東雲家次女の日常   作:白雪琉衣

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一番星のステージ——孤高の低音と、無垢な旋律の邂逅

Leo/needの練習が終わったスタジオ。静寂を破ったのは、ベースを肩にかけたままの志歩による、祈るような「勧誘」だった。

1. 志歩の「音楽的執着」

「……東雲さん、お願い。あなたの声が必要なの」

志歩の瞳は、これまでに見たことがないほど鋭く、そして熱い。

「あなたの歌には、風景がある。聴いた瞬間に、見たこともない場所へ連れて行かれるような……そんな感覚。レオニが次に目指すステージには、その『景色』が絶対に必要なの」

星名は驚いて、少しだけ首をかしげた。

「私が歌うことで、志歩ちゃんの音楽が完成するの……?」

「完成どころじゃない。塗り替えられるわ。一曲だけでいい。私たちのゲストボーカルとして、力を貸して」

志歩は星名の両手を力強く握りしめた。プロを目指す志歩にとって、これは妥協のない「本気」のスカウトだった。

2. 兄、彰人の葛藤と乱入

「……ちょっと待てよ。勝手に話を進めるな」

スタジオのドアを乱暴に開けて入ってきたのは、星名を迎えに来た彰人だった。

廊下で志歩の必死な訴えを聞き、我慢できずに飛び出してきたのだ。

「日野森。お前の熱意はわかるが、セナは『こっち側』の人間じゃねぇ。お前らが背負ってるものの重さを、こいつにいきなり背負わせるつもりか?」

彰人は星名を背中に隠すようにして、志歩を睨みつけた。

星名の歌声が「本物」であることを、誰よりも知っているのは彰人だ。だからこそ、その才能が消費され、妹の穏やかな日常が音楽という修羅場に汚されることを、兄として恐れていた。

「東雲くん。……わかってる。でも、東雲さんの声は、ただ隠しておくには美しすぎるわ」

「美しすぎるから、守らなきゃならねぇんだろうが!」

3. 星名の静かな「意志」

「彰人、大丈夫だよ」

星名が後ろから彰人のシャツの裾をそっと引いた。

「志歩ちゃんの言葉ね、すごく真っ直ぐだった。……私、料理を作る時もお姉ちゃんや彰人が喜んでくれる顔を想像する。絵を描く時も、咲希ちゃんに綺麗な景色を見せてあげたいって思う。……歌も、同じかもしれない」

星名は彰人の隣に並び、志歩を見つめた。

「志歩ちゃんが、私の声で『新しい景色』が見えるって言ってくれるなら……私、その景色を一緒に作ってみたい。彰人が歌うことで誰かを勇気付けてるみたいに、私もやってみたいんだ」

「……セナ。お前……」

彰人は言葉を失った。妹が自分の意志で「表現者」としての一歩を踏み出そうとしている。その瞳の輝きは、もはや兄の過保護で遮れるものではなかった。

4. 結末:決意の握手

「…………。ハァ……。分かったよ。お前がそう言うなら、俺はもう止めねぇ」

彰人は深く溜息をつき、頭を掻いた。

「その代わり、日野森。セナに無理をさせたり、少しでもあいつが辛そうな顔をしたら……その時は、俺がステージから引きずり下ろすからな。覚悟しとけ」

「……ええ。最高の景色を見せるわ。約束する」

志歩は力強く頷き、星名の手を再び握った。

咲希が「せーちゃん、かっこいい……!」と瞳を潤ませ、一歌と穂波も覚悟を決めたように微笑む。

東雲家の「料理・風景画の天才」が、ついにレオニという翼を得て、音楽の空へと飛び立つ準備が整った。

  練習開始の風景

• 星名の順応: 志歩の重厚なベースラインに、星名の透明な声が乗った瞬間、スタジオ全体の空気が「見たこともない深い森」のようになった。志歩は鳥肌が立つのを隠せなかった。

• 咲希の喜び: 「せーちゃんと一緒にステージに立てるなんて、夢みたい!」と、誰よりも張り切ってキーボードを奏でている。

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