リバース・クエスト〜女体化した俺、ティンティンを取り戻すため狐耳魔女と異世界を駆け巡る〜   作:八百板典所

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六十七話

 敵の急所──濁った球体にヒビが入る。

 その瞬間、敵──絶対悪は両手で頭を抱えると、今まで聞いた事のない絶叫を上げ始めた。

 

『あがああああああ!!!!!』

 

 悶え苦しむ敵。

 そんな敵を睨みながら、俺は追撃を繰り出す。

 先ず逆袈裟斬り。

 敵の頭上で煌めく濁った球体目掛けて斬撃を繰り出す。

 次に袈裟斬り。

 敵の頭上で煌めく濁った球体に鋭い斬撃を浴びせる。

 最後に突き。

 敵の頭上で煌めく濁った球体に向かって渾身の突きを放つ。

 高速で繰り出した3連撃。

 それらは敵の急所に突き刺さると、敵に致命的な傷を与えた。

 

『あああ、……! ああああああ……!!』

 

 敵の頭上で煌めく濁った球体に幾多の亀裂が生じる。

 球体にヒビが入ると同時に、敵の口から痛みを訴える声が引き出される。

 痛がる敵を見て、俺は、俺達は思う。

 『後少しだ』と思う。

 だから、俺は敵に引導を渡すため、片手剣を振ろう──としたその時、敵が爆発した。

 

『あああああ!!!!!」

 

 敵の身体が爆炎と爆風に包まれる。

 その瞬間、俺の身体は爆炎に炙られ、爆風によって吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐぅ……!」

 

 ほんの少しだけHPバーが削れる。

 両手に軽い火傷を負い、爆風によって吹き飛ばされた身体が地面に叩きつけられる。

 急いで体勢を整えようとする。

 その瞬間、敵の視線が俺の身体を射抜いた。

 

『プレイヤーネーム「ユウ」……! お前が1番邪魔だ……!』

 

 そう言って、敵は指を鳴らす。

 パチンという音を鳴らす。

 

『お前さえいなくなれば、後はどうにでもなる……! だから、!』

 

 敵の視線に憎悪が入り混じる。

 それと同時に、俺の身体にノイズが走った。

 

『一度、「この世界」を破壊する……!』

 

 敵の声が響き渡る。

 響き渡った途端、地面が激しく揺れ始める。

 空に幾多の亀裂が走る。

 現在地──絵心公園全体にノイズが走る。

 

(何が起き……っ!?)

 

 自分の右腕を見る。

 純白に艶めく透明感溢れる肌。

 シミ一つない筈の白い肌が、徐々に小麦色に変わる。

 真夏の太陽によって小麦色に焼けた肌に変わり始める。

 それを見て、俺はすぐさま気づいた。

 自分の女体(からだ)が男体(もと)に戻りかけている事実を。

 女から男に戻り始めた事実を。

 俺は一瞬で気づいてしまう。

 

「やばっ……!」

 

 冷や汗が背中を伝う。

 やばい。

 このまま元に戻ったら、元の男の身体に戻ってしまったら、闘えなくなってしまう。

 今、俺が敵──絶対悪と闘えているのは、女体(このからだ)だからだ。

 今、元に戻ってしまったら、ただの男子高校生になってしまう。

 今、元に戻ってしまったら、何もできなくなってしまう。

 

「ちっ……!」

 

 男に戻りたくて、俺は此処までやって来た。

 男に戻りたくて、俺は数多の敵と闘ってきた。

 けど、今男に戻るのはヤバ過ぎる。

 敵──絶対悪に勝つチャンスを喪失してしまう。

 だが、覆水が盆に返らないように、動き出した時は止まらない。

 俺の身体は着実に確実に女から男に戻り始める。

 『この世界』は確実に破滅の一途を辿ってしまう。

 どうにかしなければ。

 そう思った途端、俺はルナ──魔女であり俺の恋人でもある狐耳の少女──に指示を送った。

 

「ルナ! 時間を稼いでくれ!」

 

「はいはーい! 分かりましたっ!」

 

 理由を聞く事なく、ルナは俺の指示に従う。

 

「時間稼ぐんやなっ! 分かったで!」

 

「総員! 引き続き、攻撃を行えっ! ルナとエリザはプレイヤーネーム『ユウ』の護衛っ! いいなっ!? 分かったら動けっ!」

 

 俺の声を聞くや否や、エリザさんと大魔女(ウル)さん達が動く。

 俺が『準備』するための時間を稼ぐため、魔女達が動き始める。

 それを眺めながら、俺は片手剣──騎士の剣を投げ捨てた。

 そして、脳内ステータス画面から木の棒を引っ張り出す。

 

(これだけはやりたくなかったが、背に腹は代えられねぇ……!)

 

 そう思いながら、俺は木の棒を真上に放り投げる。

 そして、もう一度木の棒を取り出すと、放り投げた木の棒と取り出した木の棒を『重ねた』。

 

『──ノーリスクで使えるバグ技、リバクエには存在しねぇぞ』

 

 以前、自分が吐き出した言葉を思い出しながら、俺は取り出した木の棒と真上に放り投げた木の棒を『重ね』続ける。

 その結果、重ねまくった木の棒は真っ黒に染まってしまった。

 

(よし……! 武器はできた……! あとは……!)

 

 すぐさま屈伸を始める。

 屈んだ後、その場でジャンプする。

 屈伸5回行った後、ジャンプ6回行う。

 そして、装備している木の棒を真上に投げた後、もう1回屈伸。

 落ちてくる木の棒をキャッチしつつ、その場で回避アクションを行う。

 その瞬間、俺の身体は『4倍速』になった。

 

(よし……! 4倍速バグ技成功……!)

 

 4倍速バグが成功するや否や、俺は木の棒──バグ技で攻撃力9999にしたもの──を握り締める。

 地面を思いっきり蹴り上げる。

 魔女達と闘っている敵の下に向かって走り始める。

 敵との距離は大体40メートル。

 その距離をたった1秒で詰める。

 たった1秒で詰めた後、魔女達と闘い続けている敵──敵の頭上で煌めく濁った球体に向けて黒い木の棒を振るう。

 木の棒を振るった瞬間、木の棒は敵の腕に減り込んだ。

 

『くっ……!』

 

 間一髪の所で俺の攻撃を防いだ敵は、苦しそうに表情を歪ませる。

 そんな敵を睨みながら、俺は敵に言葉をかける事なく、木の棒を敵の急所目掛けて振るった。

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