アニポケ転生者物語 作:投稿者
第91話
カントー地方の南に広がる、大小様々な島々からなる海域、オレンジ諸島。
温暖な気候と豊かな自然に恵まれたこの場所は、カントーとは異なる独自の生態系を持つポケモンたちの楽園だ。
俺とラプラスは、長い船旅の末、その玄関口であるダイダイ島に到着した。
桟橋に降り立った瞬間、鼻腔をくすぐるのは甘い花の香りと、少し湿った潮風。
ヤシの木が風に揺れ、色鮮やかなハイビスカスが咲き乱れる光景は、まさに南国そのものだ。
「ここがダイダイ島か。……平和だなあ」
ラプラスをボールに戻し、俺は地図を確認する。目的地は、ウチキド博士の研究所だ。
サトシたちが、オーキド博士から預かったGSボールを届けに向かっているはずだ。
「(GSボール……。結局、原作でも中身が明かされなかった謎のアイテム。俺のテスターとしての権限で、少しでも解析できればいいんだが)」
そんなことを考えながら、俺は研究所を目指して歩き出した。
研究所の敷地に入ると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。
「こらこら、そんなに慌てないで。ご飯は逃げないわよ」
女性の声だ。ウチキド博士だろうか。
中庭を覗くと、白衣を着た美しい女性が、ラフレシアやキレイハナたちにエサを与えている。そして、その横で必死に手伝っている見慣れた後ろ姿があった。
「タケシ?」
「おや、ミナト君じゃないか!」
タケシが振り返る。その顔は、これまでの旅で見たことがないほどに緩みきっていた。
「よう、タケシ。サトシたちは?」
「ああ、今博士とGSボールの話をしているところだよ。……それより見てくれよ、この素晴らしい研究所を!そして何より、ウチキド博士の美しさを!」
タケシは熱弁を振るう。どうやら、ウチキド博士に一目惚れしてしまったらしい。
研究所のロビーに入ると、サトシとカスミ、そしてウチキド博士が難しい顔で金色のボールを囲んでいた。
「ミナト!」
「よう、サトシ。無事に着いたみたいだな」
俺たちは再会を喜び合った。ウチキド博士にも挨拶を済ませ、GSボールを見せてもらう。
不思議な輝きを放つ、謎のモンスターボール。ポリゴン2で軽くスキャンしてみたが、内部構造は完全にブラックボックス化されており、解析不能だった。
「(やっぱり、セレビィ関連のイベントフラグか……。時渡りの力でも使わない限り、開かないのかもしれない)」
その夜、研究所で歓迎会が開かれた。
楽しい食事の席だったが、タケシだけはどこか思いつめたような顔をしていた。
宴が終わり、星空の下。
タケシが、俺たちに切り出した。
「サトシ、カスミ、ミナト。……俺、ここに残ろうと思うんだ」
「えっ!?」
サトシが驚く。
「ウチキド博士の研究は素晴らしい。でも、彼女は研究に没頭するあまり、生活能力が皆無なんだ。……誰かが支えてあげなきゃいけない。俺は、ここでポケモンブリーダーとしての修行をしながら、博士を助けたいんだ」
タケシの目は真剣だった。単なる恋心だけではない、ブリーダーとしての探究心と、責任感。
「……分かったよ。タケシが決めたなら、俺は止めない」
サトシは寂しそうだが、力強く頷いた。
「でも、これから食事とかどうしよう……」
カスミが不安そうに言う。タケシの料理は、旅の生命線だったからだ。
「安心しろ。俺が一緒に行くよ」
俺が言うと、二人はパッと顔を上げた。
「えっ、本当かミナト!?」
「ああ。俺もこの諸島を調査するつもりだったしな。タケシほどの料理は作れないかもしれないが、アウトドアの知識なら負けないつもりだ。……アドバイザーとして、同行させてくれないか?」
「やったー!心強いぜ!」
「ミナトがいれば百人力ね!」
そこに、茂みからガサゴソと音がした。
現れたのは、バンダナを巻き、スケッチブックを持った青年だった。
「やあ、君たちが噂のカントーリーグ出場者かい?僕はケンジ。ポケモンウォッチャーをしているんだ」
ケンジは、俺の腰にあるフシギバナやカイリューのボールを見て、目を輝かせた。
「すごい!こんな珍しいポケモンを連れたトレーナーに会えるなんて!ぜひ同行させてくれないか?君たちのポケモンを観察させてほしいんだ!」
こうして、俺たちはタケシと別れ、ケンジを加えた新たな4人パーティで、オレンジ諸島の冒険を始めることになった。
翌朝。
桟橋には、見送りに来たタケシとウチキド博士の姿があった。
「じゃあな、タケシ!元気でやれよ!」
「ああ、お前たちもな!オレンジリーグ、応援してるぞ!」
タケシに見送られ、俺たちは次の島へ向かう……はずだったが、飛行船のチケットは売り切れだった。
「どうしよう……」
途方に暮れるサトシたちに、俺はモンスターボールを取り出した。
「心配するな。俺たちには、最高の船がある」
光と共に現れたのは、俺の相棒、ラプラス。
「キューッ!」
「さあ、乗れよ。オレンジ諸島の風を感じに行こうぜ」
俺たちはラプラスの背中に乗り込み、海へと漕ぎ出した。
遠ざかるダイダイ島。
手を振るタケシの姿が小さくなっていく。
「さあ、オレンジリーグへの挑戦だ!まずはナツカンジムを目指すぞ!」
サトシが拳を突き上げる。
俺たちの新しい旅が、波音と共に幕を開けた。
太陽は高く、海は青い。
最高の冒険日和だ。