アニポケ転生者物語   作:投稿者

104 / 344
第92話

ボンタン島へ向かう海上。

ラプラスの背中に揺られながら、俺たちは穏やかな時間を過ごしていた。

ケンジは早速スケッチブックを広げ、俺のラプラスの甲羅の形状や、泳ぐ時の筋肉の動きを熱心に記録している。

 

「素晴らしい……!この滑らかな泳ぎ、そして乗っている人間への配慮。完璧な信頼関係だね」

「ああ。こいつとは、色々な修羅場をくぐり抜けてきたからな」

 

俺はラプラスの首筋を撫でた。ラプラスは嬉しそうに目を細める。

 

その時だった。

前方の海域で、何か言い争うような声が聞こえてきた。

 

「おい、もっと早く泳げよ!」

「トロいんだよ!これじゃあ使い物になんねえな!」

 

双眼鏡で確認すると、三人の不良トレーナーたちが、小型のボートから海に向かって石を投げている。その視線の先には、一匹の小さなラプラスがいた。

まだ子供だ。群れからはぐれたのか、一人ぼっちで震えている。

 

「ひどい……!寄ってたかって、あんな小さな子を!」

カスミが怒りを露わにする。

 

「許せない……!行くぞ、みんな!」

サトシが飛び出そうとするが、ここは海の上だ。

 

「待てサトシ。まずは俺のラプラスで近づく。刺激しないようにな」

 

俺はラプラスに指示を出し、静かに不良たちのボートに接近した。

「何をしている!その子を放せ!」

 

俺たちが声をかけると、不良たちは悪びれもせずこちらを見た。

「あぁ?なんだお前ら。俺たちのポケモンに何しようが勝手だろ。こいつ、ゲットしたはいいけど弱くてよぉ。しつけをしてやってるんだよ」

 

「しつけだと?それはただの虐待だ!」

ケンジも珍しく声を荒らげる。

 

「うるせえ!邪魔するなら、お前らも痛い目にあわせてやるよ!」

不良たちは、ドククラゲやオニドリルを繰り出してきた。

 

「勝手なことばかり……!ピカチュウ、『10まんボルト』!」

「俺も加勢するぞ!カイリュー、『かみなり』!」

 

サトシのピカチュウと俺のカイリューの電撃が、不良たちを一網打尽にする。圧倒的な実力差に、彼らは這う這うの体で逃げ出していった。

 

「逃げ足だけは速いな……」

 

残されたのは、傷ついた子供のラプラスだけ。

人間を警戒し、威嚇の声を上げている。その瞳には、深い不信感が宿っていた。

 

「大丈夫か?怖くないよ」

サトシが手を伸ばすが、ラプラスは怯えて後ずさりする。無理に近づけば、逃げてしまうかもしれない。

 

「サトシ、無理に近づくな。……ラプラス、頼めるか?」

 

俺は自分のラプラスに声をかけた。

「|キュー……《怖がらないで。この人たちは悪い人じゃないわ》」

 

俺のラプラスが、優しく子供のラプラスに語りかける。人間には分からない、ラプラス同士の波長の言葉。

子供のラプラスの瞳から、次第に敵意が消えていく。母親に甘えるように、少しずつ俺のラプラスに近づいてきた。

 

キュ……(本当?)

「|キュー《ええ。私の背中を見て。この人は、私の一番のパートナーよ。そして、あの子も》」

 

俺のラプラスが、俺に甘える仕草を見せ、そしてサトシの方を優しく促した。

子供のラプラスは、恐る恐るサトシの方へ近づいていった。

 

サトシは、ポケットから傷薬を取り出し、ラプラスの傷口にそっとスプレーをした。

「痛かったな……。もう大丈夫だ」

 

その温かな手。嘘のない言葉。

子供のラプラスは、サトシの胸に顔を埋め、安心して涙を流した。

 

「……いい子だ。俺と一緒に来ないか?お母さんを探す旅に出よう」

 

サトシの真っ直ぐな瞳。子供のラプラスは、その言葉を信じることにしたようだ。

サトシのモンスターボールに、自ら入っていく。

 

「やった……!ラプラス、ゲットだぜ!」

 

「よかったな、サトシ。これで海を渡る足ができた」

「ああ!ミナトのラプラスのおかげだ!ありがとな!」

 

こうして、俺たちは二匹のラプラスに乗って、旅をすることになった。

俺のラプラスが先導し、サトシのラプラスが一生懸命についていく。まるで親子のようなその姿は、見ていて心が温まる光景だった。

 

海風が、俺たちの背中を押している。

次の島、ボンタン島はもうすぐだ。

そこには、サトシにとって初めての、オレンジリーグのジムが待っている。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。