直に認める。

 

思い出すだけで、少し顔が熱くなる。

 

 

「ふふ」

 

 

ホシノ先輩は軽く笑うだけだった。

 

責めるでもなく、からかいすぎるでもなく。

 

ただ、受け止めるように。

 

 

「でもさ」

 

 

少しだけ真面目な声。

 

 

「それだけ大事に思ってくれてたってことでしょ?」

 

「それだけでおじさんは嬉しいな」

 

 

その一言に、少しだけ胸が詰まる。

 

何も言えない。

 

代わりに、小さく頷いた。

 

しばらく風の音だけが流れる。

 

そして私は、ゆっくりと体を起こした。

 

 

「……みんなに、報告してきます」

 

 

ホシノ先輩は軽く手を振る。

 

 

「いってらっしゃい」

 

 

いつも通りの声で空を見上げていた。

 

その横顔を見て、自然と言葉が出る。

 

 

「……ホシノ先輩も、来てください」

 

 

少しだけ間。

 

 

「直接、ちゃんと話したいので」

 

 

みんなに、じゃない。

 

自分の中で区切りをつけるためにも。

 

ホシノ先輩に、ちゃんと見ていてほしい。

 

ホシノ先輩は少しだけ目を丸くして――

 

それから、いつものようにゆるく笑った。

 

 

「ん~、しょうがないなぁ」

 

 

軽く伸びをして、フェンスから体を離す。

 

 

「可愛い後輩のお願いだし?」

 

 

そのまま、私の隣に並ぶ。

 

 

「行こっか」

 

 

その一言が、妙に安心できた。

 

(……大丈夫)

 

心の中で、小さく呟く。

 

私は頷いて、屋上の扉を開けた。

 

そのまま並んで歩き出す。

 

向かう先は――生徒会室。

 

みんなに、自分の選択を伝えるために。

 

 




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