戦闘狂の白狐   作:ぐちロイド

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第16話 揺らぐ天秤、神の休息

 

死穢八斎會の壊滅、そして壊理の救出。だが、その結末は「ヒーローの勝利」という美談で片付けられるには、あまりにも異常すぎた。

 

 

 

事件の翌日、テレビやSNSは一つの映像で持ちきりだった。

地下から突如として湧き上がり、瞬時に整然とした街並みへと姿を変えた神野の一部。そして、その中心で極光を纏い立つ黄金のキツネ。

 

「これは個性の範疇を超えている!」「彼は救世主か、それとも自然の摂理を壊す怪物か!?」

世論は「奇跡」への狂信と、「異物」への恐怖で二分された。

 

一方で、ヒーロー公安委員会は緊急会議を招集していた。

「……一晩で街を再構築し、因果を書き換える力。これはもう、一介のヒーローとして管理できるレベルではない。暁連……彼は既存の社会構造にとって、最も都合の悪い『特異点』だ」

連への監視体制は、これまでの24時間体制から、衛星軌道上からの追跡を含む「有事即排除」の極秘フェーズへと移行し始めていた。

 

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騒がしい外界を余所に、雄英の寮「ハイツアライアンス」の連の部屋(神殿)では、対照的な光景が広がっていた。

 

ミッドナイト「連ーーーっ!! 無事だったのね!? もう、あんな得体の知れない怪物と戦うなんて、お姉さんの心臓がいくつあっても足りないわ!」

 

ドアを開けるなり、ミッドナイトこと香山睡が連に猛烈な勢いで抱きついた。彼女は教師としての立場を忘れ、連の無事を確かめるようにその胸に顔を埋める。

 

連「……香山さん、暑苦しい。俺が負けるはずがないだろう」

 

 

ミッドナイト「そんなの分かってるけど、心配なのは別問題よ!」

 

「お帰りなさいませ、連様。そして、小さなお客様も」

 

 

ツムリが静かに一礼する。連の影に隠れるようにしていたのは、保護された後、連から離れようとしなかった壊理だった。

 

連「……今日から、このエリもしばらくここに置く。ツムリ、食事を」

 

 

「承知いたしました。壊理様には、消化に良く、かつ『幸せ』を感じていただける特製アップルパイをご用意しております」

 

連はソファに深く腰掛け、膝にすがりついてくる壊理の頭を無造作に撫でる。

 

 

連「……いいか、エリ。ここは俺の領域だ。誰もお前を傷つけない。……だから、泣くのはもうやめろ」

 

エリ「……うん……お兄ちゃん……」 

 

 

神殿のような部屋で、最強のナビゲーターと、溺愛する女性教師、そして未来を託された少女。

連の周りは、彼が望むと望まざるとにかかわらず、急速に「家族」のような騒がしさを帯び始めていた。

 

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暗い地下室。死柄木弔は、モニターに映し出される「再構築された街」を、血が出るほど唇を噛み切りながら見つめていた。

 

死柄木「……あは、はは……。先生、俺の『崩壊』も、あいつの指先一つで『なかったこと』にされるのか……?」 

 

 

かつて自分をラスボスと信じていたプライドは、粉々に砕け散っていた。どれだけ殺意を磨いても、相手が「世界そのものを書き換える筆」を持っている以上、自分はただ消されるだけの文字に過ぎない。

 

死柄木「……壊すだけじゃ、足りない。ルールを壊しても、あいつが新しいルールを創るなら……意味がないんだ……」

 

ベロバ「あら、随分と打ちのめされちゃって。可愛いわね、死柄木」

影からベロバが姿を現す。彼女の瞳には、死柄木の絶望を最高のスパイスとして楽しむ悦楽が宿っていた。

 

ベロバ「でも、諦めるのは早いわよ。ギーツが『創世』で世界を上書きするなら、私たちはその『インク』を毒で汚せばいいの」

 

ベロバは不敵に微笑み、新たなチェスの駒を動かすように告げる。

 

 

ベロバ「次は、ヒーロー社会そのものを内側から腐らせる『ジャマト・ゲーム』の幕開けよ。……死柄木、あなたにはその特等席で、もっと酷い不幸を演出してもらうわ。楽しみにしておいてね?」

 

ベロバの手には、より禍々しい輝きを放つ「プレミアム」な力が握られていた。

連が創り変えようとする世界と、それを絶望で塗り潰そうとするベロバ。

物語は、ヒーローとヴィランの抗争を超え、世界の「理」を奪い合う神々の遊戯へと変貌していく。

 

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雄英高校の文化祭が幕を開けようとしていた。連にとっては退屈な行事のはずだったが、それは彼が手を加えることで「伝説」へと書き換えられる。

 

 

 

上鳴「暁! 演出の機材が足りないんだ、どうにかならないか!?」

実行委員の上鳴や瀬呂が泣きついてくる。連は溜息をつき、誰もいない体育館の舞台に立った。

 

連「……文化祭か。どうせやるなら、二度と忘れられない最高難易度のステージを見せてやる」

 

連が指を鳴らす。

瞬間、体育館の空間が「創世」の力で拡張された。天井は夜空のように透き通り、無数の黄金の粒子が照明代わりに舞い踊る。スピーカーを通さずとも、音が全身に「共鳴」する特殊な音響結界が張られた。

 

爆豪「なっ……何だこれ!? 触れる光、動く背景……!!」

 

 

爆豪のドラムに合わせて床が振動し、耳郎の歌声に合わせて空間の色が変化する。

それは最新技術すら超越した、五感に直接訴えかける「超常の演出」。A組のステージは、もはや学生の出し物ではなく、観客全員を別次元へ誘う「神のライブ」として伝説となった。

 

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文化祭当日、買い出しに出た緑谷が戻らない。

連は空中に浮かぶ不可視のモニターで、学校の敷地外で繰り広げられる戦いを遠くから眺めていた。

 

連「……あがいているな、緑谷」

 

画面の向こうでは、緑谷が空中を蹴り、新技「エアフォース」の衝撃波でジェントル・クリミナルを追い詰めていた。愛する者のために夢を追うジェントルと、学校の平和を守るために戦う緑谷。

 

連「……どちらの言い分も正しい、ゆえに救いがない。だが、俺が介入するほどのものではないな。緑谷、お前がその『重み』を背負って帰ってこい」

 

連は冷たく独り言ち、ティーカップを置いた。彼にとっては、緑谷の成長もまた、理想の世界を創るための「観測データ」の一つに過ぎない。

 

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しかし、祭りの最中、ベロバの仕掛けた最悪の毒が街に回った。

 

ベロバ「あはっ! 見てよギーツ、街中に『人間に化けたジャマト』を放流しておいたわ。誰が本物で、誰が偽物か……あなたに見分けられるかしら?」

 

街の至る所で、平穏に歩いていた市民が突如としてジャマトに変貌し、隣にいる人間を襲い始める。さらに狡猾なのは、擬態したジャマトが「助けて!」と叫びながら、人間の中に紛れ込んでいることだ。

 

ツムリ「連様。外見、体温、心拍数……全てが人間と一致しています。通常のスキャンでは判別不能です」

ツムリが困惑の表情を見せる。

 

連は街の中心に降り立ち、**レーザーブーストフォーム**へと変身した。

目の前では、二人の男が「俺は人間だ! こいつがジャマトだ!」と互いを指差して叫んでいる。周囲のプロヒーローたちは、誤射を恐れて手が出せない。

 

連「……判別不能なら、答えは一つだ」

 

連は無慈悲に、ライザーの照準を「二人同時」に合わせた。

 

プロヒーロー「暁! 何をする気だ! 片方は本物の人間なんだぞ!」

駆けつけたヒーローが叫ぶが、連は冷徹に引き金を引いた。

 

連「……本物ごと撃てば、間違いはない。俺が後で『創世』してやる。死ぬ瞬間だけ、我慢しろ」

 

極光が二人を貫く。一人はジャマトとして霧散し、もう一人の人間も致命傷を負って倒れた。

しかし、その男の傷口が連の放った光の粒子によって瞬時に塞がり、失われた命が「再構築」されていく。

 

プロヒーロー「……な……!?」

 

連「俺が殺し、俺が創る。それが俺のルールだ」

 

連は恐怖に震える街の人々を見下ろし、冷たく言い放った。

 

 

連「ベロバ。アンタの『不幸な二択』など、俺の絶対的な力の前では選択肢にすらならない。……全員を一度リセットしてでも、俺はジャマトだけを排除する」

 

非情でありながらも、誰よりも確実に「被害」を最小限に抑える神のやり方。

その光景を見ていた人々は、救われた安堵よりも、連という存在への「底知れない恐怖」を、より深く刻み込まれることになった。

 

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  • 炎系
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