ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが? 作:NK7
自己紹介が一通り終わり、
部室に漂っていた張り詰めた空気が、ほんのわずかに緩んだ、その瞬間だった。
アヤネが、机いっぱいに広げていた書類を揃えながら、小さく呟く。
「……ただ」
その一言だけで、空気が再び引き締まる。
「生徒が一人増えたということは……その分、弾薬の消費も増える、ということです」
「しかも、どう見てもレインの銃って、弾を食うタイプだし」
胸の奥が、ひり、と痛んだ。
分かってはいた。分かっていたつもりだった。
弾薬は命で、数は力で、尽きれば終わりだということを。
それでも――自分が“増える”ことで、その残りを削ってしまう現実を、真正面から突きつけられると、思っていた以上に重い。
少し間を置いてから、恐る恐る口を開いた。
「……今、弾薬って……どれくらい残ってるんですか?」
アヤネの手が、ぴたりと止まる。
「それは……」
一瞬、言葉を選ぶように視線を泳がせ――やがて、小さく息を吸った。
「正直に言うと……全力での戦闘を想定した場合、あと一戦、持つかどうか……その程度です」
部室が、しんと静まり返った。
セリカが、露骨に顔をしかめる。
「……それ、ほとんど余裕ないじゃない」
ノノミは困ったように笑い、
「思っていたより……かなり厳しいですね〜」
シロコは短く、
「ん。厳しい」
ホシノ先輩は、あくび混じりに肩をすくめた。
「まぁ〜最近、あいつら多かったもんね〜」
その「あいつら」という言い方が、妙に引っかかりつつ――
私は背中のリュックへと視線を落とした。
中には、一人ではとても使い切れない量のアモカンが、ぎっしりと詰まっている。
八個ほど。ほとんどが東側規格だが、もし使えるものがあるなら、是非とも役に立ててもらいたい。
少し迷ってから、意を決して口を開いた。
「……あの。私、弾薬……持ってきてます」
リュックを下ろし、留め具を外す。
ガンッ
一つ目のアモカンを、机の上へ。
ガンッ
二つ目。
ガンッ
三つ目。
「ちょっと待って!?」
即座にセリカがツッコんだ。
「どこからそんな量、持ってきてんのよ!?」
(……まだあるけど)
胸の奥で、小さな警戒心が囁く。
これを全部出してしまっていいのか。
自分の切り札を、ここで晒してしまっていいのか。
――それでも、今は。
心の中でそう呟きながら、さらに二つ。
机の上に、五つのアモカンが並ぶ。
その瞬間、空気が一気に明るくなった。
ノノミが目を輝かせる。
「わぁ〜……すごい量ですね〜」
シロコは小さく頷き、
「これで、しばらく戦える」
ホシノ先輩も、にっと笑った。
「これは助かるね〜」
(……よかった)
ほんの一瞬、胸を撫で下ろす。
役に立てた。
ここに来た意味が、少しだけ形になった気がした。
そう思った、その直後だった。
アヤネが、アモカンの側面に記された表記を、一つずつ確認し始める。
「……5.45×39mm」
「……7.62×54mmR」
「…….338ラプアマグナム」
読み上げられるたび、部室の温度が、少しずつ下がっていくのを感じた。
そして最後に――
「……9×19mm」
と書かれたものを見て、アヤネは小さく息を吐いた。
「……アビドスの弾薬規格は基本的にNATO、つまり西側規格です……」
「レインさんが持っているものは……レッドウィンター規格、いわゆる東側の弾薬が、ほとんどですね……」
沈黙。
セリカが眉をひそめる。
「つまり……ほぼ全部、使えないってこと?」
思わず、苦笑が漏れた。
期待していたわけじゃない。
それでも、どこかで“何か一つくらいは噛み合うだろう”と、都合よく考えていた自分がいた。
「……多少ズレるだろうな、とは思ってましたけど……まさか、ここまで噛み合わないとは」
机の上のアモカンを見つめる。
「ライフル弾くらいは、“あ、これ使える”ってなるかと思ってました……ほぼ全部、別規格とは……ハハ……」
「笑ってる場合じゃないでしょ!」
セリカの鋭い一喝。
ノノミは肩をすくめ、
「確率的には……すごい外し方ですね〜」
そのやり取りを受けて、アヤネが一度、咳払いをした。
「……一応、シャーレには正式に支援要請を出しています」
「ですが……いつ支援が来るかは、正直分かりません」
再び、静寂。
(あと一戦)
(支援は未定)
(噛み合わない弾薬)
情報が、頭の中で静かに整理されていく。
「……なるほど」
胸の奥に溜まっていたものを、ゆっくりと息に混ぜて吐き出す。
焦っても、嘆いても、弾薬の規格が変わるわけじゃない。
ふっと息を吐き、表情を少しだけ緩めた。
「銃弾って、本当にいろんな種類がありますもんね」
皆の視線が、こちらに集まる。
「ここまで合わないなら、逆にスッキリしました。私は私の弾で戦います」
「共有できなくても、火力は自前で出します」
アヤネが、わずかに目を見開いた。
「……前向きですね」
「落ち込むより、割り切った方が楽なので」
シロコは頷く。
「合理的」
ノノミも、柔らかく微笑んだ。
「逆に考えたら……もしレインちゃんが、弾を持ってきていなかったら……」
セリカは腕を組み、ため息をつく。
「まぁ……一人で弾薬管理できるのは、確かに助かるわね」
ホシノ先輩が、いつもの調子で締めくくる――ように見えた。
「支援がいつ来るか分からないなら〜、来るまで今いるメンバーで、何とかするだけだね〜」
軽い口調。
気の抜けた声。
けれど、その目だけは、机の上の弾薬と、こちらを静かに見据えていた。
“何とかする”という言葉の裏に、どれだけの覚悟と経験が詰まっているのか。
それを一番分かっているのが、この人なのだと――なぜか、そう思った。
しかし不安が消えたわけではない。
それでも――
“想定外”だったはずの状況は、少しずつ、“役割”へと姿を変え始めていた。
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続きません
レインの設定って書いたほうがいいですか?
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いる
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いらん