「お姉ちゃん、おはよう! 熱、もうすっかり下がったよ」
翌朝、キッチンから元気な声が響く。絵名が眠い目を擦りながらリビングへ向かうと、そこにはエプロン姿でやる気満々の星名が立っていた。
「……セナ、無理しちゃダメよ? まだ病み上がりなんだから」
「大丈夫だよ。お姉ちゃんが一生懸命看病してくれたおかげだもん。だから今日はね……『お姉ちゃん感謝デー』! お姉ちゃんの好きなもの、私が全部作るね」
そう言って星名が差し出した「メニュー表」には、絵名の大好物がずらりと並んでいた。
1. 朝の至福:とろけるパンケーキ・タワー
朝食は、絵名がSNSで「これ食べてみたい」と呟いていたお店の再現メニュー。
厚焼きのふわふわパンケーキに、たっぷりのホイップクリームと色とりどりのベリーが添えられている。
「はい、お姉ちゃん。召し上がれ!」
「……っ、ちょっと、何これ!? お店より可愛くない!? セナ、天才なの?」
絵名は即座にスマホを取り出し、最高のアングルで撮影を開始する。
「お姉ちゃん、冷めないうちに食べて? はい、あーん」
今度は立場が逆転し、星名から「あーん」をされる絵名。
「……美味しい……。セナの愛が隠し味ね。これ、一生食べ続けられるわ……」
2. 昼のサプライズ:特製レアチーズケーキ
昼下がり、絵名が自室で作業をしていると、星名が冷たいデザートを運んできた。
絵名が大好きな、濃厚だけど後味さっぱりのレアチーズケーキだ。
「作業の合間に食べてね。お姉ちゃん、頑張りすぎちゃうから」
星名は絵名の隣に座り、彼女が描いている絵をじっと見つめる。
「お姉ちゃんの絵、やっぱり大好き。……私を看病してくれた時の、優しい色が残ってる気がする」
「……もう、セナったら。あんたのせいよ、変なインスピレーションばっかり湧いてくるんだから」
絵名は照れ隠しにケーキを口に運ぶが、その顔は幸福感でとろけきっていた。
3. 夜のメイン:チーズたっぷり特製煮込みハンバーグ
夕食は、東雲家の食卓に漂う最高に食欲をそそる匂いで始まった。
彰人が帰宅し、エプロン姿の妹と、鼻歌を歌いながら自撮りをしている姉を見て察する。
「……なんだ、今日はセナの快気祝いか?」
「違うわよ、彰人。今日は『お姉ちゃん感謝デー』! あんたはついでよ、ついで!」
食卓に並んだのは、ナイフを入れた瞬間に肉汁とチーズが溢れ出す煮込みハンバーグ。
「お姉ちゃん、いつも私のこと守ってくれてありがとう。これからも、ずっと大好きだよ」
星名の真っ直ぐな言葉に、絵名はついに耐えきれず、フォークを持ったまま泣き出した。
「……セナぁ……! あんた、本当にいい子ね……! 私、あんたのためなら何でも描けるわ。一生あんたの専属絵師になってあげるからね……!!」
4. 結末:一番星の特等席
夜、お風呂上がりの絵名がリビングで寛いでいると、星名が後ろに回って彼女の髪を乾かし始めた。
「お姉ちゃんの髪、さらさらで綺麗。……いつもおしゃれに気を使ってるお姉ちゃん、かっこいいよ」
「……セナに言われるのが、一番嬉しいわ」
ドライヤーの温かい風と、妹の優しい指先。
絵名は、世界中の「いいね」を集めるよりも、今こうして星名に甘やかされているこの瞬間が、何よりも価値のあるものだと確信していた。
「ねえ、セナ。明日からは『セナを甘やかすデー』に戻るから。覚悟しなさいよ?」
「ふふ、楽しみにしてるね、お姉ちゃん」
窓の外には綺麗な星空。
東雲家の家の中には、外の星よりもずっと温かくて眩しい、二人の「一番星」が輝いていた。
感謝デーの裏側
• 彰人の本音: 「ついで」と言われつつ、自分もしっかり星名の美味い飯にありつけたので、実は満足している。
• 絵名の保存用フォルダ: この日一日で撮り溜めた星名の写真は200枚を超えた。「お姉ちゃんを想って料理するセナ」という限定フォルダが作成された。
• 星名の日記: 「お姉ちゃんが喜んでくれてよかった。お姉ちゃんが笑ってくれると、私もここにいていいんだって、すごく安心する。明日も、明後日も、美味しいもの作ろう」