ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが?   作:NK7

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続きました


No.5 弾薬不足

自己紹介が一通り終わり、

 

部室に漂っていた張り詰めた空気が、ほんのわずかに緩んだ、その瞬間だった。

 

 

アヤネが、机いっぱいに広げていた書類を揃えながら、小さく呟く。

 

 

「……ただ」

 

 

その一言だけで、空気が再び引き締まる。

 

 

「生徒が一人増えたということは……その分、弾薬の消費も増える、ということです」

 

「しかも、どう見てもレインの銃って、弾を食うタイプだし」

 

 

胸の奥が、ひり、と痛んだ。

 

分かってはいた。分かっていたつもりだった。

弾薬は命で、数は力で、尽きれば終わりだということを。

それでも――自分が“増える”ことで、その残りを削ってしまう現実を、真正面から突きつけられると、思っていた以上に重い。

 

少し間を置いてから、恐る恐る口を開いた。

 

 

「……今、弾薬って……どれくらい残ってるんですか?」

 

 

アヤネの手が、ぴたりと止まる。

 

 

「それは……」

 

 

一瞬、言葉を選ぶように視線を泳がせ――やがて、小さく息を吸った。

 

 

「正直に言うと……全力での戦闘を想定した場合、あと一戦、持つかどうか……その程度です」

 

 

部室が、しんと静まり返った。

 

セリカが、露骨に顔をしかめる。

 

 

「……それ、ほとんど余裕ないじゃない」

 

 

ノノミは困ったように笑い、

 

 

「思っていたより……かなり厳しいですね〜」

 

 

シロコは短く、

 

 

「ん。厳しい」

 

 

ホシノ先輩は、あくび混じりに肩をすくめた。

 

 

「まぁ〜最近、あいつら多かったもんね〜」

 

 

その「あいつら」という言い方が、妙に引っかかりつつ――

私は背中のリュックへと視線を落とした。

 

中には、一人ではとても使い切れない量のアモカンが、ぎっしりと詰まっている。

八個ほど。ほとんどが東側規格だが、もし使えるものがあるなら、是非とも役に立ててもらいたい。

 

少し迷ってから、意を決して口を開いた。

 

 

「……あの。私、弾薬……持ってきてます」

 

 

リュックを下ろし、留め具を外す。

 

ガンッ

 

一つ目のアモカンを、机の上へ。

 

ガンッ

 

二つ目。

 

ガンッ

 

三つ目。

 

 

「ちょっと待って!?」

 

 

即座にセリカがツッコんだ。

 

 

「どこからそんな量、持ってきてんのよ!?」

 

 

(……まだあるけど)

 

胸の奥で、小さな警戒心が囁く。

これを全部出してしまっていいのか。

自分の切り札を、ここで晒してしまっていいのか。

――それでも、今は。

 

心の中でそう呟きながら、さらに二つ。

 

机の上に、五つのアモカンが並ぶ。

 

その瞬間、空気が一気に明るくなった。

 

ノノミが目を輝かせる。

 

 

「わぁ〜……すごい量ですね〜」

 

 

シロコは小さく頷き、

 

 

「これで、しばらく戦える」

 

 

ホシノ先輩も、にっと笑った。

 

 

「これは助かるね〜」

 

 

(……よかった)

 

ほんの一瞬、胸を撫で下ろす。

役に立てた。

ここに来た意味が、少しだけ形になった気がした。

 

そう思った、その直後だった。

 

アヤネが、アモカンの側面に記された表記を、一つずつ確認し始める。

 

 

「……5.45×39mm」

 

「……7.62×54mmR」

 

「…….338ラプアマグナム」

 

 

読み上げられるたび、部室の温度が、少しずつ下がっていくのを感じた。

 

そして最後に――

 

 

「……9×19mm」

 

 

と書かれたものを見て、アヤネは小さく息を吐いた。

 

 

「……アビドスの弾薬規格は基本的にNATO、つまり西側規格です……」

 

「レインさんが持っているものは……レッドウィンター規格、いわゆる東側の弾薬が、ほとんどですね……」

 

 

沈黙。

 

セリカが眉をひそめる。

 

 

「つまり……ほぼ全部、使えないってこと?」

 

 

思わず、苦笑が漏れた。

 

期待していたわけじゃない。

それでも、どこかで“何か一つくらいは噛み合うだろう”と、都合よく考えていた自分がいた。

 

 

「……多少ズレるだろうな、とは思ってましたけど……まさか、ここまで噛み合わないとは」

 

 

机の上のアモカンを見つめる。

 

 

「ライフル弾くらいは、“あ、これ使える”ってなるかと思ってました……ほぼ全部、別規格とは……ハハ……」

 

「笑ってる場合じゃないでしょ!」

 

 

セリカの鋭い一喝。

 

ノノミは肩をすくめ、

 

 

「確率的には……すごい外し方ですね〜」

 

 

そのやり取りを受けて、アヤネが一度、咳払いをした。

 

 

「……一応、シャーレには正式に支援要請を出しています」

 

「ですが……いつ支援が来るかは、正直分かりません」

 

 

再び、静寂。

 

(あと一戦)

(支援は未定)

(噛み合わない弾薬)

 

情報が、頭の中で静かに整理されていく。

 

 

「……なるほど」

 

 

胸の奥に溜まっていたものを、ゆっくりと息に混ぜて吐き出す。

焦っても、嘆いても、弾薬の規格が変わるわけじゃない。

 

ふっと息を吐き、表情を少しだけ緩めた。

 

 

「銃弾って、本当にいろんな種類がありますもんね」

 

 

皆の視線が、こちらに集まる。

 

 

「ここまで合わないなら、逆にスッキリしました。私は私の弾で戦います」

 

「共有できなくても、火力は自前で出します」

 

 

アヤネが、わずかに目を見開いた。

 

 

「……前向きですね」

 

「落ち込むより、割り切った方が楽なので」

 

 

シロコは頷く。

 

 

「合理的」

 

 

ノノミも、柔らかく微笑んだ。

 

 

「逆に考えたら……もしレインちゃんが、弾を持ってきていなかったら……」

 

 

セリカは腕を組み、ため息をつく。

 

「まぁ……一人で弾薬管理できるのは、確かに助かるわね」

 

 

ホシノ先輩が、いつもの調子で締めくくる――ように見えた。

 

 

「支援がいつ来るか分からないなら〜、来るまで今いるメンバーで、何とかするだけだね〜」

 

 

軽い口調。

気の抜けた声。

 

けれど、その目だけは、机の上の弾薬と、こちらを静かに見据えていた。

 

“何とかする”という言葉の裏に、どれだけの覚悟と経験が詰まっているのか。

それを一番分かっているのが、この人なのだと――なぜか、そう思った。

 

しかし不安が消えたわけではない。

 

それでも――

 

“想定外”だったはずの状況は、少しずつ、“役割”へと姿を変え始めていた。

 




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