リバース・クエスト〜女体化した俺、ティンティンを取り戻すため狐耳魔女と異世界を駆け巡る〜   作:八百板典所

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六十八話

 バグらせた木の棒で敵の急所──敵の頭上で煌めく濁った球体──を叩こうとする。

 だが、俺の攻撃は直撃寸前の所で避けられてしまった。

 

『くそ……!』

 

 俺の攻撃を避けるや否や、敵は稲妻を纏った両手で俺に触れようとする。

 すぐさま俺は、迫り来る敵の両手を避けると、敵の胴目掛けて木の棒を叩き込んだ。

 敵の身体を覆う不可視の壁が木の棒を遮る。

 だが、衝撃まで殺し切れなかったんだろう。

 敵の両脚は地面から引き剥がされると、二〜三歩だけ後退した。

 

「いくぜ」

 

 敵が体勢を整えるよりも先に俺は動く。

 地面を蹴り上げた瞬間、4倍速バグで高速移動できるようになった俺の身体は、目にも映らぬ速度で動き始めた。

 一瞬で敵との距離を詰める。

 真っ黒に染まった木の棒を振るう。

 漆黒に染まりし斬撃が敵の頭上で煌めく濁った球体目掛けて放たれる。

 敵は地面に右膝を着けると、迫り来る俺の斬撃を紙一重で避けてしまった。

 

『くそ……!』

 

 俺の攻撃を避けるや否や、敵は炎を両掌に纏い始める。

 そして、炎を纏った掌を握り締めると、俺目掛けて拳を放ち始めた。

 

「……っ!」

 

 黒い木の棒──バグ技で攻撃力9999になった木の棒で敵の拳を弾く。

 敵の右の拳を弾いた途端、すぐさま敵の左拳が俺の方に差し迫った。

 

『くそっ……!』

 

 敵の左拳を黒い木の棒で受け流す。

 敵の拳と黒い木の棒が衝突した途端、眩い火花が舞い散った。

 

『くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそぉ!』

 

 敵の拳が幾度となく押し迫る。

 俺はそれらを避ける、受け流す、受け止める。

 敵の拳が放たれる度、地面が削れた。

 敵の拳が木の棒に当たる度、空気が弾けた。

 敵の拳を木の棒で受け流す度、火花が舞い散った。

 

『くそおっ!』

 

 敵の拳と木の棒のぶつかり合う音が空気を震撼させる。

 敵の拳が地面を抉る。

 木の棒が地面を削る。

 木の棒を振るう度、幾多の火花が舞い散る。

 敵が拳を振るう度、幾多の火花が弾け飛ぶ。

 敵は右の拳と左の拳を交互に打ち出す。

 俺は木の棒を振るう事で敵の拳を受け流す、跳ね返す、受け止める。

 敵の攻撃を防ぐ度、無数の火花が空気を焦がした。

 絵心公園内(げんざいち)に火花の弾ける音が響き渡る。

 俺はそれを聞き流すと、左脚を軸に一回転する。

 そして、右脚を前に踏み出すと、敵の頭上目掛けて木の棒を振り上げた。

 

『ごがあっ!?」

 

 直撃。

 木の棒が敵の頭上で煌めく濁った球体に減り込む。

 敵の急所──濁った球体が凹む。

 すると、真っ白に染まった左腕が小麦色に焼け始めた。

 

(もう時間がねぇ……!)

 

 あと少しで男に戻ってしまう事を痛感する。

 それを理解した俺は焦りを更に募らせると、追撃を繰り出す。

 

「はあっ!」

 

 真上にジャンプする。

 宙で一回転した後、敵の頭上目掛けて木の棒を振り下ろす。

 木の棒が敵の頭上で煌めく濁った球体に突き刺さる。

 クリーンヒット。

 だが、壊す事はできず。

 すぐさま中空で身体を捻る。

 中空で一回転し、追撃を濁った球体に叩き込む。

 クリーンヒット。

 だが、破壊まで至らず。

 

『ああ……! あああ!!!』

 

 地面に着地する。

 そして、すぐさま体勢を整え、濁った球体に向かって突きを繰り出そうとする。

 

『調子に乗るなぁぁああああ!!』

 

 だが、俺の突きは敵が繰り出した裏拳によって弾かれてしまった。

 

(弾かれた……!? 敵の集中力が増している……!? 窮地に追いやられた事で神経が研ぎ澄まされているのか……!?)

 

 即座に現実を認識する。

 窮地に追い込まれた敵が数分前よりも強くなっている事を実感する。

 その事実を認識した途端、敵の目の色が変わった。

 

「……っ!?」

 

 敵の拳から濁った色の光が放たれる。

 その光は途轍もない圧力とオーラを秘めていた。

 それを見て、背筋が震える。

 『アレに当たったら死ぬ』という事実が脳髄を揺るがす。

 

『覚悟しろ……! プレイヤーネーム『ユウ』……! お前だけは私が殺……』

 

「──特殊呪法『破魔矢』」

 

 殺す。

 俺への殺意を口にしようとした途端、敵の頭上で煌めく濁った球体に赤い矢が突き刺さる。

 赤い矢が突き刺さった途端、濁った球体から黒い液体が噴き出した。

 

「怨敵よ。我が矢に平伏せ」

 

 矢が飛んできた方を見る。

 そこには狐耳の少女──魔女ルナが立っていた。

 

『あがああああああ!!!』

 

 ルナの攻撃により敵の口から聞くに耐えない断末魔が引き出される。

 致命的な一撃だったのだろう。

 頭を抱えながら、血の涙を流す敵の姿は今まで見た事ないくらいに取り乱していた。

 

「今だっ! 総員攻撃っ!」

 

 大魔女──ウルさんの指示が響き渡る。

 その途端、上空にいた魔女達が、地上にいる魔女エリザさんが一斉に攻撃を仕掛けた。

 すぐさま俺は後方に跳ぶ。

 魔女達の攻撃に巻き込まれないよう、安全な場所に退避する。

 後方に跳んだ途端、魔女達の魔法(こうげき)が濁った球体に突き刺さる。

 魔女達の魔法(こうげき)は凄まじい火力だった。

 雨のように降り注ぐ火炎が、氷柱が、稲妻が、岩石が、敵の体に降り注ぐ。

 エリザさんの放った緑の竜巻が敵の身体を斬り刻む。

 

「呪法『爆律』──爆炎よ、我が怨敵を消し飛ばしたまえ」

 

 ルナが放った札のようなものが敵の下に辿り着くと、勢い良く爆発する。

 敵の身体が大きな火柱に炙られる。 

 敵の身体が爆炎と爆煙に包まれる。

 

「やりましたかっ!?」

 

 この場面で言ったらいけない一言をルナが言ってしまう。

 その瞬間、爆煙の中から敵が飛び出した。

 

『くぅ……!』

 

 爆煙の中から出てきた敵の手には光り輝く槍のようなものが握られていた。

 

『あああああ!!』

 

 雄叫びを上げながら、敵は光り輝く槍のようなものを振るう。

 その瞬間、眩い光が俺達の視界を真っ白に染め上げた。

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