冬の朝、いつもなら朝食の準備をしてくれているはずの星名が起きてこない。
不審に思った絵名が部屋を覗くと、そこには頬を赤く染め、荒い息をつく星名がいた。
「……セナ!? ちょっと、大丈夫!?」
「あ……お姉ちゃん……。ごめんね、なんだか、体が重くて……」
体温計の数字は38.2度。絵名のスイッチが入った。
1. 完璧な看病環境の構築
「彰人! セナが風邪引いたわよ! あんたはさっさと学校行って、帰りにゼリーとポカリスエットと、あとセナが食べられそうな柔らかいもの全部買ってきなさい!」
登校前の彰人を怒鳴り散らして追い出すと、絵名はエプロンを締め直した(自分の格好も可愛く整えるのは忘れない)。
「いい、セナ。今日一日は、お姉ちゃんの言うことを全部聞くこと。いいわね?」
「うん……ありがとう、お姉ちゃん……」
潤んだ瞳で見上げられ、絵名の胸に「可愛い!!」という衝撃が走る。まずは冷えピタを貼るのだが、ただ貼るだけでは芸がない。
「……よし、この角度。少しおでこが出てる感じが最高に庇護欲をそそるわ……」
看病の合間に、こっそりスマホで「弱り顔のミューズ」を連写する絵名だった。
2. 「あーん」の強制イベント
お昼時。絵名はキッチンで、星名のためにリンゴをすり下ろし、出汁の効いたお粥を作った。
「セナ、お粥持ってきたわよ。はい、あーんして」
「あ、自分で食べられるよ……?」
「ダメ。あんたは病人なんだから、余計な体力を使っちゃいけません。ほら、あーん」
結局、絵名の勢いに押された星名は、されるがままにお粥を口に運ばれる。
「美味しい……お姉ちゃん、お料理上手だね」
「ふふん、当然でしょ。セナのためなんだから」
星名が一口食べるごとに、絵名の心拍数は跳ね上がる。少し熱に浮かされた妹が、自分の差し出すスプーンを健気に待つ姿。絵名にとって、これはどんな最高級のスイーツよりも甘い光景だった。
3. 着せ替えと保湿の儀式
「汗かいちゃったでしょ。パジャマ、着替えさせるわね」
絵名が持ってきたのは、肌触りが最高に良い、淡いピンク色の新しいパジャマ。
「これ、セナのために買っておいたのよ。絶対に似合うと思って」
「……お姉ちゃん……」
「病人は心から癒やされないとダメなんだから」
着替えを手伝い、仕上げに星名の乾燥した唇にリップクリームを塗ってあげる。至近距離で見つめる星名の顔。熱のせいか、いつもよりさらに「消えてしまいそうな透明感」が増している。
絵名は思わず、星名の額に自分の額をぴたっとくっつけた。
「お、お姉ちゃん……?」
「……熱、まだあるわね。……いい、セナ。あんたが治るまで、お姉ちゃんはずっとここにいるから。あんたがどっか行っちゃわないように、ずっと見ててあげるから」
4. 彰人の帰宅と「聖域」の攻防
夕方、大量の買い出し袋を下げて彰人が帰宅した。
「おい、星名の様子はどうだ。……って、何してんだよ」
寝室では、星名を抱き枕のように抱きしめたまま、一緒に添い寝してスマホで動画を見せている絵名がいた。
「……静かにしなさいよ。今、セナが寝入ったところなんだから」
「お前、看病っつって自分が一番楽しんでるだろ」
「失礼ね! セナが『お姉ちゃんの匂いがすると安心する』って言ったのよ!(※絵名の妄想)」
結局、その夜は絵名が星名のベッドを占領した。
翌朝、星名の熱が下がった時、真っ先に「お姉ちゃんのおかげだね!」と抱きつかれた絵名は、世界で一番幸せなシスコンとして、その日一日中上機嫌で絵を描き続けたという。
その後の絵名のSNS
• 投稿内容: 「妹が風邪引いちゃって……。看病大変だったけど、元気になってよかったꔛෆ」
• 画像: 自分の指と、星名の指が絡まり合っているエモーショナルな一枚。
• フォロワーの反応: 「えななん、いいお姉ちゃんすぎる」「指だけで伝わる美少女感」
• 絵名の本音: (ふふん、セナの寝顔写真は私だけの宝物だから、絶対に見せてあげないけどね!)