乙女たちの戦記~艦魂~(架空戦記)   作:高島智明

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1942年”5月”

 

運命の5分間。

後世の戦記では、そうも呼ばれる。

太平洋戦争に於ける日本海軍の勝勢が、まさに数分間のうちに覆ったとさえみえる逆転劇だった。

 

ミッドウェー海戦に参加していた日本軍の航空母艦”6隻”中の3隻が、アメリカ軍の急降下爆撃隊の攻撃で被弾し、しかも発信準備中の攻撃隊の誘爆で大火災を起こしたのである………。

 

……。

 

…当初、ミッドウェー攻略に先行して珊瑚海に臨むポートモレスビーが攻略される予定だったが、その順序が入れ替えられ、ミッドウェーを空母機動部隊の全力投入で、先行して攻略することに成った。

この為、珊瑚海での日米空母の衝突は起こらず、ミッドウェー海戦は日本空母6隻に対するアメリカ空母4隻の対決に成ったのだ………。

 

……。

 

…空母「飛竜」に座乗する提督、山口多聞は宣言した。

「我、航空戦の指揮を取る」

空母「瑞鶴」の艦長、大神一郎海軍大佐は其の信号を受けて「瑞鶴」を「飛竜」に続行させ、攻撃隊を発進させた………。

 

……。

 

…ミッドウェー海戦は日米双方が4隻ずつの空母を失い、日本側には2隻の空母が残って島も攻略され、日本側の辛勝に終わった。

日本側に残った空母「瑞鶴」「飛竜」と、アメリカ側の不参加だった2隻の空母は、この年の後半に南太平洋ソロモン諸島の沖で決戦に臨むことに成る………。

 

……。

 

…空母決戦は、日本側の勝利に終わった。

「瑞鶴」「飛竜」は生き残り、アメリカ海軍が開戦時に保有していた6隻の空母は全て撃滅された。

 

だがしかし、アメリカ合衆国の工業力は、対日戦争の決勝兵器と成る「エセックス」クラス空母の大量生産を始めていた………。

 

……。

 

…連合艦隊を率いてきた山本五十六大将は、ミッドウェー、ソロモンと続いた心労もあって倒れ、前線を退いた。

この結果、戦死を免れることに成ったとは、誰も知らない。

前線の指揮を後任者に譲って、療養中に山本は考えた。

この戦争を、どうやって終わらせるか。

 

そもそも、無謀とすら言われた真珠湾奇襲やミッドウェー作戦を強行したのも、早期決戦を求めてだった。

国力的に最終的な勝ち目など無い対米戦争を早期に解決する為だったのだ。

療養から復帰するのも待ちかねる様に、山本は旅立った。

それは、終戦の為の秘密工作に赴く旅立ちだった。

 

ナチスドイツの同盟国でもあり、ソビエト連邦とも中立条約を結んでいる日本が仲介する立場で、独ソ戦争を解決に導く。

次いで”この”恩を返させる形で、今度はソ連の仲介で、日米戦争の解決を。

その為ならば、今や「生ける軍神」とすら言われる自分の名声、本人にすれば虚名、アメリカ側にすれば悪名すらも利用してやる。

それが、山本の決意だった………。

 

……。

 

…山本たちのヨーロッパに於ける工作は、ドイツとソ連、其々の独裁者の間に「ホットライン」を開設させる形で、結実した。

後は、独裁国家同士だけに、途は開かれた。

悲惨なる独ソ戦争は、停戦した。

だがしかし”その”独裁者同士の同意は、同盟国である筈のナチスドイツによって、日本帝国がソ連に”売られる”という密約を含むものだったのだ。

 

そして、次なる対米工作も、開戦前からアメリカ国内に残して置いた停戦の為の伏線も手伝って、効果を表し始めた。

だがしかし、ここでより有利な条件を求めるアメリカ側が、決戦兵器ともいえる「エセックス」クラス空母の大艦隊を動かした………。

 

……。

 

…1944年6月。

日本列島東方の太平洋で戦われた日米最後の決戦は、アメリカ合衆国そして「エセックス」クラス空母機動艦隊の実力を、日本国内の主戦派の頭に冷水を浴びせる程に見せ付けた。

 

同年8月15日。

遂に大日本帝国は「負け逃げ」の形で、アメリカ合衆国と停戦した。

 

確かに、少なくないものを失った。

だがしかし後1年戦っていれば、もっと多くを失っていただろう。

 

兎に角(とにかく)日本本土は戦場と成ることも無く、空爆に因って焼野原に成ることも無かった。

戦艦「大和」などを含む陸海軍も残り、新たに帝国空軍も発足した。

 

だがしかし、軍国主義は廃(すた)れることに成る。

この後の日本は、アメリカに影響された民主化の元、アメリカ合衆国の同盟国としての未来を進んでいくのである。

 

大神一郎もまた、新たに「エセックス」クラスとして生まれ変わった「瑞鶴」「飛竜」を率いて、新たな任務に就くことに成る………。

 

……。

 

…1945年8月9日。

突如として、ソビエト連邦が日本に宣戦布告し、かつて日本が「独立」させていた満州国に侵攻して来た。

かくて、満州の陸に空に、周辺の海に日本とソ連は激突する。

だがしかし、この時の日本は、世界を相手に孤立して戦い疲弊した日本では無かった。

1年前の停戦条件に「アメリカ製兵器の日本市場への開放」とあった様に、アメリカ製の兵器とドクトリンで軍は強化され、1年かけて対米戦争の消耗から立ち直りつつある日本だったのだ。

 

これに対しソ連側は、今や友好国と成ったドイツから輸入した兵器まで投入し、正式停戦成って独ソ戦線から引き揚げた大軍を動員して侵攻した。

 

かくて、日本人の操るアメリカ製兵器とソ連人の操るドイツ製兵器が、満州と其の周辺の戦場に激突することに成るのである………。

 

……。

 

…戦争は、未だ終わっていなかった。

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