ある時、アメリカ海軍の「ガトー」クラス潜水艦「ミンゴ」(艦番SS-261)(艦魂)は戦隊司令官である潜水母艦(艦魂)に呼び出された。
「潜水艦「ミンゴ」の太平洋での哨戒任務は成功の様だな。
だがしかし、日本との戦争は停戦と成った。
貴女には、新たな任務が決まっている」
それに対して「ミンゴ」(艦魂)は、思い当たることを口にした。
「大西洋ですか。敵はナチですか」
瞬間だけ上官は複雑そうな態度に成ってから、言葉を続けた。
「いや、これから貴女は日本海軍の所属と成る。
潜水艦「ミンゴ」は、日本への売却が決まった」
「?!」
日米停戦の条件の1つ「アメリカ製兵器の日本市場への開放」に基いて、様々な兵器が日本へと輸出されることに成った。
その中に、太平洋での海上交通路破壊戦に活躍し、日本海軍からも先を進んでいると認識されたアメリカ海軍の「ガトー」クラス潜水艦が入っていた。
アメリカ軍の同盟軍として再建されることに成った日本海軍は、この輸入した艦をサンプルとして、今後の潜水艦建造を進めたいと意図したのだ。
「私にjapに成れと」
「もう彼女たちは、我々の同盟軍だ」
もう決まったことは覆らない。
アメリカ海軍潜水艦「ミンゴ」は日本海軍に引き渡され「伊号600」潜水艦と命名された………。
……。
…幸いだったと言うべきだろう。
「ミンゴ」改め「伊号600」を迎えた潜水戦隊の新たな戦友たちは、昨日までの敵艦であり、おそらくは同胞を沈めたかも知れない彼女を、偏見無く迎えてくれた。
同僚と成った潜水艦(艦魂)たちは、素直に自分たちより高性能な「伊600」に対して畏敬すらした。
そして、戦隊司令である潜水母艦「大鯨」(艦魂)はアメリカ海軍での上官に劣らず、実に母性的に、そして他の潜水艦(艦魂)と差別すること無く「伊600」(艦魂)の世話を焼いてくれた。
そんな彼女たちに「伊600」も、頑(かたく)なではいられなかった………。
……。
…日米停戦から1年後。日ソ戦争が勃発した。
「伊600」を含む潜水艦たちも、満州周辺の海中に出撃した。
その戦争も終結して、日本海軍はある決断をした。
これまでは大きさと番号で呼んできた潜水艦に、駆逐艦に準じた命名基準を与えることにしたのである。
その最初の例として「伊号600」潜水艦には、日米戦争で戦没した「陽炎」型駆逐艦の艦名が継承されることに成った。
その命名が式典として行われている時「伊号600」潜水艦改め「黒潮」の艦上。
同僚の潜水艦(艦魂)や上官である「大鯨」(艦魂)に囲まれる「黒潮」(艦魂)に近づいてくる乙女たちが居た。
彼女たちは「好運艦」と呼ばれた「雪風」(艦魂)を含む「陽炎」型駆逐艦(艦魂)の生き残りたちだった。
「貴女が新しい「黒潮」ね」
肯定の答えしか出来ない。
「もしかしたら「言霊」に導かれて”あの”娘が還って来たかも知れない。
でも、私たちは貴女を恨んだりはしない。
只「黒潮」の名を受け継ぐに相応しい艦でいて欲しいの」
何と答えるべきだったろう。
「黒潮」と命名されたばかりの艦魂は、只、肯定することしか出来なかった。
その後「黒潮」というサンプルを研究した日本海軍は、新たに進歩した潜水艦を建造した。
その潜水艦たちには「潮」などの名が与えられた………。
……。
…兵器の進化は止まらない。
潜水艦も例外では無かった。
原子力潜水艦の時代が来たのである。
日本海軍でも、何度も原潜保有について検討が行われた。
そして冷戦がピークに達した1980年代、アメリカ海軍の「ロサンゼルス」クラス攻撃型原潜を手本とした哨戒型原潜が建造されることに決まったのである。
その中の1隻が、進水を迎える日が来た。
進水する原潜が「黒潮」と命名された時「力」を持つ者なら気付いたかも知れない。
原潜「黒潮」の艦上に光の粒子が集まり、乙女の姿を取った。
当時の日本海軍の軍服姿の、若い乙女の姿をした存在。
潜水艦「黒潮」に宿る心と命が、姿を取った艦魂だった。
その要旨は、何故かアジア系とは言い切れない。
アメリカ軍艦「ミンゴ」として誕生し、日本海軍の「伊号600」潜水艦そして潜水艦「黒潮」として艦齢を全うした艦魂が「黒潮」という「名」の持つ「言霊」に導かれて還って来たのだった………。
……。
…原子力潜水艦「黒潮」は、冷戦の海中で沈黙のうちに任務を果たした。
その後、湾岸戦争などに派兵された。
21世紀を迎えて、彼女は尚も現役である。