リバース・クエスト〜女体化した俺、ティンティンを取り戻すため狐耳魔女と異世界を駆け巡る〜   作:八百板典所

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四十四話

「うがああああ!! いたい、いたい、いたい、いたいぃぃいいいいい!!」

 

 魔女ルナと共に地に降り立った俺は、地面の上で這いつくばる敵──緑の着物を着ている長髪女──を睨みつける。

 風の四天王グリフォの力を宿した敵は、さっきまでの余裕が嘘だったかのように泣き叫んでいた。

 

「……っ!」

 

 地面の上で悶え苦しむ敵を目視した後、地面を蹴り上げる。

 片手剣──天空の剣《キャリーバーン》を握り締め、地面の上で倒れ伏す敵の下に向かって走り始める。

 走り始めた俺を見た瞬間、敵は歯を強く食い縛る。

 そして、敵は両手で握っている双剣のようなものを使うと、再び上空に浮上した。

 

「はぁ、……、はぁ……、ず、ずるい……! ま、魔女の力借りるの、反則……!」

 

「何が反則だ。そっちこそグリフォの力を借りているじゃねぇか」

 

 上空から俺を見下ろしながら、文句を告げる敵。

 そんな敵に俺は反論しながら、眉間に皺を寄せる。

 

「で、でも、ワタシは1人……! そっちは2人……! だから、えと、」

 

「ルナ」

 

「ええ、作戦Bですね」

 

 喚いている敵を無視し、俺はルナに指示を送る。

 彼女は即座に俺の意図を汲み取ると、懐に仕込んでいた札のようなものを取り出した。

 それを目視するや否や、俺は両瞼を閉じる。

 

「──瞬け、呪光」

 

 両瞼を閉じたその瞬間、ルナが取り出した札のようなものが眩い光を発する。

 すると、上の方から敵の奇声が聞こえてきた。

 

「あぅ……! 目が……!」

 

 両瞼を開ける。

 眩い光で目が眩んでしまった敵の姿を目視する。

 敵は目を瞑ったまま、焦った様子の声を上げていた。

 それを認知した途端、俺はルナに視線を送り、『作戦B2』と呟く。

 

「──呪法『風律』。風よ、我が指に従え」

 

 黒い竜巻が俺の身体を覆う。

 黒い竜巻は轟音のようなものを発すると、俺の身体を真上に吹き飛ばした。

 天高く跳び上がる俺の身体。

 黒い竜巻に押し飛ばされた俺の身体は、真っ直ぐ真上に飛翔すると、上空で佇んでいる敵の下に辿り着いた。

 

「せやっ!」

 

 片手剣を振るう。

 敵の脳天目掛けて真っ直ぐ振り下ろす。

 片手剣を敵の頭に叩き込む。

 クリティカルヒット。

 甲高い音が鳴り響くと同時に、敵のHPが大きく削れる。

 

「あいたっ!?」

 

 俺の一撃を喰らった所為で、宙に浮けなくなったのだろう。

 宙に浮いていた敵の身体が、地面に墜落する。

 頭から落ちた敵は苦悶を訴える声を口から出すと、地面の上で悶え苦しみ始めた。

 

(追撃チャンスだ……!)

 

 俺の身体が重力に引っ張られ、落下し始める。

 先に地面に落ちた敵に向かって落下し始める。

 俺は息を短く吐き出すと、地面の上で蹲る敵目掛けて片手剣を振り下ろ──

 

「な、舐めるなぁ!」

 

 ──そうとするも、突如発生した竜巻が俺の身体を弾き飛ばした。

 

「くぅ……!」

 

 敵の手により生み出された突風が、俺の身体を再び天目掛けて吹き飛ばす。

 俺の身体は再度上昇し、地面から遠ざかる。

 

「こ、これでお前は、お、終わりだ……!」

 

 そう言って、敵は天に向かって吹き飛ばされた俺を睨みつける。

 そして、両手で握っている双剣のようなものを握り締めると、攻撃を仕掛け──

 

「ユウさん!」

 

 ──るよりも先に、ルナが動いた。

 箒に跨ったルナが俺の下に向かって非常する。

 そして、再び落下し始めた俺の方に手を伸ばすと、右手を握るよう催促した。

 

「……っ!」

 

 差し伸べられたルナの手を握る。

 その瞬間、敵の方から槍を模した風の塊が射出された。

 迫り来る風の槍。

 それを俺は左手でルナの手を握りながら、右手で握っている片手剣で受け流す。

 飛んできた風の槍を片手剣で受け流す。

 

「ちっ……! ま、魔女が厄介……!」

 

「ありがとうございます、目隠れ女さん。それ、私にとって褒め言葉です」

 

 箒に跨ったルナと共に地面に降りる。

 俺は握っていたルナの手を離すと、間髪入れる事なく、敵の下に向かって駆け出す。

 迫り来る俺を目にするや否や、敵は双剣のようなものを振るうと、再び上空──俺の攻撃が届かない位置──まで浮上してしまった。

 

「な、なんで、お前、わ、ワタシの攻撃に対応できる……!? げ、ゲームではなかった筈だろ、ワタシの攻撃……!?」

 

 息を切らしながら、敵は俺に疑問の言葉を投げかける。

 俺はそれに敢えて答えた。

 

「想定していたんだよ、この状況を」

 

「……は?」

 

「ロックゴレム戦の時のように、ボスの力を宿したプレイヤーが敵に回る。ボスの力を使って、俺に未知の攻撃を仕掛けてくる。そう予想しておいたから、事前にシュミレートしていたんだよ。この状況を」

 

「……は? は?」

 

「『自分が風神グリフォの力を使えるなら』という仮定を組み立てる事で、お前の攻撃パターンを事前に予想しておいた。その結果、魔女(ルナ)の力が必要不可欠である事に気づいた」

 

 敵の疑問に答えながら、俺はルナの準備が整うまでの時間を稼ぐ。

 作戦Dを実行するための時間を稼ぐ。

 

「もしグリフォの力を使えるんだったら、敵の攻撃が届かない空から一方的に攻撃し続ける。そう思ったから、俺はルナの力を借りたんだよ。空を自在に飛び回れる魔女(ルナ)の力を」

 

 敵の攻撃は予知できない。

 けれど、その力の源がグリフォならば、予想する事ができる。

 ゲームの中でグリフォを倒しまくったからこそ、予想する事ができる。

 ゲームの知識があるが故に、敵の挙動を予想する事ができる。

 

「俺の予想を超えない限り、お前に勝ち目はない。大人しく降伏しろ。じゃないと、俺はお前を……」

 

「な、なら、……!」

 

 そう言って、敵は両手で握っていた双剣のようなものを手放す。

 

「お、奥の手を使う……!」

 

「は?」

 

 俺が予想だにしなかった一言を呟く敵。

 俺が首を傾げたその時。

 敵は何処からともなく『木の棒』を取り出した。

 

 

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