東雲家次女の日常   作:白雪琉衣

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神話になった姉妹——レンズ越しにこぼれた秘め事

東雲家のベランダ。夕暮れ時、空が淡い紫に染まる一瞬のこと。

夕食の準備を終え、ふと遠くの空を見つめていた星名。その横顔は、肌を透かす夕陽のせいか、まるで淡い水彩画のように儚く、今にも夜の風に溶けて消えてしまいそうだった。

部屋に戻ろうとした絵名は、そのあまりの「透明感」に足を止める。

気づけばカメラを構え、妹の肩にそっと顎を乗せていた。驚いて振り返る星名。その瞬間、絵名は自分でも驚くほど柔らかい、慈しむような笑顔を浮かべていた。

1. 投稿:夜のタイムラインに走る衝撃

その夜、絵名がアップした一枚の写真が、爆発的な勢いで拡散された。

@enanan_25 「ときどき、儚すぎて見えなくなっちゃいそうになる。……ずっと、私の隣にいてね」

そこには、これまでの「えななん」の自撮りとは全く違う世界があった。

消えてしまいそうなほど繊細で美しい星名と、その妹を世界から隠すように、そして愛おしむように寄り添う絵名。

2. ネット上の反応(モブの声)

リプライ欄と引用RTは、瞬く間に阿鼻叫喚の嵐となった。

• 「待って……この美少女誰!? えななんの妹!? 透明感で画面が割れる」

• 「えななんのこんなに柔らかい表情、初めて見た……。妹さん、生身の人間? 妖精か何かの間違いじゃないの?」

• 「儚すぎて直視できない。触れたら消えちゃいそう。これが東雲家の隠し玉か……」

• 「ツーショットっていうか、もうこれ宗教画でしょ。美術館に飾るべき」

• 「昨日までえななんを推してたけど、今日からは東雲姉妹推しになります。尊すぎて無理」

トレンドには「#東雲姉妹」「#透明感の化身」といったワードが並び、絵名のフォロワー数は数時間で数万人跳ね上がった。

3. 神高1年B組の騒然とした朝

翌朝、神山高校。1年B組の教室は、登校時から異様な熱気に包まれていた。

星名が教室に入った瞬間、あちこちから視線が突き刺さり、ざわざわと囁き声が広がる。

「……おい、見たか? 昨日のやつ」

「本物だ……。実物はもっと、こう、空気が澄んで見えるんだけど」

「声かけていいのかな? 壊しちゃいそうで怖いんだけど」

クラスメイトたちが遠巻きに見守る中、同じB組の冬弥が静かに立ち上がり、星名の席へ向かった。

「星名さん。……昨夜の写真は、芸術と呼ぶにふさわしいものだった。クラスメイトが君を直視できなくてに困っている」

「冬弥くん……。あはは、お姉ちゃんが急に撮るって言い出したから、少し恥ずかしいんだけどな」

星名が困ったように微笑むと、その微かな「生身の可愛さ」に、周囲のモブ男子たちが一斉に胸を押さえて沈没した。

「……星名、今日はちゃんと実体があるよね?」

寧々も少し怯えながら近寄ってくる。

「あの写真、本当に消えちゃいそうで……私、何度も確認しちゃった」

4. 結末:守護者たちの沈黙と決意

放課後。C組の彰人がB組の入り口に立っていた。

廊下では、星名を一目見ようとする他クラスのモブたちが列を作っていたが、彰人の放つ「近づく奴は殺す」という圧倒的な威圧感に、誰も近寄れない。

「……おい、星名。帰るぞ」

「あ、彰人。お疲れ様。……なんだか今日、みんなにすごく見られちゃって」

「……当たり前だ。あの絵名のバカ……」

彰人は苦々しく呟きながらも、妹の前に立って周囲の視線を遮るように歩き出す。

ネットでどんなに神格化されようと、どんなに「儚い」と騒がれようと。

彰人にとって、そして絵名にとって、星名は誰よりも温かく、美味しいご飯を作って自分たちの帰りを待っていてくれる、かけがえのない「家族」なのだ。

夕暮れの校門。

星名は双子の兄の袖を少しだけ掴み、「今日の夕飯、何がいい?」といつもの穏やかな声で問いかける。

その声こそが、彼女がこの世界に確かに存在していることを告げる、一番優しい旋律だった。

  その後のエピソード

• モブの聖地巡礼: 写真の背景に写っていた東雲家のベランダの柵の形から、場所を特定しようとする猛者が現れたが、彰人と冬弥が(それぞれのルートで)情報を遮断した。

• 絵名のスマホ: 通知が止まらず、結局通知をオフにした絵名。「セナの良さが広まるのはいいけど、変な奴に狙われるのは許さない」と、家中の戸締まりを強化した。

• 1年B組の誓い: B組のクラスメイトたちは、いつの間にか「東雲さんを守る会」を結成。他クラスからの偵察を全力で追い払うのがB組の日常となった。

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