リバース・クエスト〜女体化した俺、ティンティンを取り戻すため狐耳魔女と異世界を駆け巡る〜   作:八百板典所

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四十九話

「じゃあ、ユウさん。──脱いでください」

 

「は?」

 

「それじゃあ、失礼つかまつる」

 

「つかまつるな」

 

 真剣な目をしたまま、俺の下に近寄ろうとするルナ。

 そんなルナの頭に俺は軽くチョップする。

 

「いや、もっと言葉重ねろよ。何で脱がなきゃいけないんだよ」

 

「いや、セッ○スしたいなぁって」

 

「俺の身体を調べる話は何処に行った!?」

 

「あんなの、とうの昔に終わりましたよ。今は私とユウさんの初夜の話です」

 

「勝手に終わらせるな! まだ何も解決されていないだろうが!

 

「いや、でも、ユウさんの身体を調べるには私の力では無理そうですし。大魔女の力を借りないと」

 

「よし、分かった。じゃあ、大魔女さんの所に行こうか」

 

「え、レズセッ○スは?」

 

「しねぇよ」

 

「え、ユウさん、今の状況分かって言ってるんですか。あとちょっとで、エンディング迎えるんですよ? あとちょっとでユウさんは男に戻っちゃうんですよ? ──女の子の気持ちいい、体験しなくていいんですか」

 

「しなくていいから。さっさと大魔女さんの所に行くぞ」

 

「で、本当は?」

 

「しつけぇ! 女の子の気持ちいいなんて体験しなくていいって言ってるだろ!」

 

「強がらなくてもいいですよ。私はちゃーんと分かってますから」

 

「何その理解者面!? というか、俺、全然強がってないから!」

 

 ルナに激しいツッコミを繰り出した所で閑話休題。

 『大魔女と連絡取って来まーす!』と告げたルナを見送った後、俺は自室に向かう。

 家を留守にした所為なのか、部屋の中は埃っぽくなっていた。

 換気するため、窓を開けようとする。

 だが、自宅を覆っている葉っぱや蔦の所為で、窓を開ける事ができなかった。

 

「……特に変わった所はなさそうだな」

 

 部屋の中を見渡す。

 部屋はあの日──俺が女になった日──と同じ状態だった。

 いつも寝起きしているベッド。

 普段使っている学習机。

 床に敷かれた絨毯に参考書や漫画が詰め込まれた本棚。

 そして、俺の姿を映す姿見。

 

「……」

 

 姿見の前に立つ。

 今の自分の姿をじっと見つめる。

 そこに映っていたのは、すっかり見慣れてしまった自分──女体と化した己の姿だった。

 腰まで伸びた、艶のある美しい絹のような長い金髪。

 幼さを仄かに残しながらも、凛とした印象を与える美しい顔。

 高くて形が整った鼻。

 ビックなハンバーガーなんて食べられないんじゃないかと思うくらい小さな口。

 宝石のように煌めく金の瞳。

 二重瞼で少しツリ気味の大きな目。

 そして、モデルのように小さい顔を支えるスラッとした首。

 白くて細い腕。

 黒を基調としたドレスに身を包んだ身体は、色白で透明感溢れる素肌の一部を晒しつつ、たわわに実った乳房を厭らしく揺らしている。

 華奢な体軀の金髪金眼の美女が姿見に映し出されていた。

 

「……この姿も、もうそろそろおさらばか」

 

 見慣れてしまった所為なのだろうか。

 この女体化した己の姿が、あとちょっとで見納めと思うと名残惜しくなってしまう。

 いや、男に戻りたいよ?

 ティンティン取り戻したいよ?

 でも、それとこれとは話が別というか。

 元の男の身体よりも何億倍も見目麗しくなった身体を捨てるのは勿体無いと言うか何というか。

 何化知らないけど、この美女の姿とおさらばになってしまうと思うと寂しさを感じる訳で。

 もう少しだけ、この女体(すがた)でいてもいいかなみたいな事を思っちゃう訳で。

 何というか、アレだ。

 もっと女の子でしか経験できないような事を経験したかったみたいな事を思っちゃう訳で。

 ほら、男の時にはできないけど、女の時にしかできない事ってあるじゃん。

 例えば、可愛い服を着るとか。

 男にナンパされるとか。

 この長い髪を使って遊ぶとか。

 こんだけ長いと、ツインテールにしたり、ポニーテイルにしたりできるだろうな。

 あ、そういや、男の味覚よりも女の味覚の方が甘いものを美味しく感じられるって聞いた事があるような。

 それなら戻る前に一度ケーキバイキングとかしてみたい。

 男に戻る前に女じゃなきゃ味わえない事、全部やってみたい。

 

『──女の子の気持ちいい、体験しなくていいんですか』

 

 先程のルナの言葉が脳裏を過ぎる。

 この際だ。

 正直になろう。

 

 

 ……女の子の気持ちいい、体験してみたいです。

 

 

「〜〜〜〜〜!!」

 

 自らの本音を自覚した途端、顔が真っ赤になる。

 たこ焼き焼けるんじゃないかと思うくらい、頬の温度が急上昇してしまう。

 いや、待って。

 言い訳。

 言い訳させて欲しい。

 男なら、みんな思った事あるだろ!

 女の子の気持ちいい、体験してみたいって!

 女の性的快感って、男が感じる性的快感の数倍って言うじゃん!

 本当にそうなのかどうか確かめてみたいって思うのが、男じゃん!

 ルナの前では強がっていたけど、俺、本当はエッチなんだよ!

 年相応にエッチな事に興味あるんだよ!

 だから、えと、何というか、その、女の子の気持ちいいを経験したいって思うのは当然と言いますか。

 この大きな胸を思う存分揉んだり、アソコを弄ったりとかしてみたいと言いますか。

 とにかく!

 俺だって思春期の男の子だから、あんな事やこんな事経験してみたいって思っちゃうんだよ!

 だから、俺は悪くねぇ!

 

「……」

 

 鏡に映る自分の姿をじっと見つめる。

 鏡に映る金髪金眼の美女(じぶん)は頬を真っ赤に染めながら、大きな目を潤ませていた。

 まるで何かを求めているかのように。

 

(やばい。変な気分になってしまった)

 

 自らを落ち着かせるため、深呼吸を開始する。

 息を吸う。

 そして、吐く。

 たったそれだけの行為で胸にぶら下がっている乳肉は、見る者の情欲を煽るかのように、たぷんと揺れた。

 

「………」

 

 心臓がドクンドクンと痛い程に高鳴る。

 そういや、女になってから一度も性欲を解消していない。

 女になってから常にルナと行動していたから、一度もそういう行為を行っていない。

 だからなのか。

 ルナがいないという状況も重なって、つい魔が差してしまった。

 

「……よし」

 

 脳内ステータス画面を弄る。

 着ている衣服を外す。

 外した途端、姿見に映る美女(じぶん)は下着姿になってしまった。

 半裸になった自分の姿を見つめる。

 窮屈だと言わんばかりに、黒いブラジャーの中で暴れている大きな乳房。

 くびれと柔らかさを兼ね備えた、肉感的過ぎる腰。

 むちっとした肉感たっぷりの艶めかしい太股。

 そして、下着の布を押し上げている、少し小ぶりなアソコ。

 この姿ももう見納めだという事もあってか、今の自分の姿が、とても色っぽく見える。

 

(……ちょっとだけなら)

 

 息を少しだけ荒上げ、鏡に近づく。

 そして、艶めかしい両手をゆっくりと自身の豊満な胸に向かって伸ばしてゆく。

 ブラジャーを外そうとする。

 だが、その途中で。

 

「ゴクリ!」

 

 ベッドの下から、何か唾を飲み込むような音が聞こえて来た。

 俺は鏡に伸ばしていた手を下ろし、ベッドの下を注視する。

 じっと目を凝らすと、暗がりの中に爛々と輝くサファイアの瞳が浮かんで来た。

 

「「…………」」

 

 目が合う。

 ベッドの下に隠れていたルナと目が、合ってしまう。

 その瞬間、俺は頬をこれ以上ないくらいに紅潮させた。

 

「……い、いつからいた?」

 

 ルナに疑問を投げかける。

 彼女は俺から目を逸らすと、『……ユ、ユウさんが部屋に入る前から』と呟いた。

 

「……そうか。最初から見ていたのか」

 

「はい。今のユウさんを1人にしたら、×××ーしている所を見られると思って、つい」

 

「…………そうか」

 

 どうやらルナには何もかも見透かされていたらしい。

 

「……いや、まさか本当にするとは思いませんでした。……ユウさん、その、……溜まって、いたんですね」

 

「〜〜〜〜〜!!」

 

 視界がボヤける。

 恥ずかしさで頬がこれ以上ないくらいに紅潮する。

 俺は涙目になると、ベッドの下から出て来たルナの頭目掛けて八つ当たり(チョップ)を繰り出した。

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