ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが?   作:NK7

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続きました
今回から新章スタートです


SRT転入編
No.60 報告、睡眠


 

アビドスを離れて、どれくらい歩いただろうか。

 

夕焼けはもう沈みかけていて、空はゆっくりと夜に変わり始めていた。

 

風は相変わらず乾いていて、でもどこか、さっきまでとは違う匂いがする気がした。

 

(……本当に、出てきたんだな)

 

ふと、足が止まる。

 

振り返りそうになるのを、ぐっとこらえる。

 

(……もう決めたんだ)

 

ポケットの中のスマホに触れる。

 

あの時、もらったスマホ。

 

少しだけ躊躇ってから、取り出す。

 

画面をつけて、モモトークをタップし、スズカ先輩とのトーク画面を開く。

 

一瞬だけ、指が止まる。

 

何て送るか考える。

 

でも、変に飾るのは違う気がした。

 

なので短く簡潔に。

 

 

「SRTに転校することに決めました」

 

 

送信。

 

既読は、すぐについた。

 

数秒。

 

ほんの数秒なのに、やけに長く感じる。

 

そして――

 

通知が届く。

 

 

「決断早くない?」

 

 

間髪入れず、もう一通。

 

 

「いいじゃんいいじゃん、そういうの嫌いじゃないよ」

 

 

さらに続く。

 

 

「手続きとかはこっちでやっとくからさ」

 

「明日、そのまま来て」

 

「場所送るわ」

 

 

すぐに位置情報が送られてくる。

 

私は小さく息を吐いた。

 

(……早いな)

 

でも、その軽さが少しありがたかった。

 

重くならない。

 

迷わせない。

 

私は短く返信する。

 

 

「分かりました」

 

 

既読。

 

 

「よし」

 

「じゃあ明日から正式に後輩な」

 

「見つけたらちゃんと挨拶しなよ?笑」

 

 

思わず少しだけ笑う。

 

(……ほんとに、行くんだな)

 

スマホをポケットにしまう。

 

ふと、現実的な問題に気づく。

 

(……今日、どうする)

 

宿。

 

考えてなかった。

 

立ち止まり、空を見上げる。

 

もう、完全に夜になりかけていた。

 

野宿も考えたが、砂漠で野宿できるほどの物資、特に食料や燃料は持っていない。

 

少し考えてから。

 

もう一度スマホを取り出す。

 

今度は、先生に連絡を入れる。

 

事情を、簡単に説明する。

 

転校のこと。

今日の宿が決まっていないこと。

 

そして――

 

 

「一泊だけ、お願いできませんか」

 

 

送信。

 

少しして、返信が来る。

 

 

「もちろん、大丈夫だよ」

 

 

続けて。

 

 

「玄関で待ってるからね」

 

 

その一文に、少しだけ肩の力が抜けた。

 

(……助かった)

 

私はすぐに移動を始めた。

 

電車や道路のルートを調べながら、歩く。

 

見慣れない道。

 

見慣れない光。

 

アビドスとは違う、人工的な明かり。

 

人の気配も増えていく。

 

駅に入り、電車に乗る。

 

心地よい揺れと共に窓の外の景色が流れていく。

 

ぼんやりとそれを見ながら、考える。

 

(明日から……)

 

SRT。

 

新しい場所。

 

新しい環境。

 

(ちゃんと、やれるか)

 

不安が、少しだけ顔を出す。

 

でも。

 

(……やるって決めた)

 

目を閉じる。

 

深く息を吐く。

 

電車は、静かに目的地へ向かっていた。

 

しばらくして。

 

D.U.区内。

 

目的の場所に到着する。

 

高いビル。

 

周囲とは少し違う雰囲気。

 

(ここが……)

 

入口の前に立つ。

 

少しだけ緊張する。

 

でも、その時。

 

自動ドアの向こうに、人影が見えた。

 

先生だった。

 

 

「お、来たね。レイン」

 

 

軽く手を上げる。

 

そのラフさに、少しだけ気が抜ける。

 

 

「……はい」

 

 

軽く頭を下げる。

 

先生は小さく笑う。

 

 

「お疲れさま。結構歩いたでしょ」

 

「大丈夫?」

 

 

自然な気遣い。

 

構えなくていい距離感。

 

 

「……はい、大丈夫です」

 

 

先生は頷く。

 

 

「そっか。じゃあ中入ろうか」

 

 

促されるまま、中へ入る。

 

(……何も聞かないんだ)

 

転校の理由も。

これからのことも。

 

何も。

 

でも、それがありがたかった。

 

今はまだ、うまく言葉にできないから。

 

エレベーターに乗る。

 

静かに上昇していく空間。

 

先生は特に何も言わない。

 

でも、気まずくはなかった。

 

ただ、落ち着く沈黙。

 

廊下を進む。

 

やがて一つの部屋の前で止まる。

 

 

「ここね」

 

 

扉を開ける。

 

 

「ちょっとシンプルだけど、今夜はここ使って」

 

 

中はシンプルな寝室。

 

でも十分すぎる。

 

 

「……ありがとうございます」

 

 

先生は軽く肩をすくめる。

 

 

「いいっていいって」

 

 

それから少しだけ、優しく言う。

 

 

「今日はもう休みな。色々あったでしょ」

 

 

その言葉に、胸の奥が少しだけ緩む。

 

 

「何かあったら遠慮なく呼んで」

 

「すぐそこにいるから」

 

 

そう言って、軽く手を振る。

 

そのまま部屋を出ていく。

 

扉が静かに閉まる。

 

静寂。

 

私はその場に立ったまま、しばらく動かなかった。

 

(……終わった)

 

いや。

 

(……始まる、のか)

 

ゆっくりと荷物を床に置く。

 

鈍い音が、やけに大きく響く。

 

ベッドに腰を下ろす。

 

少し沈む感覚。

 

(……疲れた)

 

今になって、全部が押し寄せてくる。

 

戦い。

別れ。

決断。

 

全部。

 

靴も脱がず、そのまま後ろに倒れる。

 

天井を見上げる。

 

ぼんやりと。

 

(……明日から)

 

SRT。

 

新しい場所。

 

新しい自分。

 

目を閉じる。

 

さっきの先生の声が、ふと残る。

 

「今日はもう休みな」

 

(……はい)

 

心の中で、小さく返す。

 

そのまま、意識が沈んでいく。

 

(……ちゃんと、やる)

 

その思いだけを残して。

 

私は、静かに眠りに落ちた。

 

 




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