リバース・クエスト〜女体化した俺、ティンティンを取り戻すため狐耳魔女と異世界を駆け巡る〜   作:八百板典所

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二十八話

 場所はジール村にある露天風呂。

 ルナが頭を下げた瞬間、彼女の頭上を矢が通り過ぎる。

 あとちょっと回避が遅れていたら、ルナの額に矢が突き刺さっていただろう。

 そう思った瞬間、俺の背筋に冷たい汗が流れ落ちる。

 

「矢……!? 一体、何処から飛んできた!?」

 

 脳内ステータス画面から木の棒を引っ張り出す。

 今日買ったばかりの防具──ショートジャケットと胸に巻き付けるための白い布、そして、ホットパンツ──を身につける。

 いつでも戦闘ができるように体勢を整える。

 

「ユウさん、射手の特定よりも今は脱衣所に逃げましょう。此処にいたら、蜂の巣にされてしまいます」

 

 そう言って、ルナは湯船から上がり、脱衣所に向かって走り始める。

 俺も彼女を見習って、湯船から上がると、脱衣所に向かって駆け始めた。

 脱衣所に逃げ込む。

 その間、矢は飛んでこなかった。

 

「私が矢を目視した時、矢は真っ直ぐではなく、放物線を描くように飛んできました。恐らく射手は遠く離れた所にいるのかと」

 

 脱衣所に辿り着くや否や、ルナは身体の正面を俺に見せつける。

 彼女はあんな所やこんな所を手で隠す事なく、シリアスな雰囲気を保ったまま、俺に全裸を見せつけた。

 その所為で、俺は一糸纏わぬ彼女の姿を目視してしまう。

 

「そ、その前に服着ろ服っ! あんな所やこんな所が丸見えになっているぞ!」

 

「安心してください。ユウさんに私の全裸を見せつけているだけなので」

 

「その言葉の何処に安心する要素があるんだ……!?」

 

「ユウさん、その両目蓋に焼き付けて下さい。近い将来、アナタが抱くであろう女の裸体を……!」

 

「いいから服着ろ!」

 

 目蓋を閉じ、俺はルナの頭に軽くチョップを叩き込もうとする。

 彼女は『甘いですね!』と叫ぶと、俺のチョップを回避してしまった。

 

「目蓋を閉じている状態で私にチョップできるとでも!? 甘い! 甘いですよユウさん! そんなんじゃ、私の全裸は止められねぇぜ!」

 

「今、そんな場合じゃないんだけどなぁ!」

 

「大丈夫です! 私、全裸で外を走り回れる程の覚悟を持ち合わせております!」

 

「それは覚悟と言わない! 覚悟とは言わないんだ……!」

 

「ユウさんが私のあんな所やこんな所を目蓋に焼き付けるまで、私は服着ません! 恐れ慄け! これが私の覚悟じゃあ!」

 

「いい加減にしろ、この変態露出魔っ!」

 

「こーん!」

 

 目蓋をこじ開け、ルナの脳天にチョップを繰り出す。 

 その際、彼女の裸体を見てしまったが、敢えて見なかったフリをした。

 

「で、どうする? どうやって、このピンチを切り抜ける?」

 

「安心して下さい、私は大魔女に1番近い魔女。こんな事があろうかと、入浴前に使い魔を飛ばしておきました」

 

 赤黒いローブを着ながら、ルナは俺の疑問に淡々と答える。

 

「数刻も経たぬ内に私の使い魔が射手を特定してくれるでしょう。ふふん。どうですか、私の用意周到さは。これで惚れ直してくれた……あ」

 

「おい、どうしたルナ。今、お前の口から『あ』って聞こえたけれど。本当に安心していいのか?」

 

「……飛ばした使い魔、全部壊されてしまいました」

 

「……」

 

 詰めが甘いのか、それとも敵がルナを上回る程の実力者なのか。

 どちらにせよ、ピンチの状態には違いなかった。

 

「使い魔は全部破壊されましたが、何処にいるのかは把握しました。此処から南西に200メートル離れた所にある山の中です。恐らくそこにいるのかと」

 

「分かった。じゃあ、行くぞルナ」

 

「あいあいさー!」

 

 ルナが着替え終わった後、俺達は宿から飛び出る。

 ルナが言っていた場所に向かって突き進む。

 その間、矢が飛んでくる事はなかった。

 既に撤退済みなのか、それとも射撃場所を変えたのか。

 それを確かめるため、俺達は目的地である山の中に向かって走る、走る、走り続ける。

 走り続けて、十数分。

 ようやく俺達は射手がいたであろう地点──山の中に辿り着いた。

 

「やっぱ撤退済みか」

 

 射手が座っていたであろう場所を目視する。

 そこには足跡が刻み込まれていた。

 

「温泉は……見えるな。多分、ここから俺達を狙ったんだろう」

 

「私達を狙ったのはモンスターですかね」

 

「多分、プレイヤーだろう。モンスターは村の中に入れない上、村の中にいるプレイヤーを襲えない仕組みだし」

 

「となると、管理者を名乗る女性の提案に魅力を感じた人が、魔女である私を狙った……と」

 

「多分そうだろうな。レアアイテム欲しさにルナを狙ったと考えていいだろう」

 

 誤算だった。

 まさか過食(あそべる)箇所を減らすゲーマーがいるとは。

 管理者を名乗る女性の提案に乗る人はいないと思っていたが、あの提案に乗る輩が一定数いるらしい。

 

(にしても、何のためにレアアイテムを集めているんだ? 残った四天王を倒すため? それとも、レアアイテムを効率良く収集するため? それとも他の目的があるのか?)

 

 考える。

 けれど、情報が少な過ぎる所為で、答えらしきものは思いつかなかった。

 

「ユウさん、とりあえず宿に戻りましょう。もしかしたら、まだこの近くに射手がいるのかもしれませんし」

 

「ああ、そうだな」

 

 軽く頷いた後、俺はルナと共に来た道を戻る。

 不意を突かれないよう、細心の注意を払いながら、俺はルナと共に宿に戻ろうとする。

 

 ──その時だった。

 俺達の肌に視線が突き刺さったのは。

 

「ユウさん」

 

「ああ、分かっている」

 

 そう言って、俺は雷の棒──木の棒と雷の実を錬成したもの──を脳内ステータス画面から取り出す。

 そして、取り出したばかりの雷の棒を背後目掛けて思いっきり放り投げた。

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