東雲家次女の日常   作:白雪琉衣

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一番星を彩る三つの太陽——深呼吸できる場所

夕暮れ時のテラス席。星名は、賑やかに笑い合う咲希、えむ、瑞希を眺めながら、自分の中に静かに渦巻く思考に沈んでいました。

(……私、今日のみんなの服に合わせて、この色を選んでよかったかな。……さっきのあの一言、誰かを傷つけてなかったかな……)

INFJの彼女は、放っておくとすぐに自分の内側へ潜り込んでしまいます。調和を重んじるあまり、自分の感情の置き場所を見失いそうになる――そんな彼女の「心の曇り」を、3人の太陽は逃しません。

1. 思考の迷路から連れ出す手

「星名ちゃん、また難しい顔して自分を反省会にかけてるでしょ?」

瑞希がストローをくわえたまま、いたずらっぽく笑いました。

「え、あ……。……そんなこと、ないよ……っ」

「ううん、わかるよ! せーちゃん、さっきからパンケーキのクリームが溶けちゃうくらい、ずっと考え事してたもん!」

咲希が身を乗り出して、星名の頬を指先でぷにっと突つきました。

「ダメだよー! 今は、美味しいねって笑う時間なんだから!」

2. 「わんだほーい」という魔法

星名の悩みは、いつも複雑で深くて、出口が見えにくいもの。けれど、えむはその迷路を一瞬で跳び越えてきます。

「星名ちゃん! 難しいことは、わんだほーい! でポイしちゃおう!」

えむが大きく手を広げてポーズを決めると、そのあまりの勢いと無邪気さに、星名は「ふふ……っ」と小さく吹き出してしまいました。

「……そうだね。……私、また考えすぎてた。……みんなと一緒にいると、……重たいものが、軽くなる気がする」

星名の言葉は本音でした。複雑な感情や他者の動機を深読みしてしまう彼女にとって、裏表のない3人の明るさは、何よりも安心できる「光」なのです。

3. 溶け出す笑顔と、本当の強み

3人に促され、星名は自分の一番食べたかったイチゴのパンケーキを口に運びました。

「……美味しい。……すごく、甘いね」

その瞬間、星名の表情に劇的な変化が訪れます。

いつもの「今にも消えてしまいそうな儚さ」が、友人たちの熱量に溶かされて、春の陽だまりのような温かい笑顔に変わりました。

一人の時に見せるミステリアスな美少女の顔はどこへやら。そこには、大好きな友達に囲まれて、心からリラックスしている一人の少女がいました。

「……私。……みんなのこういう、真っ直ぐなところ……尊敬してるよ。……私にないものを、たくさん持ってるから」

「何言ってるのさ。ボクたちの方こそ、星名ちゃんのその深い優しさに、いつも救われてるんだから」

瑞希の言葉に、咲希とえむも大きく頷きます。

星名が持つ「人の痛みを自分のことのように感じる力」は、3人にとってもかけがえのない宝物なのです。

  その後のエピソード

• 星名のスマホのフォルダ:

今日撮った4人の自撮り写真。星名は、自分がこんなに楽しそうに笑っているのを初めて見た気がして、何度もその画面を見返しました。

• 咲希のメッセージ:

「星名ちゃん、また考えすぎたらすぐに呼んでね! アタシがどこへでも飛んでいくから!」というメッセージに、星名は「ありがとう」と、今度は迷わずに返信しました。

• 東雲家の食卓:

帰宅した星名が、自分から「パンケーキ、美味しかった」と報告するのを見て、彰人と絵名は顔を見合わせ、「……あいつら、いい仕事してんじゃねぇか」と珍しく意見が一致したのでした。

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