アニポケ転生者物語 作:投稿者
第103話
アーシア島の祭壇。
長老の言葉、そしてヤドキングの導きを受けたサトシは、フルーラの案内で小舟に乗り込み、荒れ狂う海へと飛び出していった。
その背中には、世界を救うという重責よりも、ただひたむきに「目の前の問題を解決したい」という純粋な意志だけが感じられた。
「よし、俺たちも行くぞ!カイリュー、頼む!」
俺はカイリューの背に飛び乗り、一気に高度を上げた。
地上からでは視界を遮る猛烈な雨と波も、雲の上まで登れば、戦場の全体像が見えてくる。
上空から見下ろすオレンジ諸島の海は、もはや海ではなかった。
火の島からは赤黒い溶岩が噴き出し、雷の島からは紫電が迸り、氷の島からは全てを凍てつかせるブリザードが吹き荒れている。三つの極端なエネルギーがぶつかり合い、海流は複雑怪奇な渦を描き、空は悲鳴を上げているようだった。
「ポリゴン2、レーダー全開!敵の飛行船の位置を特定しろ!」
『了解。広域スキャン開始。……北西方向、火の島の上空に巨大な熱源反応を捕捉。ジラルダンの飛行要塞『飛行宮』です。既に火の島を制圧し、現在は雷の島の上空へ移動中』
「(やっぱり、原作通りサンダーも狙う気か……!)」
俺の脳裏に、劇場版の記憶が蘇る。ジラルダンは、ファイヤーに続きサンダーをも捕獲し、そのエネルギーバランスの崩壊を利用してルギアをおびき出そうとしているのだ。
下界を見ると、サトシの乗った小舟が、巨大なうねりに翻弄されながらも必死に火の島へ向かっているのが見えた。
「あんな小舟で……無茶しやがって!」
その時、雲の切れ間から、いくつもの金属のリングが降ってきた。
ジラルダンの飛行船から放たれた、対ポケモン用の捕獲装置だ。帯電したリングは意思を持つように動き、サトシの進路を塞ごうとする。
「そうはさせるか!カイリュー、『はかいこうせん』!」
「グオオオオオッ!!」
カイリューの口から放たれた極太の光線が、空中で捕獲リングを正確に撃ち抜く。
バチバチッという音と共にリングが粉砕され、火花となって海に散った。
「サトシ、そのまま行け!上は俺たちが守る!」
俺の叫びに、サトシが顔を上げた。暴風雨の中でも、その声はしっかり届いたようだ。
「ミナト!サンキュー、助かるぜ!」
サトシの舟が火の島の入江に滑り込むのを見届け、俺は再び空を見上げた。
そこでは、既に捕らえられたファイヤーの力の影響で、サンダーが怒り狂い、主不在となった火の島を自分の領土にしようと雷を落としていた。
「(調和が崩れている……。ファイヤーがいなくなったことで、サンダーの力が抑制されず、暴走しているんだ)」
その予感は、最悪の形で的中した。
雷の島の方角から、急激な寒気が押し寄せてきたのだ。
海面が、波打った形のままみるみるうちに凍りついていく。氷の神フリーザーまでもが、他の二鳥を排除しようと動き出したのだ。
火、雷、氷。
三つの力が均衡を失い、互いを滅ぼそうとする混沌の時代。
海は荒れ、世界は滅びる――伝説の予言が、現実のものとなろうとしていた。
「キュオオオォォッ!!」
不意に、海の底から地鳴りのような咆哮が響き渡った。
海面が大きく盛り上がり、巨大な水柱が立つ。
その水柱の中から、白銀の翼と長い首を持つ、神々しき龍が姿を現した。
海の神、ルギア。
「……来た。海の神の降臨だ」
その姿は、美しく、そしてどこか悲しげだった。
彼は、自らが守るべき海が、そして空が、同胞たちの争いによって傷つけられていることに心を痛めているようだった。
ルギアは、空中を支配する三鳥たちの戦いを鎮めるべく、嵐の空へと舞い上がった。
彼が翼を一振りすると、それだけで巨大な突風が巻き起こり、黒い雲を切り裂く。
だが、三鳥の怒りは凄まじい。
サンダーの雷撃、フリーザーの冷気、そして(まだ捕獲されていない野生の?)ファイヤーの残滓が混じり合い、三方向からの猛攻がルギアを襲う。
ルギアは攻撃を避けようともせず、その白い体で全てを受け止めようとしていた。
「(ダメだ……!ルギア一匹じゃ、暴走した三鳥を抑えきれない!)」
ルギアは「海の神」だが、三鳥に対して攻撃をすることをためらっているように見える。調和を取り戻すための存在であるがゆえに、力でねじ伏せることを拒んでいるのか。
「ポリゴン2、ルギアの防御を支援する!『リフレクター』および『ひかりのかべ』、最大出力!」
『了解。バリアフィールド展開。ジェネレーター出力、臨界点まで上げます!』
ポリゴン2がデバイスから飛び出し、ルギアの周囲に巨大な光の障壁を展開した。
直後、三鳥の合体攻撃が障壁に激突し、スタジアムを揺るがすような大爆発が起きた。
障壁は一撃で粉砕されたが、ルギアへの直撃は防げた。
「ルギア!俺は味方だ!一緒にあいつらを止めるぞ!」
俺の声に、ルギアが銀色の瞳をこちらに向けた。
言葉はない。だが、彼の瞳の奥に宿る「守護」の意思、そして「共闘」への同意が、俺の魂に直接語りかけてきた。
『……人間よ。お前もまた、この星の命を守ろうとするのか』
テレパシーではない。海そのものが震えるような、重厚な感覚。
「ああ。俺たちの世界だ。勝手に壊されてたまるか!」
神々の領域。
そこは、一人のトレーナーが立ち入るにはあまりにも過酷な場所だ。
一瞬の油断が死を招く、絶対的な力の渦。
だが、今の俺には、最強の翼がある。
俺はカイリューの首を叩いた。
「行くぞ、カイリュー!神話の続きを、俺たちが創るんだ!」
「グオッ!!」
カイリューが咆哮し、ルギアと並んで飛翔する。
人間とポケモン、そして神。
種族を超えた共闘が、オレンジ諸島の空で始まった。
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