戦闘狂の白狐   作:ぐちロイド

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第20話 混沌の胎動、悪意のアップグレード

 

雄英高校では、1年A組とB組による合同戦闘訓練が行われていた。活気にあふれる演習場の裏側で、世界の均衡を壊す「真の脅威」が牙を剥き始めていた。

 

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緑谷「うわあああああッ!!」

 

演習場に緑谷出久の絶叫が響き渡る。彼の右手から、これまでの「ワン・フォー・オール」とは明らかに質の異なる、どろりとした黒いエネルギーの触手――**「黒鞭」**が噴き出した。

 

爆豪「デクゥ!? 何だその力は……制御できてねぇぞ!」

爆豪が叫び、お茶子が必死に緑谷を止めようと飛びつく。

 

高みの見物を決め込んでいた連は、観覧席でツムリが淹れた紅茶を啜りながら、その様子を冷めた瞳で見つめていた。

 

 

連「……ようやく『内蔵データ』が解禁されたか。だが、器が追いついていないな。ボウヤ、そのままでは自分の力に飲み込まれるぞ」

 

連は助けに行く素振りも見せず、ただ緑谷の「進化」を冷徹に観測していた。

 

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時を同じくして、泥花市。

数万の信徒を抱える「異能解放軍」の本拠地は、地獄と化していた。最高指導者・リ・デストロの前に立ちはだかったのは、死柄木弔、そしてその隣で不敵に微笑むベロバだった。

 

ベロバ「あはっ! 随分と威勢がよかったけど、結局はこの程度なのね」

 

足元には、ジャマトの蔓に絡め取られ、動けなくなった解放軍の幹部たちが転がっている。死柄木の「崩壊」は既にリ・デストロの両足を奪い、戦意を完全に喪失させていた。

 

ベロバ「死柄木、あんたの『壊したい』って執念、最高にゾクゾクするわ。……ご褒美に、もっと大きな絶望を振るえるようにしてあげる」

 

ベロバが懐から取り出したのは、禍々しい紫色の光を放つ**「プレミアムカード」**、そしてジャマトの根源的な生命力を凝縮した結晶だった。

 

 

ベロバは死柄木の背後に回り、その影に結晶を流し込む。

 

 

ベロバ「……これは、未来の技術(データ)で最適化した『悪』のブーストよ。あんたの個性を、この世界の枠組みから解き放ってあげる」

 

死柄木「……あ……ああああッ!!」

 

 

死柄木の身体に、ドス黒い血管が浮き出る。彼の「崩壊」はもはや、触れたものだけでなく、空気や地面を伝って「伝鎖」し、視界に入る全てを塵に帰す神の如き破壊力へと変貌した。

 

さらにベロバは、虚空に向けて不敵に告げる。

 

 

ベロバ「……そこにいるんでしょ? オール・フォー・ワン。あんたという『ラスボス』が型落ちにならないように、私たちがちょっと手を貸してあげるわ」

 

タルタロスに収監されているはずの、あるいは死柄木の中に眠る「魔王」の意識。ベロバの介入により、かつて連に破壊されたAFOの「理」が、デザイアグランプリの演算能力を取り込む形で急速に修復・強化されていく。

 

ベロバ「これで準備は整ったわ。ヒーローたちが『新しい個性』に浮かれている間に、私たちは世界を『リセット』する準備をしましょう?」

 

ベロバの嘲笑が、崩壊した泥花市に響き渡る。

緑谷が手に入れた「黒鞭」という光に対し、ベロバが死柄木に与えたのは「理不尽なまでの闇」。

連が創り変えようとする「理想の世界」を、根底から腐らせるための最悪のゲームが、本格的に動き出そうとしていた。

 

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合同戦闘訓練が終わり、緑谷の「黒鞭」発現に沸き立つ雄英高校。しかし、演習場の片隅で、連は一人、遠く西の空を見つめていた。

 

 

 

連「……不愉快な風が吹いているな」

 

連の瞳が、無意識に白銀の輝きを帯びる。かつて自分が捻り潰したはずの死柄木の「崩壊」、そしてAFOの「理」が、ベロバという不純物(ノイズ)を混ぜ合わせ、毒々しいまでの漆黒に染まり、肥大化していくのを感じ取っていた。

 

ツムリ「連様。泥花市周辺にて、因果律の異常な歪みを観測しました。死柄木弔のデータが、既存の規格を大幅に逸脱しつつあります」

 

背後に控えるツムリの報告に、連は不敵な笑みを浮かべる。

 

連「……害虫が、ただの雑草から毒草に進化したか。ベロバめ、俺を退屈させないための工夫としては合格だ。だが……」

 

連は手の中の**ブーストマークIXバックル**を強く握りしめる。

 

連「俺の『創世』は、毒ごと世界を塗り替える。……ツムリ、次のステージの準備だ。ボウヤたちを少し、まともに動けるようにしてやる」

 

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冬休み。緑谷、爆豪、轟の三人は、No.1ヒーロー・エンデヴァーの元でインターンを開始していた。そこに、頼まれてもいない「特別講師」が一人、当然のように合流する。

 

エンデヴァー「暁……! なぜ貴様がここにいる」

 

 

エンデヴァーが顔をしかめる。神野の事件以来、彼は連の「底知れぬ力」に警戒心を解いていない。

 

連「……アンタの教育は遅すぎる。死柄木が『最悪の進化』を遂げている今、この三人をヒヨコのままにしておけば、俺の理想を邪魔するゴミが増えるだけだ」

 

連はそう言い放つと、パトロールの最中に突如、三人の前に立ちはだかった。

 

連「緑谷、爆豪、轟。お前達は、エンデヴァーの後を追うだけで満足か?」

 

爆豪「何……!? 暁、いきなり何だよ!」

 

 

爆豪が即座に反応し、爆破の構えをとる。

 

連「……ハンデをやる。三人同時にかかってこい。一分以内に俺の髪一本にでも触れられたら、アンタたちの『勝ち』にしてやる」

 

轟「……っ! 舐めるな!!」 

 

爆豪が先陣を切り、轟の炎と緑谷の黒鞭が連を全方位から包囲する。エンデヴァーが見守る中、三人の「現時点での最高出力」が一点に集中した。

 

 

 

だが、連は変身すらしない。

 

連「……遅い」

 

連が軽く指を鳴らす。その瞬間、三人の周囲の重力が「創世」の力で局所的に歪められた。爆豪の爆風は虚空へ逸れ、轟の炎は凍てつく風に書き換えられ、緑谷の黒鞭は連の体に触れる直前で、まるで意志を失ったように解けて消えた。

 

緑谷「なっ……個性が、発動しないんじゃなくて……書き換えられてる!?」

 

緑谷が驚愕に目を見開く。

 

連「……お前達の攻撃には『意志』が足りない。世界をどう変えたいか、その覚悟がない拳は、俺には届かない」

 

連は一歩踏み出すと、三人の眉間に同時に指先を当てた。

 

連「……死柄木が来るぞ。その時、俺の隣に立っていたければ……死ぬ気で、自分たちのルールを創り出せ」

 

連から放たれた白銀のプレッシャーに、三人、そしてエンデヴァーまでもが気圧され、立ち尽くした。

連は彼らを鍛えることで、死柄木という「破壊」に対抗するための「盾」を用意しようとしていた。

 

連「……さて。アンタはどう動く、エンデヴァー。No.1の座が、ただの『標的』にならないことを祈っているぞ」

 

連はそう言い残し、夕闇の中に消えた。

死柄木の「闇」が膨れ上がる中、連は自らの「光」をさらに鋭く研ぎ澄ませ、最終決戦という名の「メインイベント」へのカウントダウンを開始した。

 

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