乙女たちの戦記~艦魂~(架空戦記)   作:高島智明

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ミッドウェー・ソロモン海戦~戦艦「大和」戦記~

ミッドウェー海戦に於ける、航空母艦対航空母艦の戦いは、日米双方が4隻ずつの空母を失い、日本側の2隻が生き残って、日本側の辛勝の形と成った。

 

日本軍は改めてミッドウェー島の攻略に取り掛かり、攻略を支援する部隊の高速戦艦や巡洋艦が島を取り囲んで、艦砲射撃を浴びせだした。

これに対し、アメリカ側は島を放棄するかどうか、1瞬は迷った。

 

だがしかし、日本空母の脅威が減少したと見て、残っていた戦艦部隊に艦砲射撃を続ける日本艦隊を追い払うように命令した。

真珠湾から生き残り修理された戦艦に、大西洋から回航された増援を含めた艦隊である。

ただし、海軍軍縮条約が明けて以降に建造された新鋭戦艦は、未だ投入されていなかった。

 

戦艦部隊は、確かに日本空母の空襲は受けなかった。

だがしかし、空母機動艦隊の後方に待機していた主力戦艦部隊が今度は前面に出てきた。

それが、日本連合艦隊の最初からの目論見だったのである。

 

戦艦部隊を率いる、真珠湾を奇襲された責任を取って太平洋艦隊司令長官から降格された提督は、戦艦7隻の単縦陣の先頭を進む旗艦の艦橋で、周囲を警戒する巡洋艦や駆逐艦からの報告を聞いていた。

今の処、日本川の空母機や潜水艦の報告は無い。

無論、日本軍が無警戒のまま自分の部隊を迎えるとは思っていなかった。

 

そして遂に、日本艦隊が発見された。

偵察や弾着観測にあたる水上機を飛ばしてみても、日本戦闘機の迎撃は無い。

やはり、日本空母は後退したかと思いながら偵察機を飛ばしていると、敵らしきものを発見したとの報告が入ってきた。

「先頭は戦艦1隻。その後方に巡洋艦6隻が単縦陣を構成している」

その報告に、恐らくは主力戦艦部隊の前衛だろうと判断し、先ずは”この”前衛を蹴散らしてやろうと決心した。ところが…

 

水平線から現れたのは、戦艦が7隻。

その先頭を進んでくるのは、見たことも無い、後ろに続く他の戦艦が巡洋艦ほどにも見える程に巨大な「モンスター」だった。

それでも、もう逃げる選択は無い。7隻対7隻だ。

アメリカ戦艦部隊は、まるでかの東郷ターンの様に艦隊運動して、日本戦艦部隊と同航戦の体勢に成った。

 

アメリカ戦艦部隊の旗艦と「モンスター」戦艦は、ほぼ同時に初弾を放った。

敵艦からやや離れた海面に、弾着の水柱が立つ。

その水柱と標的との位置関係を観測して、照準を修正するのだ。

 

どの艦が放ったか見分けるためだろう、日本戦艦からの弾着の水柱には色が付いていた。

そして「モンスター」戦艦からの水柱は、明らかに他の戦艦からの水柱より大きかった。

 

何回かの弾着修正の末、遂に命中弾が出た。

だがしかし「モンスター」は何事も無かったかの様に、次の砲撃を放つ。

逆に「モンスター」の砲弾は、アメリカ側旗艦の装甲を貫通して、艦内で炸裂した。

ダメージ・コントロールが必死に被害局限を図る中、更に「モンスター」の砲弾が襲い掛かった。

 

「モンスター」戦艦こと日本海軍の新鋭戦艦「大和」の艦橋で、連合艦隊司令長官の山本五十六はほくそ笑んでいた。

日本海軍の空軍化を推進してきた山本だが、元々は戦艦対戦艦の砲撃戦が艦隊決戦だった時代に初陣を飾ったのだ。

その時代の様に、こうして単縦陣の先頭で砲撃戦を戦うのが旗艦の役目ならば「大和」が連合艦隊旗艦であることは正しい。

だがしかし、海軍は航空機を、潜水艦をと立体的に広い大洋で戦う時代に移り変わりつつある。

司令長官の指揮スタイルも変わりつつあった。

現にアメリカ側の太平洋艦隊長官は、通信施設の充実したハワイから指揮を取っていた。

連合艦隊司令長官が、こうして陣頭に立つのも何時までに成るか分からなかった。

 

1方、初陣の「大和」(艦魂)は、自身が軽傷であることに驚愕すらしていた。

自艦の46cm砲を想定して設計された「大和」の装甲は、アメリカ戦艦のより口径の小さい砲弾などは跳ね返していて、装甲に守られた重要区画までは貫通していなかった。

 

遂に「大和」の砲弾が急所に貫通したか、アメリカ側旗艦が大炎上しながら急速に傾斜していった。

それを見届けた「大和」は、2番艦「長門」と撃ち合っていた敵2番艦に照準を向けた………。

 

……。

 

…アメリカ戦艦7隻全てが、既に沈没するか大傾斜していた。

片や、日本側の7戦艦は中小破していたものの、全隻が未だ戦闘可能だった。

特に「大和」は遂に装甲を貫通されることは無かった。

 

空母部隊の辛勝そしてこの戦艦部隊の完勝と、島の攻略も成りそうだということで、どうやらミッドウェー海戦は日本側の勝利と判定出来そうだった………。

 

……。

 

…ミッドウェー島の守備隊は降伏した。

記録映画を撮影する軍属として送り込まれていた、名映画監督ジョン・フォードも捕虜と成った。

彼の存在を知った日本側は、東宝映画会社に身柄を預けた。

このことが戦後の日米映画界に、どう影響したかは興味のある処と成った………。

 

……。

 

…だがしかし、ミッドウェー海戦の勝利はは対米戦争の早期解決を意味する大勝利では無かった。

特に開戦以来、戦艦に代わる花形と成っていた空母6隻中の4隻を失ったことは大きい。

未だ2隻の空母は残っているものの、アメリカ側も未参加だった空母2隻が残っているはずだった。

その空母2隻同士の対決は、遠からず起こるだろう………。

 

……。

 

…南太平洋ソロモン諸島ガダルカナル島の攻防戦の中で起こった空母対空母の戦いは、日本側が勝利した。

それでも、ガダルカナル島のアメリカ軍は踏ん張り続けていた。

 

やはり、あの島を奪回するためには、島の陸軍に増援と補給を送り込むしかない。

その為には、敵の飛行場の機能を艦砲射撃で1時的にしろ封殺する必要がある。

こうして、ガダルカナル沖に艦砲射撃部隊が送り込まれることに成った。

 

この時、不穏な情報が入った。

アメリカ海軍が、開戦に前後して竣工した新鋭戦艦をソロモン戦線に投入したというのだ。

これに対して、こちらも新鋭戦艦を、という声が上がった。

つまりは、連合艦隊旗艦である「大和」と実戦部隊に配属されたばかりの姉妹艦「武蔵」である。

「旗艦を」

と、出し惜しみする意見もあったが、司令長官は決断した。

「このフネたちは、戦うために生まれて来たのだ」

 

それに、もうミッドウェー海戦で敵にもその存在は明らかに成っており、自国民にまで秘密にする意味も無くなっていた。

長く「「長門」と「陸奥」は日本の誇り」と言われてきた姉妹に代わって、新たな連合艦隊の象徴と成り始めていた。

 

ともあれ司令長官は、以前の旗艦だった「長門」に1時的に移り「大和」「武蔵」は、突入部隊である第2艦隊に預けられることに成った………。

 

……。

 

…その夜、1942年11月14日の深夜から15日の未明。

ガダルカナル沖に、日米艦隊は激突した。

 

アメリカ海軍の新鋭戦艦「ワシントン」「サウスダコタ」は、前衛の駆逐艦が、日本海軍の巡洋艦や駆逐艦に撃滅されている間に日本艦隊に接近し「ワシントン」のレーダーが「武蔵」を捕捉した。

 

これに対して日本艦隊では、照明弾に浮かび上がった「サウスダコタ」に砲撃を集中したが、その前方を進んで接近する「ワシントン」には、まだ気付かない。

「日本軍はレーダーをまだ実用化していない、というのは本当の様だな」

そう看過したアメリカ側の提督は「武蔵」をレーダー射撃した。

 

自艦の46cm砲を想定していた「武蔵」の装甲は「ワシントン」の16in,(インチ)(41cm)砲弾を跳ね返した。

ところが、喫水線下に1弾が命中したとき「武蔵」(艦魂)は自分の脇腹を押さえた。

 

「武蔵」の装甲は其の水中弾を跳ね返したが、同時に装甲を支える船体構造の鋲が衝撃で飛び、装甲が反り返って、想定外の浸水が発生した。

1本や2本の魚雷命中なら耐えられる筈の「大和」型戦艦の意外な弱点だった。

 

だがしかし、この砲撃は「ワシントン」自身の存在も暴露した。

ようやっと「ワシントン」の存在を認識した「大和」「武蔵」から、報復とばかりに46cm砲の砲撃が集中した。

 

その何発目かの砲撃の砲弾が「ワシントン」の装甲を破り、主要部で炸裂した。

尚も砲撃を浴び続け「ワシントン」は炎上して傾斜した。

続けて「大和」「武蔵」は、先程の砲撃で主砲を故障させられていた「サウスダコタ」を、改めて撃った。

 

「ワシントン」「サウスダコタ」が相次いで沈み、脅威を排除した日本艦隊は、ガダルカナル島のアメリカ軍飛行場を思う存分に艦砲射撃して航空機運用能力を奪った。

 

この報告を受けて、待機していた護送船団が、今や日本軍が制空権を握ったソロモン諸島の海を南下して行った。

 

この戦況にアメリカ本土の首脳部も、遂にガダルカナル島からの撤退を検討し始めた………。

 

……。

 

…ガダルカナルを奪還しても、ソロモン諸島の戦い、そして日米戦争は終わらない。

「大和」たちにも新たな海戦が待っていた。

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