ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが? 作:NK7
翌朝。
身支度を整えながら、私は静かに息を吐いた。
事務室の扉の前で一瞬だけ足を止める。
軽く息を整えてから、ノックをして扉を開けた。
「おはようございます、先生」
声をかけた瞬間、目に入ったのは――明らかに疲弊しきった先生の姿だった。
「お、おはよう…」
その返事はかすれていて、無理に意識を保っているのが分かる。
(これ……寝てないな)
私は一歩近づき、先生の様子を観察する。
目の下の隈、焦点の合いきっていない視線、わずかに揺れる身体。
確信に変わった。
「寝室を貸していただき、本当にありがとうございました」
礼を述べながらも、その視線は先生から逸らさない。
感謝は本心だが、それ以上に――この人をこのままにしておけないという思いが強かった。
「それくらいなら、全然大丈夫だよ」
軽く笑ってみせる先生。
だがその笑顔は、あまりにも無理がある。
(どうして、そこまでして……)
レインの胸の奥に、わずかな苛立ちにも似た感情が芽生える。
それは怒りではない。ただ――「放っておけない」という強い衝動。
「私からは大丈夫には見えませんが…」
少しだけ声が低くなる。
自分でも驚くほど、はっきりとした拒否の響きがあった。
「大丈夫大丈夫。徹夜は慣れてるから」
その言葉を聞いた瞬間――
(慣れてる、から?)
レインの中で、何かが切り替わった。
気づけば、体が先に動いていた。
先生の腕を掴む。
「レイン、まだやらないといけない書類が…って力強っ!!」
抵抗する声。しかし、その力は弱い。当然である。
(この人は、自分を軽く扱いすぎている)
無言のまま、先生を半ば引きずるようにして寝室へと連れていく。
先生はどうにか私を止めようと、抵抗する…が、無駄である。
ベッドに座らせ、そのまま横にさせる。
掛布団をかける手つきは、驚くほど丁寧だった。
「……少しだけでも、休んでください」
小さくそう呟く。
命令でも、お願いでもない。けれど確かに、拒否はさせない響き。
先生は何か言おうとしたが――その前に、静かに目を閉じた。
(……限界だったんだ)
わずか数秒で寝息が聞こえ始める。
私はその様子をしばらく見つめていた。
(こんなになるまで働くなんて……理解できない)
(でも――)
ふと、胸の奥がわずかに温かくなる。
(誰かのために、ここまでできる人なんだ)
それは尊敬に近い感情だった。
静かに踵を返し、寝室を出る。
廊下に出た瞬間、表情が少しだけ引き締まる。
(私は、私にできることをやる)
スズカ先輩から送られてきた情報。
向かうべき場所――SRT特殊学園。
まだ何も分からない世界。
それでも、進む理由はもうある。
(先生が倒れないようにするのも、私の役目かもしれない)
小さく息を吐き、歩き出した。
その足取りに、迷いはなかった。
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ヴァルキューレ警察学校本部の隣。
高いコンクリートの壁に囲まれた無機質な敷地――そこが、SRT特殊学園だった。
外界と切り離されたようなその佇まいに、私はわずかに目を細める。
(……閉じてる)
(ここは、普通の学園じゃない)
校門の前に立つ人影に気づいた瞬間、その思考は途切れた。
見慣れた姿。軽い立ち方。どこか気の抜けたような、それでいて隙のない雰囲気。
神谷スズカ先輩だった。
「おー!来たか後輩ちゃん!待ってたよー!!」
明るく、よく通る声。
この重たい空気の中で、その軽さは逆に浮いているようにも感じる。
(……相変わらず、調子がいい人)
けれど、不思議と嫌ではない。
「こんにちは、スズカ先輩。転入の手続き、ありがとうございました」
軽く頭を下げる。形式的ではあるが、礼は必要だ。
「いいのいいの!かわいい後輩ちゃんのためならなんでもするよ!それじゃ、案内するからついて
きてねー」
その言葉に、私は一瞬だけ眉をわずかに動かす。
だが口には出さず、ただ小さく頷いた。
スズカの後ろを歩きながら、校内へと足を踏み入れる。
中は外観以上に無機質だった。
必要最低限の装飾、実用性だけを追求した構造。
(合理的……無駄がない)
(でも、少しだけ息が詰まる)
案内された先は、事務室だった。
中にいた生徒がこちらを見ると、淡々と書類を差し出してくる。
「すみません。本日付で転入する予定になっている白鷺レインというのですが…」
「はい。確認は取れてますよ。それではこの転入届と武器登録届を書いてください」
私は無言で書類を受け取り、ペンを走らせる。
名前をはじめ個人情報書き込む。
次に武器登録の方も書き込む。
AK-12。
PKP。
SVCh-8.6。
RPG-29。
MP-443。
書き進めながら、わずかに思考が巡る。
(……改めて見ると、無駄に武装が多い)
(でも、これが一番効率がいい)
迷いはない。
必要だから持つ。それだけだ。
書き終えた書類を提出すると、事務の生徒は一瞥し、小さく頷いた。
「はい。転入届と武器登録届、確かに受領いたしました」
そして、続けて淡々と告げる。
「それから、ここでは小隊の所属が絶対なので、所属出来たらメンバーの皆さんと一緒に登録しに来てください」
その言葉に、私の動きがわずかに止まる。
(……小隊)
一瞬の沈黙。
「……了解しました」
しぶしぶ、といった調子で返答する。
集団行動が嫌いなわけではない。
だが――
(足並みを揃えるのは、得意じゃない)
横を見ると、スズカ先輩が「あっ」という顔をしていた。
そして、軽く両手を合わせて舌を出すようなジェスチャー。
完全に「忘れてた」という顔だった。
(この人……本当に適当)
小さくため息を飲み込む。
事務室を出ると、再びスズカ先輩の案内が始まった。
「教えるの忘れてごめんねー。まーさっき言われた通りなんだけどさー、小隊ってのは4人1組で授業とか模擬戦闘とか、基本はそのメンバーで動く感じ!」
「あと任務とか成績も小隊での成績がかなり大切だから相性大事よー?」
軽い口調だが、内容は重要だ。
(4人……固定チーム)
(役割分担と連携が前提になる)
頭の中で自然と戦術のイメージが組み上がっていく。
(前衛、支援、索敵……)
(私の装備だと――)
考え込みかけたところで、スズカ先輩の声に引き戻される。
教室。
室内射撃場。
整然と並ぶ標的、管理された空間。
屋外射撃場。
広く開けたフィールドに、風の流れ。
野外演習場。
起伏のある地形、遮蔽物。
CQB戦演習場。
入り組んだ構造、閉所戦闘用の区画。
一通り見て回るうちに、私の中で一つの確信が生まれていた。
(……ここは、戦うための場所だ)
学ぶ場所ではあるが、その本質は“戦場の延長”。
案内が終わり、玄関へと戻ってくる。
「とりあえずこんな感じかなー!」
「またなんかあったら気軽に質問してよ、後輩ちゃん!」
軽く手を振るスズカ。
「ありがとうございました、スズカ先輩」
短く礼を言うと、スズカ先輩はそのまま去っていった。
一人、残される。
静かな廊下。
私はゆっくりと歩き出した。
(小隊、か……)
視線を少し落とす。
(どうやって入る?)
(既存の小隊に入るのか、それとも――)
自分の装備、戦い方。
それに適応できるメンバー。
(下手に組めば、足を引っ張る)
(……いや)
小さく首を振る。
(足を引っ張るのは、私かもしれない)
その可能性を、きちんと受け入れる。
だからこそ――
(慎重に選ぶ必要がある)
廊下の奥へと進みながら、レインは思考を巡らせ続けた。
新しい環境。
新しい関係。
そして、新しい戦い方。
そのすべてが、これから始まる。
感想お待ちしてます
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