もう一度、生きたいと思えるように。   作:紅葉555

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夕暮れを過ぎても

とりとめのない無駄話

出会った頃から

ずっと変わらない

鼻にかかる声


全く身にならない日々

 

 人と関わりたくない。

 

 これが14歳にして俺がたどり着いた答えだった。

 

 別に格好をつけている訳じゃないし、漫画やゲームに影響を受けて真似をしている訳でもない。

 

 ただ、ただ本当に人と触れ合う事が嫌いになった。

 

 昔から喧嘩の強かった俺は、虐められてる友達や理不尽に攻撃されているクラスメイトを見つけるといても立ってもいられなかった。

 

 それは力を持っていた人間のエゴ。守ってやりたいと思い込む傲慢。それらは、まだ幼かった俺の心には強すぎる毒で、無責任な正義感へと変わっていた。

 

 その結果。俺は大切な友達を失った。

 

 だからもう懲りた。友達も要らない。目立ちたくもない。偽善も奮わない。

 

 1人が楽だから。

 

 もう。

 

 傷つかなくて良いから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一星大学に行くぅ!?」

 

「別にそんな驚くことじゃなくない?」

 

 自分の進路について親と話していると、えらく驚かれたのを覚えている。

 

 まぁ……確かにこの家からの距離を考えたら少しは驚かれるかもしれないけど。

 

 専門的な分野の学問を学びたいとかでもなく、親戚が近くに住んでいる、なんて事でもない。ただぼんやりと将来を決めずに、ただこの地域から離れたかっただけだったから。

 

 なんてったって俺の住んでるこの場所は九州だし。

 

 そんな無茶を言っても、快く快諾してくれた両親には感謝してる。一人暮らしをする為の環境も整えてくれたし、仕送りだって送ってくれた。

 

 応援してくれている心が十分に伝わってくる。

 

 この心一つあれば人生問題ないと思っていた。一人暮らしでもやっていけると。

 

「お〜い〜! 早く出てこ〜い〜!!」

 

「…………」

 

 誰も俺を知らない土地にやってきたはずなのに、なんでこんなに聞き覚えのある声が聞こえてくるのだろう。

 

 いや、その答えはとっくに判明しているのだけれど……

 

 とにかく俺は、一人になる事にまた失敗したみたいだ。

 

「え? なに? もしかしてうんこ? お腹痛かったの?」

 

 順番が逆だろう。普通はお腹痛かったかを聞くのが最初だろ。

 

 というかまず女の子がうんことか言うな。

 

「あ、やっと出てきた! なにさ、なんで返事の一つも返さないわけ?」

 

 玄関の扉を開けると、朝から無駄に元気でよく脳に響く声をした幼馴染がそこに立っていた。

 

「まぁいいや! とにかく早く行くよ! 入学式から遅刻なんて私したくないからね!」

 

 そう言って俺の手を掴み引っ張る彼女からは、白梅香の香りがした。

 

「香水……?」

 

 艶やかな長い黒髪から香るその心地良さに、つい言葉を漏らしてしまう。

 

「ん? な〜に〜? 私がこういうのつけてたら可笑しい?」

 

「いや、良いと思う」

 

「だったらいちいちそんな事言わないの」

 

 どうやら過剰に反応しない方が良かったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても多いねぇ……人が」

 

 なんで倒置法なんだ。

 

「友達から聞いてたけど、いざ目にするとなんか嫌だね。まるでアリだよアリ」

 

 思っても言うなよ。

 

「友達から聞いた……? お前もう友達がいんの?」

 

「え? いるよ? そもそも私のおばあちゃん家はこの辺だし。この間久しぶりにきーちゃんに会ったんだけど可愛くなっててさ〜! スタイルなんかすっごく良くてもう彼氏までいるんだって!」

 

「いや俺そのきーちゃんを知らないし……」

 

 この幼馴染である“梁芦 白音(はりあししらね)”はその明るい性格から昔から友達を作るのが上手かった。

 

 それでいて誰に対しても分け隔てなく接し、俺みたいな捻くれ者にもこうして声をかけてくる異端児。

 

 そのせいでよく周りの男子からは勘違いをされ、告白されては玉砕する……なんて事態が後を絶たなかった。

 

 偶然ではあるけれど、今の俺にとっては唯一、友と呼べる奴なのかもしれない。

 

「今度紹介してやるよっ! って……ねぇ蓮太、あっち」

 

 そうして梁芦が指を指す先には、コイツと同じ様に長い黒髪が似合う顔の整った綺麗な女の子が歩いていた。

 

 胸はそんなに大きくない。

 

「……あの子がどうかしたのか?」

 

「え? 蓮太知らないの? あの子“四季さん”だよ! 入試の時からもっぱらの人気の! ……ほら、男子たちがコソコソ見てる」

 

 確かに周りをよく見るとチャラついた髪の奴から眼鏡をかけた見るからに根暗そうな奴まで、幅広い男共が彼女の後を視線で追っていた。

 

 よく見ると先輩であろう奴らも嫌な目をして見つめている。

 

「噂によると早速2人の男が玉砕されちゃったらしいよ。怖いねぇ〜……この若さ」

 

 梁芦が何かのモノマネをして話しているのを軽く無視して、俺も彼女に目線を向ける。

 

 ……確かに綺麗だ。可愛いってよりも美しいと言った方が表現としては合っているだろう。

 

 でも彼女はそんな目線をとことん無視して歩いている。

 

 もう慣れたものなのだろうか。

 

「蓮太も気をつけなよ? 敗れた恋心ってのは自分を殺してしまうからね」

 

「なんで俺が告白する前提なんだよ」

 

 確かに綺麗だとは思うが……彼女なんて考えられない。自分の事で精一杯なんだ、そんな事に時間を割いている場合じゃない。

 

「それにしてもこの大学、7匹くらい蝶々が飛んでるんだけど……」

 

無視かよ。

 

「またそれか……漫画の読みすぎにも注意した方が良いぞ?」

 

 梁芦は昔からそんなことを言い続けるおかしな奴でもあった。

 

 コイツが言うには、たまに青い蝶々が人の周りを飛んでいて、その人は大体疲れていたり悩みを抱えていたりしているらしい。

 

 勿論、そんなもの俺には全く見えない。ついでに言うと俺は吸血鬼だとか魔女だとか獣人だとか幽霊だとか死神だとか天使だとか、そんな非現実的なモノは一切信じていない。

 

 もっと言えば占いもだ。

 

「だーかーらー! 嘘じゃないんだってば! 本当に蝶々が飛んでるの!」

 

「はいはい」

 

「ちょっと! 私を置いて先行くなってば!」

 

 いつもの戯言を零す梁芦を後に、俺はスタスタと目的の場所へ歩いて行った。

 

 

 

 

 

 この、約1年後。俺は非現実的な存在を否定できなくなる。

 





ここ2~3年ずっと見てます。
4人面白いです。

ヒロインって誰が好きですか?(ただ気になっただけです)

  • 死神さん
  • 撃墜王さん
  • カロリー0さん
  • 日焼け跡がエロくて可愛いドエロ谷さん
  • 即落ち2コマお姉ちゃん
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