戦闘狂の白狐   作:ぐちロイド

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第18話 訣別の赤、そして白銀の目覚め

 

 

雄英高校の正門前。夕闇が迫る中、連は一つの区切りをつけようとしていた。その手には、白紙に近い退学届が握られている。

 

 

 

相澤「待て、暁。その先に何があると思っている」

 

正門に立ち塞がったのは、担任の相澤消太だった。その瞳は赤く光り、抹消の個性が発動している。だが、連の歩みは止まらない。

 

連「相澤先生。お前の『抹消』で消せるのは、この世界のルールで作られた個性だけだ。俺の存在そのものは、お前の視界には収まらない」

 

相澤「……お前をこのまま野に放てば、社会はパニックに陥る。教師として、そしてヒーローとして、ここで止めるのが俺の義務だ!」

 

相澤が捕縛布を鋭く射出する。しかし、連は変身すらせず、ただ微かに空間を歪ませただけで、布はあらぬ方向へと弾かれた。連は無造作に相澤の肩に手を置き、その身体を軽々と突き飛ばす。

 

連「……義務か。退屈な言葉だ。アンタは、生徒(俺)ではなく、この世界の『安寧』を守っていろ」

 

相澤は地面に膝をつき、遠ざかる背中をただ見送るしかなかった。

 

---

 

 

 

ミッドナイト「連!! 待って、行かせないわ!」

 

校舎から駆け出してきた香山睡が、連の背中にしがみついた。その形振り構わぬ姿に、校門付近にいた生徒たちが息を呑む。

 

ミッドナイト「あんたが行くなら、私も教師なんて辞める! ヒーローも、肩書きも全部捨てるわ。だから、私を置いていかないで!」

 

連は足を止め、振り返った。その瞳には、かつて香山に見せた慈しみはなく、ただ冷徹な決意だけが宿っている。

 

連「……香山さん。アンタは俺の横に立つには、あまりにこの世界を愛しすぎている。俺が創り変える世界に、アンタの居場所はない」

 

ミッドナイト「そんなの嘘よ! 嘘だって言いなさいよ!」

 

連は彼女の腕を無慈悲に振り払った。そして、虚空から真紅のバイク――**ブーストストライカー**を召喚する。

 

連「ツムリ、乗れ」

 

ツムリ「はい、連様」

 

ツムリが静かに後部座席にまたがる。エンジン音が咆哮し、紅蓮の炎がアスファルトを焦がした。香山が泣き崩れる中、連は一度も振り返ることなく、夕陽の彼方へと消えていった。

 

---

 

 

 

夜、廃墟となったビルの屋上で連は深い瞑想に入った。ジーンから渡されたコインが共鳴し、彼の意識は真っ白な精神世界へと引きずり込まれる。

 

そこには、白銀の和服を纏い、不敵に微笑む一人の男が座っていた。

 

英寿「……久しぶりだな、俺。いや、今の君は『暁連』だったか」

 

そこにいたのは、かつて世界の理を書き換えた不敗の神、**浮世英寿**だった。

 

連「……英寿。お前の力が、今の俺の器を壊そうとしている。Mark IXを制御する鍵を渡せ」

 

英寿はゆっくりと立ち上がり、連の胸元を指差した。

 

英寿「鍵は最初から君の中にある。だが、君は『神』であろうとするあまり、この世界の『暁連』としての執着を捨てようとしている。……マークナインは、世界を愛する者のみが扱える力だ」

 

連「愛だと? ……そんな感情は、攻略の邪魔でしかない」

 

英寿「なら、力ずくで奪ってみせろ。今の君が、ただの『怪物』か、それとも新たな『神』か……俺が試してやる」

 

英寿の手には、白銀のブーストマークIXバックルが握られていた。

連は精神世界の中でさえ、指先が透け始めるのを感じていた。消滅へのカウントダウンが響く中、連は自らの過去、そして「浮世英寿」という最大の壁を超えるための、魂を削る修行へと身を投じた。

 

連「……いいだろう。お前を越えて、俺が真の『創世』を見せてやる」

 

白銀の世界で、二人の「ギーツ」が激突する。

その先に待つのは、救済か、それとも完全なる消滅か。

 

---

 

 

 

精神世界の白光の中で、連は浮世英寿の放つ圧倒的な「神の理」に打ちのめされていた。指先は砂のように崩れかけ、存在そのものが忘却の彼方へ消え去ろうとしている。

 

英寿「どうした? 君が捨てようとしたその『未練』こそが、この世界に君を留める唯一の絆だ。それを否定すれば、君はただの虚無に帰る」

 

英寿の言葉と共に、連の脳裏に光景が溢れ出した。

自分を現世に繋ぎ止めようと泣き腫らした香山睡の瞳。

「お兄ちゃん」と呼んでくれた壊理の温もり。

そして、反発しながらも共に過ごしたA組の騒がしい日常。

 

連(……俺は、この退屈な世界を攻略するだけのはずだった。だが、あの女の涙も、エリの笑顔も……俺が創り変える「理想」の一部になっていたというのか)

 

連「……認めよう。俺はこの世界に、毒されていたらしい」

 

連がそう呟いた瞬間、崩れかけていた肉体が強烈な光を放ち、再構築された。冷徹な神としてではなく、この世界を「愛し、支配する」という傲慢なまでの執着。それがアンカーとなり、連の存在を確定させた。

 

英寿「合格だ、連。……さあ、君の理想を世界に刻め」

 

英寿から託された白銀のバックルが、連の手の中で真の輝きを放つ。

 

---

 

 

現実の世界では、最悪の事態が進行していた。

暁連という「抑止力」が去った雄英高校を、死柄木弔率いるヴィラン連合、そしてベロバが操るジャマトの軍勢が急襲したのだ。

 

ベロバ「あはは! キツネがいなけりゃ、この学校なんてただの砂場ね!」

 

ベロバが放った新型の「ポーンジャマト」数千体が校舎を埋め尽くし、死柄木の「崩壊」がバリアを粉砕する。相澤やミッドナイト、そしてA組の生徒たちが必死に防衛線を張るが、物量と絶望的な力に一人、また一人と倒れていく。

 

ミッドナイト「連……どこにいるの……っ!」

 

ボロボロになりながらも鞭を振るう香山。だが、死柄木の触手が彼女を捕らえようとしたその時――。

 

天から、世界の音を全てかき消すほどの清浄な「鐘の音」が響き渡った。

 

 

 

連「……随分と派手に散らかしてくれたな、害虫共」

 

雲を割り、垂直に降り注いだのは一筋の白銀の閃光。

着地と共に、周囲のジャマトたちが一瞬で「花びら」へと姿を変え、消滅した。

 

煙の中から現れたのは、白銀の装甲に身を包み、九本の尾を模したマントを翻す、神々しいまでの姿。

 

**『DYNAMITE BOOST!』『GEATS IX!』『READY FIGHT!』**

 

緑谷「あ、暁……くん……?」

 

 

緑谷が呆然と見上げる。そこにいるのは、暴走したあの時の怪物ではない。世界そのものを慈しみ、そして支配する真の神――**ギーツIX(ナイン)**だった。

 

ツムリ「連様。因果の修正、および世界の再構築の準備、完了しております」

傍らに現れたツムリが、恭しく頭を下げる。

 

 

連「……ベロバ。死柄木。……俺がいない間に、勝手にエンディングを書き換えた罪は重いぞ」

 

連が軽く手をかざすと、破壊された校舎が逆再生のように修復され、傷ついたヒーローたちの傷が光に溶けて消えていく。

 

連「さて、ハイライトだ。……ここから先は、俺の創る物語(ゲーム)に、アンタたちの居場所はない」

 

連の瞳が白銀に輝く。

真の「創世」の力が解放され、戦場は今、神の指先一つで塗り替えられようとしていた。

 

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