アニポケ転生者物語   作:投稿者

11 / 344
第9話

「それでは、ただ今より、ジムリーダー・カスミと、挑戦者・サトシのポケモンバトルを開始します!」

 

審判の宣言と共に、ハナダジムの観客席が沸いた。姉たちのショー目当ての客だけでなく、本物のジム戦を見に来たトレーナーたちも、固唾を吞んでフィールドを見つめている。

 

フィールドは、中央にいくつかの足場が浮かぶ、広大なプールだ。水ポケモンにとっては最高の舞台だが、電気タイプのピカチュウにとっては、足場が限られる分、不利な状況と言えた。

 

「行くわよ!私の自慢の星!行け、ヒトデマン!」

 

カスミが最初に繰り出したのは、星形の体に赤いコアが輝くヒトデマンだ。素早く水中に潜り、その姿を隠す。

 

「ピカチュウ、君に決めた!」

 

サトシも負けじとピカチュウをフィールドに送り出す。だが、ピカチュウは水が苦手なのか、足場の端で少し怖気付いているようだった。

 

「ピカチュウ、怖がるな!俺がついている!」

 

サトシの言葉に、ピカチュウは意を決したように前を見据える。その時、水中からヒトデマンが高速で回転しながら飛び出し、「たいあたり」を仕掛けてきた。

 

「ピカチュウ、かわせ!」

 

しかし、足場の悪さが災いし、ピカチュウは攻撃を避けきれずにプールへと弾き飛ばされてしまう。

 

「まずいな……」

 

隣で見ていたタケシが、呻くように言った。水中では、ヒトデマンの独壇場だ。素早い動きでピカチュウを翻弄し、次々と「みずでっぽう」を浴びせていく。

 

サトシは必死に指示を出すが、焦りからか、ピカチュウとの連携がうまくいっていない。このままでは、ジリ貧だ。

 

「(思い出せ、サトシ……!)」

 

俺は心の中で叫んだ。速さこそが、武器だと。お前とピカチュウの、信頼関係こそが力になると。

 

その時、サトシが何かを閃いたように、目を見開いた。

 

「そうだ……!ピカチュウ、水の中に入れ!」

 

「ピカ!?」

 

無茶苦茶な指示に、ピカチュウだけでなく、カスミや観客たちも驚きの声を上げる。だが、サトシは真剣だった。

 

「大丈夫だ、俺を信じろ!水の中なら、あいつの動きがよく見えるはずだ!そして、電気は水の中の方がよく伝わる!」

 

サトシの言葉に、ピカチュウはこくりと頷き、意を決して水中へと飛び込んだ。そして、水中を自在に泳ぎ回るヒトデマンを、その目で必死に追う。

 

「今だ、ピカチュウ!『10まんボルト』!」

 

ピカチュウの体から放たれた強力な電撃が、プール全体へと広がる。水を得た魚ならぬ、水を得た電気。その威力は凄まじく、ヒトデマンはたまらず水面へと飛び出した。

 

「やったな、サトシ!」

 

俺は思わず拳を握りしめた。彼は、俺のヒントを自分なりに解釈し、ピカチュウとの絆の力で、この窮地を乗り越えたのだ。

 

カスミもまた、サトシの予想外の戦術に驚きつつも、どこか楽しそうな表情をしていた。姉たちに馬鹿にされ、鬱屈していた彼女の心が、サトシとの真剣勝負によって解き放たれていくのが分かった。

 

その後も、バトルは一進一退の攻防を続けたが、最終的には、サトシとピカチュウの絆が、わずかに上回った。サトシは、見事ブルーバッジを勝ち取ったのだ。

 

「……やるじゃない。そのバッジ、あなたが持つにふさわしいわ」

 

カスミは、悔しそうに、しかしどこか晴れやかな表情で、サトシにバッジを手渡した。その姿は、もう姉たちにコンプレックスを抱く、ただの少女ではなかった。一人の、誇り高きジムリーダーの顔だった。

 

タケシが、俺の隣でぽつりと言った。

 

「サトシの戦い方、どこか君に似た部分があったな。特に、ポケモンの力を信じ抜くところが」

 

「さあ、どうでしょうね」

 

俺は、少しだけ得意な気持ちで、そう答えた。

 

サトシのバトルの後、俺は改めてカスミにジム戦を申し込んだ。

 

「次は、俺の番だ。よろしく、カスミさん」

「ええ、望むところよ!ミナト、あなたみたいな強いトレーナーと戦えるの、ワクワクするわ!」

 

サトシとの戦いを経て、カスミは完全にジムリーダーとしての自信を取り戻していた。その瞳は、挑戦者を試すように、鋭く輝いている。

 

「ルールは2対2のシングルバトル。いいわね?」

「ああ、問題ない」

 

審判の合図と共に、二つ目のジム戦が始まった。

 

「行くわよ、トサキント!」

カスミが最初に繰り出したのは、優雅なヒレを持つトサキントだ。水面を軽やかに跳ね、こちらを窺っている。

 

「こっちはこいつだ。行け、ミニリュウ!」

 

俺が繰り出した三匹目の仲間、ミニリュウの姿に、カスミだけでなく、観客席のサトシたちも息を呑んだ。

 

「なっ……ミニリュウ!?幻のポケモンじゃない!」

「ミナトの奴、いつの間にあんなポケモンを……!」

 

サトシの驚きを背に、俺は冷静に指示を出す。ポリゴンはボールの中で待機させ、デバイスを通してミニリュウのサポートに徹させる。

 

「ミニリュウ、デビュー戦だ。思いっきり暴れてこい!『りゅうのいかり』!」

 

「キュー!」

 

ミニリュウは蛇のようにしなやかな動きで水面を滑り、トサキントに接近する。そして、小さな口から竜のエネルギーを放った。トサキントは素早い動きで回避しようとしたが、ミニリュウの機動力の方が一枚上手だった。

 

「トサキント、戦闘不能!」

 

「やるわね……。でも、次はそうはいかないわよ!行け、スターミー!」

 

カスミが繰り出したのは、ハナダジムの切り札、スターミーだ。中央のコアが、闘志を反映するように赤く点滅している。

 

ミニリュウは果敢に立ち向かったが、やはり経験の差が出た。スターミーの放つ変幻自在の『スピードスター』と、強力な『バブルこうせん』の前に、ミニリュウは力尽き、戦闘不能になる。

 

「ミニリュウ、よく頑張った。戻れ」

 

俺はミニリュウを労い、最後のモンスターボールを手に取った。

 

「頼むぞ、フシギダネ!」

 

「ダネフッシャ!」

 

満を持して登場した俺のエース。タイプ相性では圧倒的に有利だが、今のスターミーにはそれを覆すだけの気迫があった。

 

「スターミー、水中からの『スピードスター』!」

「『つるのムチ』で弾け!」

 

フシギダネは、トキワの森で鍛えた精密操作で、飛んでくる光線を次々と叩き落とす。

 

「今だ、スターミーに『やどりぎのタネ』!」

 

フシギダネが放った小さなタネが、スターミーのコアの近くに付着する。じわじわと体力を奪われるスターミー。カスミは焦りを見せず、冷静に指示を飛ばす。

 

「負けないわよ!スターミー、『じこさいせい』!」

 

体力を回復させ、持久戦に持ち込もうとするカスミ。ハイレベルな攻防に、観客席がどよめいた。

 

「(長引けば不利になる……一気に決める!)」

 

俺は勝負に出た。

 

「フシギダネ、『タネマシンガン』で目眩しをしろ!その隙に接近して、最大火力の『はっぱカッター』だ!」

 

「ダネッ!」

 

高速で連射されるタネの礫がスターミーを襲う。スターミーが防御の姿勢をとった一瞬の隙を突き、フシギダネが足場を蹴って跳躍した。至近距離から放たれた無数の鋭い葉の刃。

 

「スターミー!」

 

カスミの悲痛な叫びも虚しく、全ての攻撃をまともに受けたスターミーは、ついにその輝きを失い、水面に浮き上がった。

 

「スターミー、戦闘不能!よって勝者、挑戦者ミナト!」

 

静まり返ったジムに、審判の声が響く。

 

「……完敗ね。あなたのポケモンたち、本当に強いわ。それに、ミニリュウとの絆も……すごく、勉強になった」

 

カスミは、悔しさを滲ませながらも、笑顔で俺の勝利を称えてくれた。俺は彼女に歩み寄り、手を差し出した。

 

「あんたの戦い方も、素晴らしかった。最高のジム戦だったぜ、ジムリーダー」

 

俺たちは、固い握手を交わした。ハナダジムでの二つの戦いは、サトシに、カスミに、そして俺自身にも、大きな成長をもたらしてくれた。

 

俺は手に入れたばかりのブルーバッジを高く掲げ、相棒たちの頑張りを称えるのだった。

チラシ裏から表にでるべきか

  • チラシ裏でいい
  • 表にでてもいい
  • まだ表にでるのは早い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。