「WEEKEND GARAGE」の片隅。
そこには、この世の全ての汚れを浄化するかのような、あまりにも純粋な空間が生まれていた。
1. 遭遇、そして語彙力の喪失
「お、お疲れ様……って、えええええええええ!?」
店に入ってきた杏の視界に飛び込んできたのは、一つの椅子に寄り添うように座って、一つのパフェを分け合っている星名とこはねだった。
星名がスプーンで掬ったクリームを、「はい、こはねちゃん」とこはねの口元へ運ぶ。
こはねは頬を林檎のように赤くして、「あ、ありがとうございます……あむっ」と小さく口を開ける。
星名はそれを見て、「ふふ、可愛いね」と、春の陽だまりのような微笑みを浮かべた。
「(……ッッッッッ!!!!!!)」
杏は声にならない絶叫を上げ、壁に背中を預けてズルズルと崩れ落ちた。
「おい杏、どうした」
彰人が怪訝そうに声をかけるが、杏の耳には届かない。
「……無理。……尊い。何あの空間、マイナスイオン出すぎじゃない? 絶滅危惧種の保護施設かなんかなの? ……神様、生きててよかった……」
2. シャッターチャンス(命懸け)
「杏ちゃん、大丈夫? 顔がすごく赤いけど……」
心配したこはねが、トコトコと駆け寄ってくる。
その後ろには、透き通るような肌をさらに白く輝かせた星名が、心配そうに首を傾げている。
「あ、杏ちゃん、お熱あるの? 私、冷たいおしぼり持ってくるね」
星名がそっと杏の額に手を当てた瞬間、杏の脳内で何かがショートした。
「……ッっっぶない!!! 今、一瞬天国が見えた!!! 待って、二人ともそのまま!! 動かないで!!」
杏は電光石火の速さでスマホを構えた。
「こはね! そのまま星名の袖をちょっとだけギュッてして! そう、それ!! 星名はこはねの頭を撫でる感じで!! ああ、もうダメ、画面が眩しくて見えない……ッ!!」
3. 限界オタクの独白
その夜、杏は瑞希にビデオ通話を繋ぎ、今日撮った写真を画面共有しながら熱弁を振るっていた。
「聞いて瑞希、本当にすごかったんだから!! 星名のあの、触れたら溶けちゃいそうな透明感と、こはねのあの小動物的な可愛さ!! これ、混ぜたら宇宙が誕生するレベルの『究極の癒やし』だよ!!」
『あはは、杏落ち着いてよ。でもわかる〜、星名ちゃんの横に可愛い子置くと、相乗効果で大変なことになるよね』
「そう、それ!! 瑞希、わかってるじゃん!! 私、もう二人の専属カメラマンになりたい。二人がただ隣で寝てるだけの写真集、自費出版したい。……ああ、思い出すだけで視力が回復してきた気がする……」
4. 彰人の冷ややかな視線
翌日、学校で杏が星名に「ねえ星名、今日も放課後こはねと一緒にカフェ来ない!?」と詰め寄っているのを、彰人が引き剥がした。
「おい杏、うちの妹をあんまり困らせるなよ。あとこはねをオタクの餌食にするのもやめろ」
「餌食じゃないわよ! 崇拝してるの!! 彰人にはわからないの!? この二人が並ぶことで生まれる『世界の救済』が!!」
「知るか。……っていうか、お前昨日からその写真、待ち受けにしてんのかよ」
彰人が呆れて指差した杏のスマホ画面には、夕陽の中で互いの髪を整え合う、この世のものとは思えないほど美しい星名とこはねの姿があった。
「当たり前でしょ。これが私の『命の輝き』なんだから!!」
杏ちゃんの限界オタク・メモ
• スマホ容量: 二人のツーショットだけで3GBを突破。「消せる写真なんて一枚もない!」とクラウド容量を追加購入した。
• 癒やし中毒: 練習で疲れた時は、二人の写真を見て「よし、頑張れる」と自分を奮い立たせている。