戦闘狂の白狐   作:ぐちロイド

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第11話 象徴の終焉、そして「家」との決別

 

神野の決戦から数日。テレビの画面には、痩せ細った指でカメラを指差し、「次は、君だ」と告げたオールマイトの姿が繰り返し流れていた。世間はその言葉を次世代へのエールと受け取ったが、連にはそれが、一つの巨大な「ゲーム」が幕を閉じた合図のように聞こえていた。

 

 

月曜日、雄英高校1年A組の教室。

いつもなら騒がしいはずの室内は、重く沈んだ空気に包まれていた。教壇に立つ相澤消太の顔には、今まで以上の疲労と、それ以上に鋭い「覚悟」が刻まれている。

 

 

相澤「……オールマイトが引退し、平和の象徴は失われた。ヴィランの動きは加速し、社会の目は今まで以上に厳しくなる。……そこでだ」

 

 

相澤は鋭い視線でクラス全員を見渡した。

 

 

相澤「来週から、お前たちは全寮制に移行する。安全の確保、そしてお前たちを常に監視し、鍛え上げるためだ」

 

 

教室内がどよめきに包まれる。「全寮制」「共同生活」という言葉に、耳郎や上鳴たちは驚き、緑谷は表情を引き締める。だが、最後列に座る連だけは、退屈そうに窓の外を見つめていた。

 

 

連「……寮、か。香山さんが黙っていないな」

 

 

連は、自宅で「連がいなくなるなんて耐えられない!」と泣き喚くであろうミッドナイトの姿を容易に想像できた。ツムリがいるとはいえ、あの自由奔放な女が「離れ離れ」という状況を素直に受け入れるはずがない。

 

 

相澤「騒ぐな、話はまだ終わっていない」

 

 

相澤の冷徹な声がどよめきを鎮める。

 

 

相澤「全寮制への移行と同時に、お前たちには『仮免許取得試験』を受けてもらう。本来、1年が受けるには早すぎるが、緊急事態だ。現場で個性の使用を許される『資格』を、最短で手に入れてもらう」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、クラスの空気が変わった。

 

切島「仮免……! つまり、俺たちも公にヒーローとして動けるってことか!」

 

切島が拳を握り、轟が瞳の奥に静かな火を灯す。

連は、自分の右手に刻まれたデザイアドライバーのアザをそっと撫でた。

 

 

連「……免許、か。この世界のルールに縛られるつもりはないが、自由に暴れるための『ライセンス』としては悪くないな」

 

 

 

その日の夜。香山のマンション。

予想通り、リビングは戦場と化していた。

 

 

香山「嫌よ! 絶対に嫌! 私の連を寮なんていう隔離施設に閉じ込めるなんて、相澤くんをブッ飛ばしてでも阻止するわ!!」

 

 

半狂乱で連にしがみつき、シーツを涙で濡らす香山。ツムリは傍らで無機質に紅茶を淹れながら、「連様の安全のためには、寮生活も一つの合理的な選択かと」と冷静に火に油を注いでいる。

 

 

連「……香山さん、落ち着け。アンタは雄英の教師だろ。寮に行っても毎日学校で会う。……それに」

 

 

連は香山の顎を指先でクイと持ち上げ、彼女の瞳を真っ直ぐに見つめた。

 

 

連「……俺が寮に入るのは、物語(ゲーム)を次のステージに進めるためだ。アンタとの『夜の部』が休みになるのは惜しいが……その分、学校でこっそり可愛がってくれるんだろう?」

 

 

連の不敵な笑みと、自分だけに向けられる支配的な視線に、香山は一瞬で毒気を抜かれたように顔を赤くした。

 

 

香山「……ずるいわよ、連。そんな顔されたら、反対できないじゃない……」

 

 

連「ツムリ。荷造りは任せる。……香山さん、今日は最後(・・)の夜だ。満足させてやるから、早く準備しろ」  

 

 

連の言葉に、香山は「……死ぬほど愛してあげるから!」と抱きつく。

寮生活、仮免試験。

連にとって、それはこの「僕のヒーローアカデミア」という世界を、完全に自分の手の平で転がすための準備期間に過ぎない。

 

 

連「次は、俺だ(・・・・)。……オールマイト、お前の席、俺がもっと面白く上書きしてやるよ」

 

 

窓の外、月光に照らされた雄英の校舎を見据えながら、連は静かに「創世」の鼓動を響かせていた。

 

 

 

 

雄英高校の敷地内に建設された寮「ハイツアライアンス」。全寮制初日、1年A組の面々は、それぞれの個性あふれる部屋をお披露目する「部屋王決定戦」で盛り上がっていた。

 

 

 

上鳴「最後は暁の部屋だな! どんな無機質な部屋かと思えば……」

 

上鳴が期待と不安を混ぜた表情でドアを開ける。その瞬間、クラスメイトたちは言葉を失った。

 

耳郎「……何、これ。ここ、日本だよね?」

 

耳郎が呟くのも無理はなかった。そこは、既成の寮の個室という概念を完全に破壊していた。

内装は全て白大理石のような滑らかな素材に書き換えられ、天井からは幾何学的な紋章を象った黄金のシャンデリアが輝いている。壁には、かつてのデザイアグランプリの栄光を物語るような美しい装飾が施され、中央には豪奢なカウチソファが鎮座していた。

 

ツムリ「連様の居住環境を整えるのは、ナビゲーターの義務ですので」

 

 

傍らでツムリが無表情に、しかし誇らしげに立っている。

 

連「ツムリ……。お前、いつの間にここまでやった」

 

 

連は呆れながらも、座り心地の良さそうなソファに身を沈めた。

 

切島「暁、これもう部屋とかいうレベルじゃねぇぞ! まんま神殿じゃねぇか!」

 

 

切島が驚愕し、緑谷はノートに「部屋の構造すら上書きされている……?」と必死にメモを取る。

 

連「……落ち着け。ただの『拠点』だ。……さて、明日は早い。NPC共はさっさと自分の巣へ帰れ」

 

連の冷たくも不敵な言葉に、クラスメイトたちは圧倒されながらも、自分たちとは住む次元が違うことを改めて思い知らされるのだった。

 

 

 

 

翌日。仮免許試験に向けた「必殺技(究極のムーブ)」を編み出すための特訓が、体育館「TDL(トレーニング・ダイナミクス・ランド)」で始まった。

 

相澤やセメントスが見守る中、生徒たちがそれぞれ個性を伸ばす工夫をする一方で、連は一人、コンクリートの広大な訓練場の端に立った。

 

相澤「暁、お前はどうする。既に完成されているようにも見えるが」

 

相澤の問いに、連はレーザーレイズライザーを手の中で弄びながら答えた。

 

連「……必殺技など、本来は必要ない。俺が動けば、それが即ち終わりの合図(フィニッシュ)だからな。……だが、せっかくの機会だ。この世界の『強度』を試させてもらう」

 

連はドライバーにバックルを叩き込む。

 

**『LASER BOOST!』『GET READY FIGHT!』**

 

黄金の粒子が吹き荒れ、レーザーブーストフォームへと変身。連はライザーの出力を最大まで引き上げ、さらに脚部のブースト噴射を逆噴射の構えで固定した。

 

連「……ターゲット、この訓練場すべて」

 

連がトリガーを引くと同時に、ライザーから放たれたのは単純な光線ではなかった。

それは、ブーストの加速力を極限まで収束させ、次元を穿つほどの高密度な破壊の奔流。

 

**『LASER BOOST VICTORY!』**

 

ズドォォォォォォン!!

スタジアム全体を揺るがす轟音。閃光が収まった後、そこには驚愕の光景が広がっていた。

厚さ数メートルはある耐震コンクリートの床が、連の正面から扇状に消失し、深さ数メートルのクレーターが一直線に刻まれていた。

もはや「技」ではなく、一帯を更地(マップ兵器)にするほどの圧倒的な暴力。

 

連「……やりすぎたか。これでは訓練にならないな」

 

連は変身を解除し、呆然と立ち尽くす相澤とセメントスに一瞥をくれた。

 

セメントス「あ、暁……。お前、仮免試験でそれを使うつもりか?」

セメントスが震える声で尋ねる。

 

連「……相手による。だが、俺の理想を邪魔する者がいるなら、この光で『リセット』するだけだ」

 

連は背を向け、ツムリが用意した冷たい水を口にする。

その瞳には、仮免試験に集まる他校の「プレイヤー」たちなど微塵も映っていなかった。彼の見据える先は、そのさらに先にある、自分の望むままに書き換えられた世界の姿だった。

 

 

 

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