リバース・クエスト〜女体化した俺、ティンティンを取り戻すため狐耳魔女と異世界を駆け巡る〜   作:八百板典所

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十六話

 食事を食べた後、俺と魔女ルナは寝落ちした。

 多分、お腹いっぱいになった事で緊張の糸が切れてしまったんだろう。

 俺達は腹八分まで腹を満たすと、そのまま寝袋に入る事なく、床の上に突っ伏し、寝てしまった。

 

「うう……」

 

 起き上がる。

 すると、胸についた乳肉が微かに揺れ動いた。

 

「………」

 

 視界の隅に映る金髪が、日焼けの跡など何一つない真っ白な肌が、そして、柔らかな肉を纏った太腿が、俺の視界に映り込む。

 それを見た瞬間、『ああ、昨日のは夢じゃなかったんだな』的な事を思ってしまった。

 

「……」

 

 衣服越しに右手で右乳を揉む。

 すると、ふにゅんという柔らかい感触が手の平に伝わった。

 それから少し遅れて、乳肉が俺の指を押し返す。

 柔らかいながら、張りのある乳肉。

 揉む度に掌に伝わる至高の感触が起きたばかりの俺の脳髄に食い込み、瞬く間に男としての本能を昂らせ──ない。

 当然だ。

 だって、今の俺の股間には息子(あいぼう)がついていないのだから。

 

(……胸を揉む度、……いや、今の自分が男じゃないって自覚する度、なんか男としての尊厳が擦り減っているような気がするんだよなぁ)

 

 軽く溜息を吐き出した後、右乳から手を離す。

 そして、すぐ近くで眠っている狐耳の少女──魔女ルナの方に視線を向ける。

 視線を向けた途端、目蓋を開けようとする彼女の姿を目視した。

 

「ん……」

 

 艶のある声を発しながら、魔女ルナは上半身を起き上がらせる。

 まだ完全に覚醒し切ってないのだろう。

 彼女は呆けた表情で俺を見つめると、眠そうな目で俺に『…….おはよーございます』と告げた。

 

「ああ、おはよう。昨日は寝られたか?」

 

「あ、はい。それは、もう、グッスリ………あ」

 

 そう言って、魔女ルナは慌てて自分の身体と俺の身体を交互に見る。

 自身と俺を交互に見た途端、彼女は突如絶望したような表情を浮かべた。

 『おい、どうした』と言葉をかけるよりも先に、彼女は勢い良く両膝と両手を床に着ける。

 そして、腹の底から叫び声を上げ始めた。

 

「ちくしょおおおおおおお!! 初夜チャンス逃したぁ!」

 

「おい」

 

「くっそお! 昨晩はいい感じの雰囲気だったから、濃厚な×××できると思ってたのにぃ!」

 

「おい」

 

「いや! まだ諦めるのは、まだ早ぇ! こうなったら、今からでも厭らしい雰囲気を作って、一日中×××しま……」

 

「落ち着け」

 

 興奮する魔女ルナを落ち着かせようと、彼女の脳天に軽くチョップをお見舞いする。

 彼女は「あぅ!」と呻き声を上げると、涙目で俺を見つめ、『何するんですかぁ!?』と叫んだ。

 

「いや、貞操の危機を感じたので、つい」

 

「危機はチャンスなんですよ! 童貞よりも先に処女を卒業できる! そのチャンスをユウさんは逃すと言うのですか!?」

 

「逃していいよ、そんなチャンス」

 

 というか、逃したい。

 だって、俺は女じゃなく、男なのだから。

 

「勿体ない! 童貞よりも先に処女卒できるのはTS娘の特権なんですよ!? その特権をユウさんは自ら捨てると言うのですか!?」

 

「おい、なんか当たり前のように俺が童貞前提で話進んでいるけど、俺が童貞じゃない可能性は頭に過らなかったのかよ」

 

「へ? 性経験あるんですか?」

 

「……………」

 

 ねぇよ。

 性経験どころか、恋人さえできた事ねぇよ。

 その一言を俺は呑み込む。

 明後日の方に視線を向ける。

 それで大体察したのだろう。

 魔女ルナは得意げな表情で『ほーら♪』みたいな表情を浮かべた。

 

「大丈夫ですよ。私は予習をしっかりやる女! ちゃーんと性経験皆無のユウさんを華麗に、そして、大胆に導く事を此処に宣言致します!」

 

「ん……? 予習を? 実践と復習は? もしかして、予習しかやった事ないのか?」

 

「………」

 

 図星だったのだろう。

 俺が指摘した途端、魔女ルナは押し黙ってしまう。

 俺から視線を逸らし、表情を強張らせてしまう。

 それを見て、流石の俺も勘づいた。

 彼女が耳年増である事を。

 

「なーんだり散々人の事を童貞だとか何だとか言ってた割には、お前も俺と似たようなものじゃねぇか」

 

「ユウさん」

  

 ニコッと微笑みながら、魔女ルナは何処からともなく何かを取り出す。

 それは棒状のモノだった。

 見覚えはない。

 けど、それを見た途端、何故か背筋に冷たいものが流れ落ちた。

 

「──予習だけで何処までできるのか教えて差し上げましょまうか」

  

 魔女ルナの目が据わる。

 それを見た瞬間、俺の背筋に悪寒が走った。

 

「ふふふ、ユウさん。一つ言っておきます」

 

 ゆっくり立ち上がった彼女は、穏やかで爽やかな笑みを浮かべる。

 それを見るや否や、俺の額に冷や汗が浮かび上がった。

 

「経験がなくとも、こっちには若さと勢いと性欲があるんじゃあああああ!!」

 

「ぎゃあああああ!!」

 

 棒状のモノを持ったまま、魔女ルナは俺の身体に飛びかかる。

 同時に、俺は『ジャスト回避』を連発し始めた。

 

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