乙女たちの戦記~艦魂~(架空戦記)   作:高島智明

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対潜水艦

日米戦争に於いて、アメリカの潜水艦に因る海上交通破壊戦は、大日本帝国にとって脅威と成っていた。

この戦訓から、対米停戦後に再建を始めた日本海軍に於いては、対潜水艦戦が重視された。

無論、対米戦争中から潜水艦対策は模索されてもいたが、間に合ったとは言えなかったのである。

 

例えば、海軍の基地航空隊は新たに発足した帝国空軍に統合されたが、艦載機(空母機や空母以外の艦に搭載された水上機)とともに、対潜哨戒機の部隊は海軍に残された。

対米戦争中から開発の始まっていた、空母搭載も可能な哨戒機「東海」や1式陸上攻撃機の木製化から計画が始まった対潜哨戒機・輸送機「大洋」などが完成させられ、哨戒任務に就いた。

 

更には、日米停戦の条件の1つ「アメリカ製兵器の日本市場への開放」に従って、日本海軍の水上艦艇に、連合軍が開発した対潜兵器が搭載された………。

 

……。

 

…第2次大戦(World War II)には間に合わなかったヘリコプターも、戦中に水上機を載せていたクラスの艦ならば、運用していて不思議の無い時代に成りつつあった。

そして、有力な対潜兵器として発達しつつあった。

その結果、ジェット化する固定翼機に対応できず、したがって正規の空母としては価値を失った艦でも、定数18機の対潜ヘリを載せれば其れなりの使い勝手がある時代には成ったのである。

 

「今日もうちの子供たちは賑(にぎ)やかです」

ヘリコプターの爆音は、固定翼機よりも、爆音と呼ぶのに相応しい。

その賑やかな爆音の響く艦上で、乙女は青空と白雲へと賑やかに飛び立つ「子供たち」を見上げていた。

「雲竜」型空母3番艦、現在は対潜ヘリコプター母艦「葛城」の艦魂である。

日米太平洋戦争は、戦艦に代わって航空母艦を主力艦に押し上げた。

その戦訓を受け、更にはミッドウェー海戦での大損害もあって、急遽として空母の建造が決意された。

その際、建造に時間が掛かり、建造出来る施設も限られる大型空母よりも中型空母「蒼龍」「飛竜」を改良すべきところは改良し、簡略化できる所は簡略化した中型空母が建造されることに成った。

これが「雲竜」型空母である。

 

だがしかし「雲竜」型空母各艦が、あるいは完成し又あるいは完成に近づく頃には、日米戦争は日本の「負け逃げ」の形で停戦と成っていた。

これが約1年早く、例えば日米交渉が前途多難と成っていた頃に建造を決意して居れば「間に合った兵器」として戦局に大いに寄与しただろう、とは戦後の後知恵である。

 

そしてWWII全体が終わった後には、レシプロ機に代わってジェット機の時代が近付いていた。

日米戦争、そして其の後に勃発した日ソ戦争まではレシプロ機が数量上の主力だったが、大戦後数年して勃発した半島戦争では明らかにジェット機の時代が来つつあった。

その結果として大戦中には大型空母だった「エセックス」クラスに生まれ変わっていた「瑞鶴」「飛竜」は兎も角(ともかく)レシプロ機時代こそ中型空母だった「雲竜」型は、ジェット空母に改装するには小さ過ぎた。

 

その結果、時代に取り残されるかと見えた「雲竜」型空母だったが、新たに発達し、有力な対潜兵器と成ったヘリコプターによって、新たな価値を与えられたのである。

今日も「葛城」を旗艦とするハンターキラー戦隊は、主要航路に於ける対潜哨戒を兼ねた訓練を実施中だった。

 

「葛城」を発進した対潜ヘリが標的役の潜水艦を捜索し「キラー」役の駆逐艦やフリゲート艦が旋回する、その動きを見守りながら「葛城」(艦魂)は1時の回想を思い浮かべたりもしてみた。

「雲竜」型姉妹6隻が勢揃いしたことが、かつて在った。

日ソ戦争中に行われた、ソ連軍拠点への大規模空爆である。

 

この時、艦隊の指揮を取ったのは「雲竜」型空母のうちの1隻では無く、大型巡洋艦「大雪」だった。

中型空母であり簡易型である「雲竜」型には、戦隊旗艦の施設は在っても艦隊旗艦の能力は無い。

方や「大雪」は設計段階から、艦隊旗艦と成るように設計されていた。

 

日米戦争時に第2艦隊旗艦を姉妹の1隻「愛宕」が務めた様に「高雄」型重巡洋艦は艦隊旗艦として設計されていたが、対米戦争末期に「鳥海」を残して失われ、残った「鳥海」は第5艦隊旗艦として北方警備の任務に就いていた。

 

その穴を埋めるべく、そして戦訓に応じた改良を加え、更にはワシントン海軍軍縮条約の制限下に設計された「高雄」型よりも自由に設計される条件の元に計画された。

主砲は「鳥海」が20cm連装砲15.5cm3連装砲に換装されたように、最初から15.5cm3連装砲と成り、日米停戦の条件の1つ「アメリカ製兵器の日本市場への開放」に従い、アメリカ製の装備も搭載された。

何より、空母機動部隊を率いる旗艦として、指揮通信機能や収容力が充実していた。

 

その「大雪」からの指揮を受けて「雲竜」型姉妹6隻から「流星」艦上攻撃機とエスコートする戦闘機からなる攻撃隊が発進した。

それから年月が過ぎた。

”この”時代の「葛城」は対潜ハンターキラー戦隊の旗艦だった。

 

姉妹の中には「流星」攻撃機がインドシナ戦争まで使われたため、その時代まで空母として残った艦もあったが。

 

だがしかし、対潜ヘリ母艦と成った「葛城」は、そんな姉妹よりも長く現役に留まった………。

 

……。

 

…彼女たちWWII時代の母艦が艦齢を全うする頃には、駆逐艦や其れを更に小型化したフリゲート艦にも対潜ヘリの1機や2機なら搭載される様に成っていた。

そして、所属する艦の有力な対潜兵器と成っていた。

 

その為、必ずしもヘリ母艦が必須とは言い切れず「雲竜」型の代艦は建造されなかった。

だがしかし、他の姉妹が天に帰っていく中で「葛城」には、新たな任務が与えられた。

初等練習機での空母への発着艦(特に着艦)を訓練する為の練習空母である。

 

練習空母「葛城」は、多くの若鷲を育成した。

WWIIの戦後「冷戦」時代、そして「冷戦後」の時代、潜水艦は進歩し続けた。

ステルス性も改善され、魚雷、更にはミサイル等の攻撃兵器も進歩した。

何より、その動力は原子力と成った。

 

これに対して対潜兵器も進歩した。

対潜哨戒機はMAD(磁気探知機 )やソノブイ(ソナー装備の投下ブイ)を武器とする様に成り、水上艦の対潜装備も進歩した。

 

海中の刺客と、それを狩るもの、双方の進化は続いていく。

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