アニポケ転生者物語   作:投稿者

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第8話

「よう、サトシ、タケシ。奇遇だな」

 

俺が声をかけると、二人は待ってましたとばかりにこちらを振り返った。

 

「ミナト!ちょうどいいところに!」

「やあ、ミナト。君もハナダジムに挑戦か?」

 

サトシとタケシは、それぞれニビジムでの一件もあってか、俺に対してどこか期待の眼差しを向けている。俺は肩をすくめながら、ハナダジムの華やかな建物を一瞥した。

 

「まあな。でも、その前に少し街を観光しようかと思ってたところだ。それより、お前らこそどうしたんだ?ジムの前で唸り込んじまって」

 

俺の言葉に、サトシは子供のように顔をしかめた。

 

「だってよー、ここのジム、水タイプなんだぜ?俺のピカチュウじゃ、相性が悪すぎるんだよ!」

「まあ、電気タイプと水タイプだから、一概に不利とは言えないが……。ここのジムは、少し特殊でな」

 

タケシが、苦笑しながら説明してくれた。ハナダジムは、ジムリーダーである美人三姉妹が繰り出す「水中バレエショー」が有名で、バトルもその延長線上にあるらしい。プールのようなフィールドで、華麗に舞う水ポケモンたちを相手にするのは、確かに一筋縄ではいかなそうだ。

 

「なるほどな。面白そうだ。とりあえず、中に入ってみるか」

 

俺たちは連れ立って、ハナダジムの自動ドアをくぐった。内部は、まるでアイドルのコンサート会場のようだった。巨大なプール、飛び込み台、そして観客席。ちょうどプールでは、きらびやかな衣装を身にまとった三人の女性が、アシカのようなポケモン――ジュゴンと共に、ショーの練習をしているところだった。

 

「あら、挑戦者?ごめんなさいね、今、私たちはショーの練習で忙しいの」

「あなたみたいな子供の遊びに付き合ってる暇はないのよ」

「そうそう。ほら、ブルーバッジよ。あげるから、これで帰ってちょうだい」

 

三姉妹――サクラ、アヤメ、ボタンは、練習を中断されたのが気に食わないのか、サトシをぞんざいに扱い、いとも簡単にバッジを差し出してきた。その態度は、ニビジムで戦ったタケシの真摯さとは、あまりにもかけ離れていた。

 

「そんなの、いらねえよ!俺は正々堂々バトルして、バッジを手に入れるんだ!」

 

サトシが怒りを露わに叫んだ、その時だった。

 

「――ちょっと待った!」

 

プールの反対側から、鋭く、しかし凛とした声が響いた。声の主は、オレンジ色の髪をサイドテールにした、気の強そうな少女だった。

見間違えようがない。アニメで何度も見た、ハナダジムが誇るおてんば人魚、ジムリーダーのカスミその人だ。

 

「そんなことで、ハナダジムの誇りを汚さないでよ!」

 

カスミは姉たちに食ってかかる。しかし、姉たちの反応は冷ややかだった。

 

「あら、カスミじゃない。あんたにジムリーダーが務まるわけないでしょ」

「そうよ。可愛いポケモンも持ってない、うちのジムのおてんば娘なんだから」

 

姉たちの言葉に、カスミはぐっと唇を噛み締めた。その表情に浮かぶのは、強い悔しさ。俺は、その様子を冷静にグラス型デバイス越しに観察していた。デバイスが、カスミの微細な表情の変化や心拍数の上昇を捉え、感情データを分析していく。

 

『対象:カスミ。感情分析結果:【強い悔しさ:85%】【ポケモンへの愛情:78%】【姉たちへのコンプレックス:92%】。表面的には強気な言動とは裏腹に、内面ではジムリーダーとしての誇りと、自信のなさとの間で激しく葛藤している状態』

 

「(……なるほどな)」

 

俺には、見えた。彼女がただの意地っ張りではないこと。自分のポケモンを、そしてこのハナダジムを、誰よりも愛していること。その誇りを守るために、たった一人で戦っていること。

 

その時、沈黙を破ったのはサトシだった。

 

「俺は、あんたたち三人には用はない。戦うなら、そいつとだ!」

 

サトシは、まっすぐにカスミを指差した。

 

「そいつの方が、よっぽどジムリーダーの顔をしてるぜ!」

 

サトシの言葉に、カスミだけでなく、姉たちも、そして俺の隣にいたタケシさえもが目を見開いた。無鉄砲で、子供っぽいと思っていた少年が、物事の本質を、誰よりも正確に捉えていた。

 

カスミは、呆然とした表情でサトシを見つめている。やがて、その瞳に強い決意の光が宿った。

 

「……いいわ。その挑戦、受けてあげる!」

 

サトシとカスミが、ジムの中央にあるバトルフィールドで対峙する。その直前、俺はサトシの隣に歩み寄り、デバイスの画面をさりげなく見せた。

 

「サトシ。水タイプのポケモンは、時に波のように予測不能な動きをする。だが、その速さこそが、最大の武器だ。そして……」

 

俺は言葉を切り、サトシの肩を叩いた。

 

「トレーナーとポケモンの信頼関係が、時には相性を覆すほどの力になる。お前とピカチュウなら、できるはずだ」

 

俺の言葉に、サトシはハッとした顔で頷いた。そして、その隣を通り過ぎる時、俺は初めて、カスミにも声をかけた。聞こえるか聞こえないかくらいの、小さな声で。

 

「あなたのポケモンたち、すごく信頼に満ちた目をしている。きっと、あなたと戦えることを喜んでいるはずだ。素晴らしいジムリーダーの顔ですよ」

 

デバイスが示した、彼女の本質。俺は、それをただ伝えただけだ。

 

俺の言葉に、カスミの肩がぴくりと震えた。彼女は驚いたように振り返り、俺の顔をじっと見つめた。その瞳が、わずかに潤んでいるように見えたのは、きっと気のせいではないだろう。

 

俺は何も言わず、ただ観客席へと向かった。タケシが、興味深そうな顔で俺を見ている。

 

さあ、始まる。サトシとカスミ。二人のトレーナーの、誇りをかけた戦いが。

そして、俺が放った二つの小さな波紋が、どんな未来を描き出すのか。

 

俺は、静かな興奮と共に、その戦いの幕開けを見守るのだった。

チラシ裏から表にでるべきか

  • チラシ裏でいい
  • 表にでてもいい
  • まだ表にでるのは早い
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