ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが? 作:NK7
廊下を歩く足音が、やけに大きく響いていた。
隣にはホシノ先輩がいる。
それだけで、さっきまで胸の奥にあった不安が、少しだけ軽くなっていた。
(……大丈夫)
何度も心の中で繰り返す。
生徒会室の前に立つ。
ドアの向こうから、みんなの声が聞こえてくる。
いつも通りの、少し騒がしい空気。
(……ここだ)
私は一度、深く息を吸った。
コンコン、とノック。
「はい、どうぞ!」
アヤネの声。
ドアを開ける。
「……あ、レインちゃん!」
「ホシノ先輩も!」
一斉に視線が集まる。
その瞬間、ほんの少しだけ足が止まりそうになる。
でも――
後ろから、ホシノ先輩が軽く肩を押した。
「ほらほら、レインちゃんのことでしょ?」
小さく笑う。
(……ありがとうございます)
一歩、前に出る。
みんなの前に立つ。
「……あの」
声が少しだけ硬い。
でも、そのまま続ける。
「少し、話があります」
空気が、すっと静まる。
セリカも、ノノミも、シロコも、アヤネも。
全員が、まっすぐこっちを見ている。
(逃げるな)
心の中で、自分に言い聞かせる。
「私――」
一瞬だけ、言葉が詰まる。
それでも。
「SRTに、転校することに決めました」
静かに、はっきりと言い切る。
沈黙。
時間が止まったみたいに、誰も動かない。
「……え?」
最初に声を出したのは、セリカだった。
「て、転校って……SRTに!?」
驚きと戸惑いが混ざった声。
アヤネも目を見開く。
「ど、どうしてですか……!?」
ノノミも、少し不安そうにこちらを見る。
「急に……そんな……」
シロコは黙っている。
でも、その視線は逸らさない。
私は、もう一度息を整える。
「理由は、二つあります」
指先に、少しだけ力が入る。
「一つは……カイザーみたいな相手に、ちゃんと立ち向かえるようになるためです」
みんなの表情が少しだけ引き締まる。
「今回の戦いで分かりました」
ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「今のままじゃ、立ち向かえないって」
拳を軽く握る。
「もっと力をつけないといけないって、思いました」
そして、もう一つ。
少しだけ、視線が揺れる。
でも、そのまま続ける。
「もう一つは……自立するためです」
セリカが少しだけ眉をひそめる。
「自立……?」
私は頷く。
「私は……特に精神面をホシノ先輩に頼りすぎてました」
「その最たる例がホシノ先輩がいなくなった後です」
その言葉に、部屋の空気がわずかに揺れる。
後ろにいるホシノ先輩は、何も言わない。
ただ、静かに聞いている。
「だから――」
少しだけ声が強くなる。
「ちゃんと、自分で立てるようになりたいです」
言い切る。
沈黙。
でもさっきと違う。
ちゃんと、届いている沈黙。
セリカが口を開く。
「……そっか」
小さく、でもまっすぐな声。
「レインちゃんが決めたなら……仕方ないわよね」
腕を組んで、少しだけそっぽを向く。
「べ、別に寂しいとかじゃないから!」
いつもの調子。
でも声は少しだけ弱い。
ノノミが、ふわっと笑う。
「レインちゃんらしいですね~」
優しい声。
「ちょっと寂しいですけど……応援します!」
アヤネも頷く。
「はい……!危険も多いと思いますが……」
少しだけ不安そうにしながらも。
「それでも、レインさんが決めたことなら……私たちは応援します」
シロコが、静かに言う。
「……ん」
短い一言。
でも、それだけで十分だった。
「レインなら、やれる」
それは、信頼だった。
胸の奥が、少しだけ熱くなる。
私は小さく頭を下げた。
「……ありがとうございます」
その時。
後ろから、ぽん、と軽く肩を叩かれる。
ホシノ先輩だった。
「いい顔してるじゃん」
いつもの、少し気の抜けた声。
でも、どこか誇らしげで。
「おじさん的には、ちょっと寂しいけどね~」
わざとらしくため息をつく。
「でも」
少しだけ真面目な声。
「ちゃんと自分で決めたなら、それでいいと思うよ」
その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
(……ああ)
これでいい。
私は顔を上げる。
みんなの顔を見る。
「しばらく荷物をまとめてきます」
「分かりました。先に玄関で待ってますね」
そう伝え、生徒会室を出た。
生徒会室を出たあとも、しばらく胸の奥は静かに熱を持ったままだった。
廊下を歩く。
見慣れた景色。
ひびの入った壁、少し傾いた掲示板、誰もいない教室。
全部が、いつもと同じはずなのに――
どこか違って見えた。
(……ここで過ごしてきたんだ)
足が、自然とゆっくりになる。
保健室に入り、荷物をまとめ始める
それを一つ一つ、丁寧に鞄へ入れていく。
無言の時間。
布の擦れる音だけが響く。
中に残っていた小物、予備の弾薬、整備用の工具。
全部、迷いなく詰めていく。
(置いていくものは……ない)
そう思っていたのに。
一瞬だけ、手が止まる。
無理やり着させられたアビドスの制服を手に取る。
少しだけ悩んだが、丁寧にたたみリュックに入れた。
最後にPKPとSVCh-8.6、RPG-29をリュックに縛り付ける
小さく息を吐く。
(……行こう)
鞄を閉じる。
肩にかけると、ずしりと重さが乗る。
でもその重さは、不思議と嫌じゃなかった。
教室を出る。
廊下を抜けて、階段を降りる。
一歩一歩、校門へ向かう。
そして――
外に出た瞬間、足が止まった。
校門の前。
みんなが、揃っていた。
「……」
一瞬、言葉が出ない。
セリカが腕を組んで、そっぽを向きながら言う。
「遅いわよ」
でも、その声は少しだけ震えていた。
ノノミが手を振る。
「待ってましたよ~、レインちゃん!」
アヤネも少しだけ目を潤ませながら。
「ちゃんと、お見送りしないといけませんから」
シロコは、静かにこちらを見ている。
「……ん」
それだけで、全部伝わる。
そして――
ホシノ先輩。
校門にもたれて、ゆるく手を振る。
「ほらほら、主役の登場だよ~」
その軽い調子に、思わず少しだけ笑ってしまう。
(……最後まで、変わらないな)
私はみんなの前に立つ。
風が吹く。
砂がさらさらと足元を流れていく。
夕方の光が、校門とみんなを赤く染めていた。
「……」
何か言おうとして、言葉が詰まる。
でも。
無理に整えなくていいと思った。
「……行ってきます」
その一言だけ。
セリカがすぐに返す。
「たまには帰って来なさいよ!」
強い口調。
でも、目は少しだけ赤い。
ノノミが優しく笑う。
「また一緒にお茶しましょうね~」
アヤネも頷く。
「連絡、ちゃんとくださいね!」
シロコが一歩前に出る。
「……待ってる」
短く、でも確かな言葉。
そして――
ホシノ先輩。
ゆっくりと近づいてくる。
私の前で止まって。
ぽん、と頭に手を乗せる。
あの時と同じ、優しい手つき。
「無理しすぎないこと」
少しだけ真面目な声。
「でも、思いっきりやってきてね~」
小さく笑う。
「おじさんは、ちゃんと見てるからさ」
胸の奥が、じんと熱くなる。
私は、しっかりと頷いた。
「……いつでも呼んでください。できる限り駆けつけますので」
私は一歩、後ろに下がる。
みんなの顔を、もう一度しっかり見る。
忘れないように。
焼き付けるみたいに。
そして――
「行ってきます」
振り返る。
校門の外へ。
一歩、踏み出す。
足音が、静かに響く。
背中に、みんなの視線を感じる。
でも、振り返らない。
(……大丈夫)
そう思えた。
少し歩いたところで。
後ろから声が飛んできた。
「レイーーーン!!」
セリカの声。
「絶対、強くなって帰ってきなさいよーー!!」
思わず、足が止まりそうになる。
でも、そのまま歩く。
代わりに、軽く手を上げた。
振り返らずに。
それだけで、十分だと思った。
夕焼けの中。
アビドス高校が、少しずつ遠ざかっていく。
(……行こう)
胸の奥に、確かなものを感じながら。
私は、新しい道へと歩き出した。
これで対策委員会編は一区切りです
次回からオリジナルでSRT転入編、始まります
レインの設定って書いたほうがいいですか?
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いる
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いらん