アニポケ転生者物語 作:投稿者
「カイリュー、『はかいこうせん』!!」
ユウジの指示がスタジアムに響き渡った瞬間、世界の動きが止まったかのように感じられた。
カイリューの口から放たれたのは、これまでのどんな技とも比較にならない、極太の破壊エネルギー。サトシのリザードンは空へ飛んで回避を試みたが、カイリューのスピードは物理法則を無視しているかのようだった。追尾するように軌道を変えた光線がリザードンの翼を撃ち抜き、爆煙と共に地面へ叩き落とした。
「リザードン、戦闘不能!!」
「なんて威力だ……!リザードンを一撃で沈めるなんて……」
ケンジの手元にあるスケッチブックが、戦慄で震えていた。
「サトシ、落ち着け!相手は最強の龍だ。小細工は通用しないぞ!」
俺の叫び声が届いたのか、サトシは深く息を吐き、帽子を深く被り直した。
絶望的な実力差。スタジアムには、ユウジの勝利を確信したような空気が流れ始めていた。
残るは、満身創痍のピカチュウのみ。
ピカチュウは、自分より数倍大きなカイリューを見上げ、頬の電気袋を激しく明滅させていた。
「ピカチュウ……行けるか?」
「ピカァ!」
その一言に、すべてが込められていた。サトシとピカチュウ。マサラタウンから始まった、二人の絆の証明。
「カイリュー、終わらせよう。『はかいこうせん』!」
再び放たれる、死の光。
「ピカチュウ、尻尾をバネにして跳べ!!」
ピカチュウは鋼のように硬めた尻尾を地面に叩きつけ、その反動で重力を振り切るような大跳躍を見せた。光線はピカチュウの足元を掠め、スタジアムの壁を粉砕する。
「頭に乗れ!」
空中で体勢を立て直したピカチュウが、カイリューの頭上に着地し、その触角を掴んだ。
「振り落とせ!『こうそくいどう』だ!」
カイリューが空中で激しく旋回するが、ピカチュウは必死に食らいつく。
「今だ!零距離、最大出力の『かみなり』!!」
「チウゥゥゥゥッ!!」
ピカチュウの全身から、スタジアムの照明を全て奪い去るほどの眩い閃光が放たれた。カイリューの脳天を直撃する、魂の電撃。
「グオオオッ……!」
さしものカイリューも、その衝撃に膝をつき、高度を下げた。
「やったか!?」
カスミが身を乗り出す。
だが、カイリューは倒れなかった。全身を黒焦げにしながらも、不屈の闘志で立ち上がったのだ。
「『りゅうのいかり』!!」
爆発的な衝撃波がピカチュウを吹き飛ばす。ピカチュウは地面を何度も転がり、ピクリとも動かなくなった。
審判がカウントを数えようとした、その時だった。
ピカチュウの尻尾が、微かに揺れた。
「……カ……チュウ……」
震える足で、一歩、また一歩と立ち上がる。サトシとの約束。一緒に頂点を見るという誓いが、彼を動かしていた。
「ピカチュウ……ありがとう。これが、俺たちの最後の一撃だ!!」
サトシの瞳から、熱い涙が溢れる。
カイリューがトドメの『しんそく』で突っ込んでくる。
「ピカチュウ、カウンターだ!全力の『10まんボルト』を自分に纏え!!」
ピカチュウは逃げなかった。迫りくるカイリューをギリギリまで引きつけ、自身の電撃を鎧のように纏って突撃した。
黄金の雷光と、龍のオーラが正面から衝突する。
バリバリバリバリッ!!!
スタジアムが真っ白な光に包まれ、衝撃波で観客席の椅子がなぎ倒される。
長い、長い沈黙。
光が霧散したフィールドには、二体のポケモンが重なり合うように倒れていた。
先に動いたのは、ピカチュウだった。
「ピ……カ……」
弱々しくも、彼はサトシの方を向いて微笑んだ。
対するカイリューは、その巨体を横たえたまま、動くことはなかった。
「……カイリュー、戦闘不能!よって勝者、マサラタウンのサトシ選手!!」
「うぉぉぉぉぉっ!!!」
スタジアムが、これまでの歴史で最大級の歓声に包まれた。
「勝った……勝ったんだ、ピカチュウ!」
サトシがピカチュウを抱きしめ、子供のように声を上げて泣いた。
俺も、隣でカスミとケンジと肩を組み、最高の拍手を送った。サトシは、オレンジ諸島という過酷な海で、本当の「最強」を掴み取ったのだ。
表彰式。ユウジがサトシに歩み寄り、名誉トレーナーのトロフィーを渡した。
「君たちが見せたのは、ただのバトルじゃない。命の輝きそのものだったよ。おめでとう、サトシ君」
最高のフィナーレ。
……だが、その感動を切り裂くように、突如として空が不気味な紫色に染まり始めた。
「なんだ……この風は?」
俺は懐のカブトのボールが、これまでにないほど激しく脈動しているのを感じた。
デバイスの中でポリゴン2が、最大級のアラートを鳴らす。
『警告。異常な気圧低下、および全海域でのエネルギーバランスの崩壊を検知。……世界の終焉が、始まりました』
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