ロシア装備でサバゲーしていた俺がいつの間にかブルアカの世界に転生してTSしていたんだが? 作:NK7
寮の一室。
これからハスキー小隊のみんなと過ごしていく部屋。
無機質な壁と簡素な机に、両壁には二段ベッドが置いてあるシンプルな部屋
そんな部屋の中央のテーブルには、分厚い資料が広げられていた。
都市戦闘――建物内や市街地での戦い方をまとめた教本。
ページには図面と矢印がびっしりと描かれ、余白には細かな書き込み。
ただ読むための本ではなく、「動くための指針」であることが一目で分かる。
私は椅子に腰掛け、その一ページ一ページを静かに追っていた。
(……情報が詰まりすぎている)
構造、侵入角度、視界の取り方、連携。
どれも単体では理解できる。
だが――
(全部が繋がっている)
一つでも崩れれば、全体が機能しなくなる。
「そこ」
向かいに座るリディアが、指先で一点を示す。
「エントリー直後の位置取りだが…」
私の視線がそこに落ちる。
ドアを開けた瞬間、正面に広がる範囲。
侵入者が最も無防備になる区間。
「絶対正面には立たないことだ」
リディアの声は低く、明確だった。
「必ず位置をずらす」
「身体を晒す時間を減らすためだ」
私は頭の中でその動きを再現する。
「そして侵入は“流れ”…”勢い”で行う」
リディアはペンで矢印をなぞる。
「一人ずつ区切るな」
「止まらずに、連続して突入する」
(流れを切らない)
「判断は侵入前に終わらせる」
「中に入ってから考える余裕はない」
私はわずかに目を細める。
「……つまり、動きは基本決め打ちですか」
「そうだ」
即答だった。
「例外はあるが、基本はそれだ」
(柔軟性より、再現性)
私はページの図を指でなぞる。
「二人での侵入は?」
「クロスかボタンフック」
リディアはすぐに答える。
…が何のことかわからない。
「クロスとボタンフックって何ですか?」
「すまん教えてなかったな。簡単に言うとクロスは左右に分かれて、ボタンフックは同側に回り込む方法だ」
(動線の違い)
「使い分けは構造次第だ」
(環境依存)
「三人以上の場合は?」
「役割を分担するんだ」
短く、はっきりとした答え。
「前、横、後ろ」
「一人で全部は見れない。だから分担してそれぞれ確認するんだ」
(限界の認識)
その言葉に、私は小さく頷いた。
一方で――
「え、ちょっと待って!ちょっと待って!」
アイラの声が上がる。
「これさ!どっち見ればいいの!?」
資料を指差しながら混乱している。
「全部見ない」
ミラが静かに言う。
「順番」
指で一つずつなぞる。
「入口から進行方向をカバー」
「一個ずつ」
「いっぺんにやらない」
「えーと……」
アイラが必死に追いかける。
「じゃあ私こっち見て……あれ、でも後ろも気になる!」
「……分担してそれぞれを確認する」
ミラは淡々としている。
「例えばアイラは前を見る」
「アイラの後ろには私がいる」
「だったら後は大丈夫でしょ?」
シンプルな説明。
「……あ」
アイラの動きが止まる。
「それなら……分かるかも」
少しだけ理解が追いつく。
(役割を絞ると処理できる)
私はその様子を見ながら、自分の思考を深める。
「レイン」
リディアが呼ぶ。
「問題だ。この構造ならどう動く?」
複雑な室内図。
細い通路、複数の扉、深い死角。
私は数秒、黙って考える。
(入口一つ)
(分岐多い)
(視界制限あり)
頭の中で動きを再現する。
「……先頭は左を処理」
「二番手は右をカバー」
「奥は後回し」
「手前を優先」
言葉にすることで、思考が整理される。
リディアはわずかに頷いた。
「悪くない」
短い評価。
(通じている)
だが、そこで終わらない。
「…がここを忘れているぞ」
ペンが別の場所を指す。
「上だ」
(……上)
図を見直す。
そこには二階部分も記されていた。
「上下も意識するんだ」
「建物は左右だけじゃない」
(立体)
一段、理解が深まる。
「……なるほど」
自然と口に出る。
「理解が早いな」
リディアが言う。
だが私は首を振る。
「…理解できても、動けるとは限りません」
「そうだな…」
(理解と実行は別)
頭の中でできても、実際に動けるとは限らない。
その差を、はっきり認識していた。
一方で――
「うわあああ無理!!情報多い!!!」
アイラが机に突っ伏す。
「……確かに多いよね」
ミラは否定しない。
「でも慣れるしかない」
「少しずつ」
「うぅ……がんばる……」
アイラが小さく呟く。
(単純だけど、折れにくい)
私はそう感じる。
リディアが資料を閉じた。
「今日はここまで」
部屋の空気が少し緩む。
「まずは頭に入れろ」
「動きは後で合わせる」
(段階的)
私は静かに頷いた。
「……ありがとうございます、リディア」
「いや、教えるというのは私が言ったことだからな。お前を立派な小隊長にするためなら、何でもするさ」
素直に礼を言う。
その横で――
「え、明日もやるの!?」
「……アイラが理解するまでやる」
「えええええ!?」
アイラの悲鳴と、ミラの淡々とした返答。
その対比に、わずかに空気が和らぐ。
私は資料に手を置いたまま、静かに考える。
(理解はできている)
(だが、それだけじゃ足りない)
実際に動き、合わせる必要がある。
そして――
(この三人と)
視線を少しだけ上げる。
騒がしい声。
静かな気配。
冷静な視線。
(悪くない)
胸の奥で、確かな手応えが生まれていた。
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続きません
レインの設定って書いたほうがいいですか?
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