ジュニア級レースで2連勝と波に乗っているフラグシップ、次走は阪神ジュベナイルフィリーズを目標としたこの日、G1レース用の勝負服を仕立てようとトレセン学園近くの商店街の一角にあるとある呉服店へ脚を運んでいた。
その呉服店とはトレセン学園が開校してから数十年、数々の名ウマ娘たちの勝負服を仕立て上げ世に送り出してきた老舗の松平呉服店である。
「いらっしゃいませ……本日はどのようなご要件でしょうか」
「G1用の勝負服を仕立て上げてもらおうかと思いまして……よろしいですか?」
「それはそれは……当店をご利用いただき誠に光栄であります。では採寸を行いますのでこちらへ……」
パリッと糊の効いた背広の老紳士に案内されるがままフラグシップは裏の部屋へと案内された。ここで採寸を測りオーダーメイドのたったひとつだけの勝負服を製作するのである。老紳士から貴婦人へと担当が変わり身長からバスト・ウエスト・ヒップを測り記入していく。
「……これにて採寸は終了です。後は勝負服のデザインについてですが……こちらはどうしますか?当店のおまかせ設計、もしくは所属デザイナーとの面談の上で決定致しますか?」
「そうですね……デザイナーとの面談でお願いします。どうしても勝負服に取り入れたい要素は沢山ありますので」
「承りました」
採寸を終えたフラグシップ次に通されたのはカフェテリアのような場所、ご丁寧に珈琲や紅茶のセットが設けられており、ウマ娘用の思わしきケーキやフルーツも用意されていた。フルーツの盛り合わせをたしなみながらデザイナーを待っていると『おまたせしました』と女性デザイナーがやってきた。
「それで……どういったデザインをご希望なのでしょうか」
黒いショートヘアを揺らしてフラグシップに問いかけるとフラグシップはカットフルーツを飲み込むと自分自身の要望をデザイナーへと伝えた。
「そうですね……できれば……好きな赤と白を加えて……できればかっこいい風の女性のイメージでお願いします」
「かっこいい系ですと……シンボリルドルフさんやタニノギムレットさんのような感じですか?でしたら………………こういったものはどうでしょうか。これならばかっこよさは間違いないでしょう」
「うーん……確かにかっこいいんだけど、なんかしっくり来ませんね……」
さっと軍服風のラフ画を書き上げたデザイナーであるがそのどれもかっこよさは持ち合わせているものの、フラグシップ的にはどうにもしっくりと来ていないようである。
「スカート風じゃないズボンタイプでお願いできるかしら……それとかっこいい感じだけど……少し水兵要素も欲しいです。軍艦……好きですから」
「ふむふむ……水兵要素ですか。先日、丁度同じようなお客様がいらっしゃいましてね……」
「おう、フラグシップねーちゃん!なぁにしてんだ?」
「ゴールドシップ?どうしたの?」
「そりゃあゴルゴルレーダーでねぇちゃんを見つけたから着いてきたって理由!それよりも!どぉーだ、私の勝負服!この前デザインしてもらったんだぜ!」
突然やってきたゴールドシップ、その手にはスケッチブックが握られており、そこにはゴールドシップの勝負服がデザインされたスケッチブックを手にしていた。
「シップ、貴女、まだデビュー前でしょ?もう勝負服を作ったの?」
「いーじゃんかよ、そこのお姉さんにたのんで作りたかったんだからさー。んじゃ自慢したし、ゴルシちゃんは帰ってサザエ堀りに行くから!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!シップ!全く……」
フラグシップが呼び止めたにもかかわらず、ゴールドシップはスケッチブックを残し、脱兎の勢いで居なくなっていた。
「すいません……私の妹が粗相を……」
「いえいえ、構いませんよ。まさか先日デザインしたのがお客様の妹様だとは……ちょっとアイデアが浮かんだので少々お待ちください」
そういうとデザイナーが黙り込むともくもくとスケッチブックへと勝負服のデザイン案を書き込む。フラグシップが指定した要素もいれつつ、描きあがっていく。筆を置き、
「出来ました。……こちらでどうでしょうか」
「……?……!これです!なんだかビビっと来ました!」
スケッチブックに描かれたのは白いのノースリーブシャツに、真紅のベストにネクタイ、白いカフス、下半身はショートパンツに白タイツ、そして足元は黒いブーツという勝負服であった。
「ウマ娘の皆さんは自分の勝負服に名前をつける方が多いのですがフラグシップさんも名付けられますか?」
「ええ!もちろん!名前は……『STARFLAG』」
「いい名前ですね……」
フラグシップの勝負服が決まったので次回はいよいよ阪神JFです