転生コミュ症水属性魔術師少女は自由気ままに異世界を暮らしたい! 作:守次 奏
「先日、モイの村を竜化した
先日の事件を受けて、ジリオンの街にある冒険者ギルドを全て集め、「
大講堂の壇上に立ったヒースティアナさんが説明している通り、ジリオンの街の近くにあるモイの村まで「
集められた冒険者たちも、男女を問わず心配そうな顔をしていた。
「幸い、先日こちらに赴任されたアッサル・パンジー子爵は有能なお方だ。ご本人は身重であらせられるため、私が代理でこの場に立たせてもらっているが、子爵が派遣された調査部隊がモイの村の水源を遡ったところ、ダダルム山脈にて二種竜化現象の発生が確認された」
ヒースティアナさんの言葉に、冒険者たちだけでなくギルドマスターたちもざわめき立つ。
二種竜化現象。
それは「
「ワイバーン級の竜化個体の発生が予測され、恐らくはジリオンの街に南下してくることは予想できる。そこで、子爵直々の依頼として我々、ジリオンの街に所属する冒険者ギルド総出で二種竜化現象の討伐を行うことが決定された」
ヒースティアナさんが言い放つと、多くの冒険者たちは冗談じゃない、といった様子で苦虫を噛み潰したような顔をする。
「なあ、ヒースティアナさんよぉ。わかってるとは思うんだがよ、俺らはダイナミックボアを倒せるか倒せないかってやつですら一流の集団なんだ。そんなやつらを二種竜化現象のところにぶつけたって、餌になるか、
「貴様、逃げるというのか!? この街の危機を目前にして!」
「ああ、逃げるさ! 命あっての物種だからな! 俺たちはその日暮らしの冒険者なんだ、次の街を探せばいいだけだろ!」
ヒースティアナさんに反発した冒険者の男性が口火を切ったのを皮切りに、多くの冒険者が「死ぬのはごめんだ」と、あるいは「私たちじゃ勝てない」と絶望して、大講堂を去っていく。
それに同調して、多くのギルドマスターたちも同様に立ち上がり、踵を返した。
結局、大講堂に残ったのは私を含めた「燃える彼岸花亭」に所属しているいつもの面子だけだった。
「あ、あはは……もう少し頭数があればなんとかなったかもしれないけどさ、流石にヒースティアナさんとリィル、ラフィーネさんとアンゼリカだけで二種竜化現象を相手にするのは、ちょっと心配だよ……」
ミカエラさんも、困ったように笑っていた。
発生すれば街が一つ滅ぶレベルの「
あるいは、アッサル子爵が増援を派遣してくれるなら希望はあるかもしれないけれど。
「子爵からはなんてメッセージを預かってるの? もちろんあたしは戦うわ、でも勝ち目のない戦いをやって、タダで死ににいくつもりもない」
ガヴリィルさんが、ヒースティアナさんへと問いかけた。
子爵が保有している戦力を派遣してくれるのなら、道中での戦いも多少楽にはなるだろう。
ダメなら、私がなんとかするしかないけど。
「子爵からは可能な限り兵を纏めて増援を送る旨の言伝を預かっているが、恐らく我々に期待されているのは前線の維持だ。合流までの時間は稼ぐ必要があるだろうな」
「絶望的だねぇ。だけど、それを覆してこそ、勇者ラグニカの再来に相応しいともいえるねぇ」
「まさか、ラフィーネ……貴公の妄言が心強く思える日が来るとはな。ともかく、我々四人で前線を支えるのが今回の任務の要旨だ。街を放棄して逃げ出すという選択をとっても構わない」
「嫌よ」
「右に同じだねぇ、愛しのアンゼリカ、きみはどうだい?」
ラフィーネさんは、ヒースティアナさんの後ろに立っていた私を見据えて尋ねてくる。
私だって、気持ちは同じだった。
ジリオンの街は、『燃える彼岸花亭』は、私なんかを受け入れてくれた初めての場所だ。
──だから。
「……たっ、戦いますっ! ど、どこまでできるのか、わ、わからないですけど……っ!」
「それでこそぼくの見込んだ女性だよ、愛しのアンゼリカ。さて、ヒースティアナ、ぼくらはたった四人だけれど、実質的には逃げていった冒険者たちをカバーして余りある。数は問題にならないはずさ」
ラフィーネさんは力強くヒースティアナさんを見据えて、言い放った。
慢心でも増長でもなく、ただ、事実を読み上げるように。
私がそれほどまでに高く買われているのは、なんだか不思議だったけど。
「……そう信じたいものだな。では、時刻は明朝。我々四人が『燃える彼岸花亭』を通してパンジー子爵からの依頼を受注したものとする。これに異存はないな!?」
『おーっ!』
声を合わせて、私たちはヒースティアナさんの言葉に答えを返した。
この戦いが、きっとジリオンの街の未来を分ける決戦になる。
今回の「
「では、解散! 各自、決戦に向けて英気を養ってくれ!」
ヒースティアナさんの号令に従う形で、ガヴリィルさんとラフィーネさんは大講堂を後にした。
私も後に続こうかと思って、踵を返したときだった。
くいくい、とローブの裾が引っ張られる感覚があって、思わず振り向いてしまう。
「ねえ、アンゼリカ。この街を守ってくれるのはとっても嬉しいんだ。でも……無理、してないよね?」
いつの間にか私の後ろに立っていたミカエラさんが、少し困ったような笑顔で問いかけてくる。
「……あっその、えっと、だ、大丈夫です」
「……そっか。ダメだなぁ、わたし。アンゼリカやリィルたちがもしも帰ってこなかったらどうしようって、つい心配しちゃう」
「……ミカエラさん」
「だから、必ず帰ってきて。わたしの思い過ごしだったって、笑い話にしてね。アンゼリカ!」
「……はっ、はい!」
ミカエラさんはきっと、私たちのことを心から心配してくれているのだろう。
側から見れば、この戦いは無謀も無謀なのだから、仕方ないけど。
でも、答えたからには、応えなければいけない。
私たちは、私は、帰ってくる。
いつものように、『燃える彼岸花亭』に、ミカエラさんのところに。
そうして、いつものようにお風呂に入って、他愛もない言葉を交わすんだ。