リバース・クエスト〜女体化した俺、ティンティンを取り戻すため狐耳魔女と異世界を駆け巡る〜   作:八百板典所

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二十九話

「殺気を放ち過ぎたな。そんなんじゃ、俺達の不意は突けねぇよ」

 

 場所はジール村から少し離れた山の中。

 俺は振り返る。

 振り返るや否や、雷の棒を茂み目掛けて放り投げる。

 放り投げた瞬間、茂みの中から茶髪の男性が飛び出した。

 

「あんた、何者だ」

 

 すぐさま脳内ステータス画面から雷の棒を引っ張り出す。

 出したばかりの雷の棒を右手で握り締めながら、俺は茶髪の男性に問いかける。

 案の定と言うべきか、男は俺の疑問に答えなかった。

 

「……」

 

 レア武器である『天空の弓矢(ガランドロウ)』を構えながら、男は俺達を睨みつける。

 武器を見て、俺は気づいた。

 ──彼が管理者を名乗る女性の提案に乗っている事を。

 

「……」

 

 男は弓矢を仕舞うと、片手剣を取り出す。

 彼が取り出した片手剣もレア武器だった。

 銘(な)は、『天空の剣(キャリーバーン)』。

 攻撃力トップクラスの片手剣。

 耐久力が非常に高く、使い難さもない良武器だ。

 

「狙いは俺か? それとも魔女か?」

 

「………」

 

「……これが最後通牒だ。今すぐ此処から去れ。じゃないと、俺はあんたに危害を──」

 

 俺が喋っている最中だった。

 男が動き始める。

 両手剣を構えながら、前に向かって前進する。

 彼の瞳には金髪金眼の美女──今の俺の姿が映し出されていた。

 くる。

 そう思うや否や、俺は息を短く吸い込む。

 雷の棒を構え、男の目を真っ直ぐ見据える。

 

「しっ!」

 

 男が武器を振るう。

 片手剣が左斜め下から右斜め上に振り上げられる。

 それを目視しながら、俺は1歩下がる。

 1歩下がる事で敵の攻撃を直撃寸前の所で躱す。

 

「てりゃ!」

 

 男の口から掛け声が漏れる。

 それと同時に、男が持っている片手剣が振り下ろされる。

 俺の脳天目掛けて振り下ろされる剣。

 それを見ながら、俺は雷の棒を振るう。

 雷の棒を振るい、『リフレクトアタック』を繰り出す。

 タイミングがバッチリ合っていたんだろう。

 眩い光が俺と男の間に発生する。

 その瞬間、男が持っている片手剣が弾き飛ばされた。

 宙を舞う片手剣──天空の剣(キャリーバーン)。

 それを目視しながら、俺は雷の棒を振るう。

 男の胴体目掛けて振るう。

 彼は『ジャスト回避』を繰り出すと、俺の攻撃を紙一重で避けた。

 

「……っ!」

 

 それを予め読んでいた俺は、すぐさま右手を動かす。

 男の方目掛けて、雷の棒を放り投げる。

 その瞬間、ジャスト回避し終えた男の顔面に雷の棒が突き刺さった。

 

「うがあっ!」

 

 雷の棒がピカリと光る。

 その瞬間、雷の棒に流れていた稲妻が男の体内を駆け巡る。

 それと同時に、男は麻痺状態に陥った。

 数秒間、男は指1本動かせない状態に陥る。

 それを見るや否や、俺はルナの名を呼んだ。

 

「ルナ」

 

「言われなくても分かっております!」

 

 そう言って、ルナは札のようなものを取り出す。

 札のようなものを放り投げる。

 札のようなものは瞬く間に木の枝に成り果てると、男の四肢を拘束──

 

「あ、それは私にとって都合悪いので邪魔しまーす」

 

 ──できなかった。

 聞き覚えのある声──管理者を名乗る女性の声が響き渡る。

 その瞬間、男の身体を黒い影が包み込んだ。

 黒い影が男の身体を包み込んだ途端、男の身体は煙のように消え失せてしまった。

 男の姿を見失ってしまった。

 逃げられてしまった。

 その事実を認識するや否や、俺は軽く舌打ちする。

 

「あの声、管理者を名乗る陰キャ女のものですよね。もしや、あの男、管理者を名乗る女と繋がっているのでは」

 

「……多分、そうだろうな」

 

 溜息を吐き出した後、俺はゆっくり視線を地面に向ける。

 すると、俺の視界に男が落とした片手剣──天空の剣(キャリーバーン)が映し出された。

 

 

◇side:管理者

 

 『この世界』の裏側にある管理室。

 そこに降り立った私は黒い影に包まれた彼を解放する。

 

「感謝してくださいよね。私が助けなかったら、アナタ、彼等にやられていましたよ」

 

 そう言って、私は金髪の男性──プレイヤーネーム『レオ』に話しかける。

 私の言葉を否定する事ができないのだろう。

 プレイヤーネーム『レオ』は忌々しいと言わんばかりの態度で顔を歪ませていた。

 

「レアな武器を幾ら揃えようとも、今のアナタのプレイスキルではプレイヤーネーム『ユウ』に勝つ事ができません。彼は既に『この世界』に順応し切っています」

 

「……そうみたいだな」

 

 ようやくプレイヤーネーム『レオ』の口から言葉が飛び出る。

 それに少々驚きながらも、私は表情を歪ませる事なく、淡々と言葉の続きを口にする。

 

「プレイヤーネーム『ユウ』に確実に勝つ方法は唯一つ。──私の提案を呑む事です。そうすれば、アナタはレア武器なんてクソと思える程の力を得る事ができます」

 

「………」

 

 再びプレイヤーネーム『レオ』は沈黙を選ぶ。

 けれど、妖しく輝く彼の目が、彼の気持ちを代弁していた。

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