アニポケ転生者物語 作:投稿者
ボンタン島へ向かう海上。
ラプラスの背中に揺られながら、俺たちは穏やかな時間を過ごしていた。
ケンジは早速スケッチブックを広げ、俺のラプラスの甲羅の形状や、泳ぐ時の筋肉の動きを熱心に記録している。
「素晴らしい……!この滑らかな泳ぎ、そして乗っている人間への配慮。完璧な信頼関係だね」
「ああ。こいつとは、色々な修羅場をくぐり抜けてきたからな」
俺はラプラスの首筋を撫でた。ラプラスは嬉しそうに目を細める。
その時だった。
前方の海域で、何か言い争うような声が聞こえてきた。
「おい、もっと早く泳げよ!」
「トロいんだよ!これじゃあ使い物になんねえな!」
双眼鏡で確認すると、三人の不良トレーナーたちが、小型のボートから海に向かって石を投げている。その視線の先には、一匹の小さなラプラスがいた。
まだ子供だ。群れからはぐれたのか、一人ぼっちで震えている。
「ひどい……!寄ってたかって、あんな小さな子を!」
カスミが怒りを露わにする。
「許せない……!行くぞ、みんな!」
サトシが飛び出そうとするが、ここは海の上だ。
「待てサトシ。まずは俺のラプラスで近づく。刺激しないようにな」
俺はラプラスに指示を出し、静かに不良たちのボートに接近した。
「何をしている!その子を放せ!」
俺たちが声をかけると、不良たちは悪びれもせずこちらを見た。
「あぁ?なんだお前ら。俺たちのポケモンに何しようが勝手だろ。こいつ、ゲットしたはいいけど弱くてよぉ。しつけをしてやってるんだよ」
「しつけだと?それはただの虐待だ!」
ケンジも珍しく声を荒らげる。
「うるせえ!邪魔するなら、お前らも痛い目にあわせてやるよ!」
不良たちは、ドククラゲやオニドリルを繰り出してきた。
「勝手なことばかり……!ピカチュウ、『10まんボルト』!」
「俺も加勢するぞ!カイリュー、『かみなり』!」
サトシのピカチュウと俺のカイリューの電撃が、不良たちを一網打尽にする。圧倒的な実力差に、彼らは這う這うの体で逃げ出していった。
「逃げ足だけは速いな……」
残されたのは、傷ついた子供のラプラスだけ。
人間を警戒し、威嚇の声を上げている。その瞳には、深い不信感が宿っていた。
「大丈夫か?怖くないよ」
サトシが手を伸ばすが、ラプラスは怯えて後ずさりする。無理に近づけば、逃げてしまうかもしれない。
「サトシ、無理に近づくな。……ラプラス、頼めるか?」
俺は自分のラプラスに声をかけた。
「|キュー……《怖がらないで。この人たちは悪い人じゃないわ》」
俺のラプラスが、優しく子供のラプラスに語りかける。人間には分からない、ラプラス同士の波長の言葉。
子供のラプラスの瞳から、次第に敵意が消えていく。母親に甘えるように、少しずつ俺のラプラスに近づいてきた。
「
「|キュー《ええ。私の背中を見て。この人は、私の一番のパートナーよ。そして、あの子も》」
俺のラプラスが、俺に甘える仕草を見せ、そしてサトシの方を優しく促した。
子供のラプラスは、恐る恐るサトシの方へ近づいていった。
サトシは、ポケットから傷薬を取り出し、ラプラスの傷口にそっとスプレーをした。
「痛かったな……。もう大丈夫だ」
その温かな手。嘘のない言葉。
子供のラプラスは、サトシの胸に顔を埋め、安心して涙を流した。
「……いい子だ。俺と一緒に来ないか?お母さんを探す旅に出よう」
サトシの真っ直ぐな瞳。子供のラプラスは、その言葉を信じることにしたようだ。
サトシのモンスターボールに、自ら入っていく。
「やった……!ラプラス、ゲットだぜ!」
「よかったな、サトシ。これで海を渡る足ができた」
「ああ!ミナトのラプラスのおかげだ!ありがとな!」
こうして、俺たちは二匹のラプラスに乗って、旅をすることになった。
俺のラプラスが先導し、サトシのラプラスが一生懸命についていく。まるで親子のようなその姿は、見ていて心が温まる光景だった。
海風が、俺たちの背中を押している。
次の島、ボンタン島はもうすぐだ。
そこには、サトシにとって初めての、オレンジリーグのジムが待っている。