東雲家次女の日常   作:白雪琉衣

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鏡合わせの双子星

東雲家の双子、彰人と星名。性格も得意なことも違うようでいて、その根底には双子ならではの「共鳴」が流れています。

1. 言葉のいらないシンクロ

ある日の夕食時、二人は同時に手を伸ばし、一つの皿の上の最後の一つを掴もうとした。

「……あ」

「……あ」

二人が同時に手を引くと、今度は同時に醤油差しに手を伸ばす。

「「……先、いいぞ(いいよ)」」

ハモった声に、横で見ていた絵名が「……またやってる。あんたたち、気味悪いわよ」と呆れ顔でパフェを掬う。

彰人と星名は顔を見合わせ、ふいっと視線を逸らした。

「……別に、狙ったわけじゃねぇよ」

「……うん。ただ、今ここにあるのが一番いいかなって思っただけ」

思考のプロセスが同じ。あるいは、同じリズムで空気を吸っている。

二人は否定するが、その直後、二人は全く同じタイミングで麦茶を飲み干した。

2. 「痛み」の共鳴

神山高校の放課後。星名が家庭科室で調理中、うっかり包丁で指先を少しだけ切ってしまった。

「……っ、痛い……」

その瞬間、別の教室で冬弥と話をしていた彰人が、唐突に自分の指先を押さえて顔を顰めた。

「……彰人? どうしたんだ、急に」

「……いや、分からねぇ。……けど、今、なんか……左手の先が、熱いっていうか……」

嫌な予感がした彰人が、冬弥の制止も聞かずに廊下へ飛び出す。

家庭科室へ駆け込むと、そこには絆創膏を探している星名がいた。

「星名! 指、どうした!」

「えっ、彰人? ……どうしてここが分かったの? ……あ、ちょっと切っちゃっただけだよ。……もしかして……また?」

「……チッ。……痛くねぇよ。お前こそ、気をつけろっつっただろ」

彰人は自分の指に残る「残痛」を無視して、星名の傷口を乱暴に、けれど誰よりも丁寧に手当した。

3. 幼少期の「ふたりだけの言語」

東雲家の古いアルバムには、まだ幼い二人が額を突き合わせて、何事かぶつぶつと話している写真がある。

大人たちには「うー」「あー」という喃語にしか聞こえなかったが、二人は完璧に会話を成立させていた。

「ねえ、彰人。あの時、何をお話ししてたか覚えてる?」

「……覚えてねぇよ。ガキの頃の話だろ」

けれど、彰人は本当は覚えている。

世界がまだ自分と星名だけで完結していた頃。

「セナ、こっち」「アキ、あっち」

ただそれだけで、暗闇も、知らない大人も、何も怖くなかった。

今でも、彰人がステージで窮地に立たされた時、観客席に星名がいれば、彼女が何を思っているか、どう応援しているかが、声を聞かずとも心に直接流れ込んでくる。

4. 逆転する守護者

「彰人、今日は雨が降るから、折り畳み傘持って行って」

「……予報は晴れだ。いらねぇよ」

そう言って出かけた彰人だったが、放課後、予報を裏切る土砂降りになった。

「……アイツ、またかよ」

彰人が校門で呆然としていると、星名が二本の傘を持って歩いてきた。

「……だから言ったのに。……はい、彰人」

「……お前、予知能力でもあるんじゃねぇのか」

「ふふ、違うよ。……彰人の肩が、朝ちょっとだけ『雨の匂い』がしただけ」

彰人が風邪を引きそうな時は星名が気づき、星名が「消えてしまいそう」な時は彰人が真っ先に縋り付く。

双子という、魂を半分ずつ分け合って生まれた存在。

彼らにとって、相手の異変に気づくことは、自分の呼吸の乱れに気づくことと同じくらい、当たり前で、不可避なことだった。

  双子ならではの特性メモ

• パーソナルスペース: 他人が入ると不快に感じる距離でも、双子同士だと無意識に許容している。

• 贈り物のシンクロ: 誕生日に、二人が全く同じコンセプト(あるいは対になるデザイン)のプレゼントを互いに用意してしまい、絵名に爆笑されるのが恒例。

• 彰人の本音: 星名が「儚い」と言われるたび、彰人は「俺が半分持ってるんだから、こいつが消える時は俺も一緒だ」と無意識に思っている(それは星名も同じ)。

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